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ジョセフ・レヴィーン著 『ピアノ奏法の基礎』(中村菊子訳)より抜粋
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(アントン)ルビンシュタインの肖像画を例にとってみよう。
これを描いた絵かきは、
ルビンシュタインがピアノに向かっている
数多くの写真でも捉えることのできなかった
彼の力の入れ方をはっきりと描いている。
多分、ルビンシュタイン自身、
カメラではそれを捉えることは不可能だと知っていて、
カメラの前ではカメラ用のポーズをしたのだと思う。
しかし、このスケッチの場合は、
私はよく知っているのだが気をつけて見ていただきたい。
ルビンシュタインは直立した棒のようにすわっていない。
その代わりに、教則本の力の入れ方をしめすすわり方の挿絵のように、
上体を鍵盤に向けて倒しているではないか。
彼は、フォルテ(強い)のパッセージをひくときは、
体と肩の重みを完全に利用したのだ。それは明白であり、
ルビンシュタインが協奏曲をひくときは、
オーケストラの全員がフォルティシモで音を出しているときでさえ、
彼のピアノの音は、更に、その上にそびえて聴こえたものだ。
その底力のあるピアノの音は、
まさにオーケストラの全楽器の王者のようにとどろきわたった。
しかも、その音に喧音を思わせるひびきはひとかけらもなかったのだ。
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