音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆ショパンの肺結核 ~ 《葬送行進曲》や《スケルツォ第2番》に死の影を見る!?

2009年04月08日 | ショパン Frederic Chopin
「肺結核」
という病気・・・

21世紀となった今日においては
もう身近なものではなくなり、
「結核菌は実験室の試験管の中にしか今日存在しない」
という中途半端な常識を持っていたのですが・・・

最近の報道では、
お笑い芸能人の方がお一人、
肺結核で入院されるというニュースが
流れているようです・・・

そんなニュースに続いて、先ほどテレビを見ていたら
医療機関と思われるコマーシャルが続いて、
「結核は過去のものではありません」
「結核についての正しい知識を持ちましょう」
と言われており、
正直ビックリ、自分の中途半端な正しくない知識に
反省したのでありました・・・


ところで、
クラシック音楽には、肺結核にまつわる話がいくつもあると思います。
なんせ、今から数百年の前のヨーロッパにおいて生まれた
芸術の一ジャンルがクラシック音楽です、
当時は「結核」がまだまだ蔓延し、
命を落とす人も大勢いた頃のことです(もちろん、
今日とて油断がならないとのことですが!!)


今日の肺結核の報道を聞きながら思い出したのは、
19世紀パリ、ピアノの詩人と呼ばれる作曲家
ポーランド人のフレデリック・ショパンのことでした。



ショパンは、
生まれつき健康にはあまり恵まれてはいなかったらしく、
病弱な体質に加え、成人してからは肺結核に苦しんだと伝えられています・・・

肺結核にかかると、血を吐くとか・・・
それがどんなに苦しいことか・・・想像を絶します・・・


そしてショパンは音楽家・作曲家、
彼の類まれない作曲能力は、自身の人間としての苦悩・思想を
あらわすのに充分な作曲能力を有しています。

ショパンが肺結核を発症したのは、
1837年、ショパン27歳の時だそうです。
そして、この年に作曲された「あるふたつの曲」あり、
想像をめぐらせて見ますと、
ショパン自身の肺結核に置かされて苦しんでいる境遇と
彼の音楽作品との接点が浮かび上がってくるように思えるのです。


それが、
●《葬送行進曲》そして
●《スケルツォ第2番 変ロ短調 op.31》
ともに1837年作曲の作品。


この《葬送行進曲》は、この年(1837)に作曲されすでに
発表されていたもので、そして2年後の1839年になってから、
《ピアノソナタ第2番 変ロ短調 op.35》の第3楽章として
《ソナタ》という大きな作品の形となったものです。

《葬送行進曲(March funerable)》という題名からして、
この音楽が「死」にまつわる内容のものであることは
想像されておかしいものではないでしょう・・・


《スケルツォ第2番》は、
ピアノ弾きにとっては憧れともいえる
高い技巧を要する華々しい名曲です。

しかし、
「華々しい・ヴィルトゥオーゾな曲」として思い出されるも、
果たしてその音楽的内容は、諸手をあげて晴れ晴れとしたものと喜んで
よいのかどうか、疑問が残ります・・


ショパン自身が、
この曲の有名な冒頭の低音のユニゾンに関して
このような事を言っていたそうなのです。

レッスンの際、生徒がその部分の表現を
なかなか満足に演奏することができないとき、
ショパンはしつこくそれを繰り返し妥協しなかったそうで、

「この部分は死の館のような雰囲気なのだ」

と言ったというのです。



「死の館」・・・!?

その言葉に、1837年のショパンの境遇=肺結核に苦しみ、
自身の「死」をも意識し始めているのかもしれない、
そのような境遇で書かれた作品《スケルツォ第2番》なのだとしたら、
この音楽を、単なる超絶技巧を駆使し披露するための曲として演奏することは
出来ないよう思えて仕方なくなってまいります・・・


もちろん!この曲は華々しいパッセージに色取られた
聴き映えのある爽快な音楽でもあります。

ここに、
「死」との対決を乗り越えて
力強く「生きる」物語を見出す(聴きだす!?)ことが
できるのかもしれません・・・


そう、
ショパンは肺結核にはそう簡単には負けず、
力強く、この後も、数々の充実さらなる名曲を書き続けました。
有名曲《英雄ポロネーズ》や《幻想ポロネーズ》、
《ピアノソナタ第3番》や《チェロソナタ》、
数多くの後期の《ノクターン》、
対位法を駆使した《マズルカ》、
シンプルの極地に達する《ワルツ“子犬”》・・・etc・・・


彼の音楽にある「力」と、そして何よりも
ショパンの音楽特有の深い「癒し」は、
時代と空間を越えた価値の高い人類の財産であり、
これを聴いて心満ちることが、我々にはできるのです。


そして、21世紀を生きる我々も、
肺結核にはくれぐれも気をつけて、
元気で生きてゆきたいものです。

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