音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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全曲演奏会を終わって

2006年10月02日 | Beethovenピアノソナタ全曲演奏
先日、9月23日、
おかげさまで、
ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会を
完結することが出来ました。

あれからもう一週間も経ってしまいました。
時が経つのはあまりに早いものと感じる一週間、
演奏会を終わって
茫然自失、
抜け殻のようになっていた・・・

と言えば、もっともらしいのですが、残念ながら
事実はそうでもなさそうなのです。

日本からのコンサートへの来客もあり、演奏会終了後は
彼らに付き添ってしばらく旅に出ることとなり、
全てのスケジュールが終わって帰ってきた途端、
風邪をひいて熱を出して倒れこんでしまいました。
気が抜けると、こうもあっさり風邪をひくのかと、
我ながらビックリの人体の不思議、といったところです・・・


◇◆◇◆


ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲を演奏し終わって、
我ながら我分からず、その後の自分の気持ちを、
今なお手探っているような心持で毎日を過ごしています。

「達成感」なり「虚脱感」を
聴きにきていただいた方々から多く問われたのですが、
実際には、不思議と静かな気持ちだったのです・・・

普段から、即断・即決が苦手な方なので(優柔不断とも言う!?自爆)
じわりじわりと、
この大事業を行った意義を、今後確認していくような気がします。



ある方がおっしゃってくださったのですが、
「ヒマラヤの登頂のようね」
というお言葉が、なんとなくしっくり来るような気がします。

あぁ、俺は登ったんだ

そう、
一歩一歩を確かめながら、
時に踏み外しそうになりながら、
時に山すそに神の光臨を夢見たり《op.111》、
紆余曲折しながら、
半年以上をかけて、32曲のソナタという
ひとつの大きな山を登った。

そんな感じです。
登ってみたら、向こうのほうに、
数多くの先人達の築いた(登頂した)
同じ山々が見えたような気もします。

古今東西の多くのピアニストが、
このベートーヴェン・ピアノソナタという山を
登ったのです。

登るのは、一度きりである必要はありません。
ヒマラヤに何度も挑戦する登山家がいるように、
ピアニストは、
生涯をかけて、何度となくこの山に挑んで然るべきかと思われます。

次の登山に向けて、
今はひとつ、ゆっくりと下山しながら(一曲ずつ全て
復習してみようと考えているところです)
次なる計画を、登山ルートを考え直したいと思っています。

例えば、
プログラミングなどに関して、
弾いてみて初めて分かった「無理」がある所もございました。
そして、
今年の初め、1月に第一回目の演奏会を迎えた時と
一味違った当時のプログラムに乗った曲目たちは、
いま一度作り直してみなければなりません。

作っては進み、また作っては作り直し、
「完璧」「完成」という言葉を、
今の自分は信頼することが出来ません。
もちろん、
ある程度の「完成」をよしとすることも
人生において然るべきとも思われるのですが。


◇◆◇◆


それにしても、
あのコンサートでは、知る人・知らぬ人が入り混じった
実に大勢の人々にお集まりいただき、それが今なお、心からうれしく、
演奏者として、今の自分に出来る最大限の演奏をするよう心がけました。
それはすなわち、音楽そのものの力が発揮されるよう目指し、
その流れる音楽に普遍的なファンタジーが宿ることを期待するものです。

ベートーヴェンのベートーヴェンらしい名曲《悲愴op.13》、
《告別》という名でありながら、《再会》を物語る《op.81a》、
そして、天空の彼方へと飛び去るように最期のソナタ《op.111》は
幕を閉じました。

ひとまずは・・・・終わったのです。

この糧を胸に、今後とも、より一層励んで行きたいと
思う次第であります。

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