ベートーヴェン《ピアノソナタ第14番 cis-moll op.27-2》
第I楽章に書き込まれた「senza sordino」という指示が
「ペダルを踏みっぱなし」
という意味だとしたら、これはピアノ演奏の常識を覆す
とんでもない指示!!・・・ということに、
現代の健全なピアノ奏者なら思うはずです。
ペダルを踏みっぱなしで音楽を弾き続けたら
どうなってしまうのか・・・
ダンパーは上がりっぱなしで、
楽器全体が止めどなく鳴り響き続け、
音が濁り、とても音楽とは言える代物ではなくなってしまう・・・
でも、ベートーヴェンは、そのような音を要求している・・・
さて、どうしましょう。
それを解き明かす鍵は、
当時使われていた「楽器」にあるといえるかもしれません。
ベートーヴェンがこの作品を書いたのは1801年のこと、
すなわち今から200年以上も前のことです。そして、
ピアノという楽器は、長い年月をかけて変遷と改革を経て
今日に至っています。すなわち、
200年前のベートーヴェンの使っていたピアノという楽器と
今のピアノは、「相当な違いがある」ということがいえましょう。
私の実体験として、以前、200年前のものではないのですが、
それでも「100年以上」経った古いピアノを演奏する機会があり、
さらには、ベートーヴェン時代の楽器を復元した
「ハンマークラヴィア」と呼ばれる楽器を弾いてみた際にも、
この《月光ソナタ》I楽章の「senza sordino」を試してみたのですが・・・
これが、なかなかいける・・・!?
雰囲気のあるものになったのでした。
「pp(ピアニシモ)」という音量に極力気を付け、
移り変わる和声を、指先と耳で丁寧にたどってゆくように演奏すると、
音の濁りの中から、なんともいえず、幽玄な世界がたち現れるかのようでした。
そしてそれは他ならないベートーヴェン自身の指示した
●「ペダル踏みっぱなし」
の状態がかもし出す音響効果だったのです。
ここに、この《月光ソナタ》という俗称で知れ渡っている
この《ピアノソナタ》の「原題」が、
大きなものを言うのかもしれません。
すなわち、
《Sonata quasi una fantasia幻想曲風ソナタ》
という、ベートーヴェン自身によって付けられて
この音楽の本当の名前・・・
そう、この音楽は「幻想」なのです。
幻想とは、
我々が今生きる現世を超越した世界のこと、
音楽は、このような幻想の世界を垣間見させてくれる
チカラを持った芸術です。
どのようにしたら、この「幻想」の世界を体現できるのか・・・
天才、ベートーヴェンは、知っていたのです。
ピアノという楽器の特徴をふんだんに利用し、
「ペダル無し」という響きが
幻想の世界へと誘う音楽の力を有することを、分かっていたのでしょう。
だから、この幽玄な第I楽章の冒頭にベートーヴェンは
「senza sordinoダンパー無しで」と書いたのです。
つづく
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PianistSegawaGen@aol.com
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第I楽章に書き込まれた「senza sordino」という指示が
「ペダルを踏みっぱなし」
という意味だとしたら、これはピアノ演奏の常識を覆す
とんでもない指示!!・・・ということに、
現代の健全なピアノ奏者なら思うはずです。
ペダルを踏みっぱなしで音楽を弾き続けたら
どうなってしまうのか・・・
ダンパーは上がりっぱなしで、
楽器全体が止めどなく鳴り響き続け、
音が濁り、とても音楽とは言える代物ではなくなってしまう・・・
でも、ベートーヴェンは、そのような音を要求している・・・
さて、どうしましょう。
それを解き明かす鍵は、
当時使われていた「楽器」にあるといえるかもしれません。
ベートーヴェンがこの作品を書いたのは1801年のこと、
すなわち今から200年以上も前のことです。そして、
ピアノという楽器は、長い年月をかけて変遷と改革を経て
今日に至っています。すなわち、
200年前のベートーヴェンの使っていたピアノという楽器と
今のピアノは、「相当な違いがある」ということがいえましょう。
私の実体験として、以前、200年前のものではないのですが、
それでも「100年以上」経った古いピアノを演奏する機会があり、
さらには、ベートーヴェン時代の楽器を復元した
「ハンマークラヴィア」と呼ばれる楽器を弾いてみた際にも、
この《月光ソナタ》I楽章の「senza sordino」を試してみたのですが・・・
これが、なかなかいける・・・!?
雰囲気のあるものになったのでした。
「pp(ピアニシモ)」という音量に極力気を付け、
移り変わる和声を、指先と耳で丁寧にたどってゆくように演奏すると、
音の濁りの中から、なんともいえず、幽玄な世界がたち現れるかのようでした。
そしてそれは他ならないベートーヴェン自身の指示した
●「ペダル踏みっぱなし」
の状態がかもし出す音響効果だったのです。
ここに、この《月光ソナタ》という俗称で知れ渡っている
この《ピアノソナタ》の「原題」が、
大きなものを言うのかもしれません。
すなわち、
《Sonata quasi una fantasia幻想曲風ソナタ》
という、ベートーヴェン自身によって付けられて
この音楽の本当の名前・・・
そう、この音楽は「幻想」なのです。
幻想とは、
我々が今生きる現世を超越した世界のこと、
音楽は、このような幻想の世界を垣間見させてくれる
チカラを持った芸術です。
どのようにしたら、この「幻想」の世界を体現できるのか・・・
天才、ベートーヴェンは、知っていたのです。
ピアノという楽器の特徴をふんだんに利用し、
「ペダル無し」という響きが
幻想の世界へと誘う音楽の力を有することを、分かっていたのでしょう。
だから、この幽玄な第I楽章の冒頭にベートーヴェンは
「senza sordinoダンパー無しで」と書いたのです。
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