音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆「終わり」あることを教えて下さい ~ブラームス《ドイツ・レクイエム》第3楽章 解説

2008年04月02日 | ブラームス《ドイツ・レクイエム》

ブラームス《ドイツ・レクイエム》第3楽章


  Herr, lehre doch mich,
  dass ein Ende mit mir haben muss,
  und mein Leben ein Ziel hat
  und ich davon muss.
  (主よ、私に教えてください、
   私には終わりがあるということを、
   そして私の人生には限りがあるということ、
   そして私はそれに対して何をすべきかを。)


冒頭のこのテクストは、
バリトン(男性中声)によって独奏で歌われます。
この曲《ドイツ・レクイエム》で初めて現れる独唱となります。
上記の一連のテクストが歌い終わると、
コーラスがそれに続き、同じものを歌います。

コーラスが皆で一斉に歌う様は、


「衆曰く」


といった感じでしょうか・・・まるで
コーラスは全人類の嘆きを反映しているかのよう、そして
バリトンのソロは、人間を代表する一人のように、
神に問いかけるのです、乞うのです、


私には終わりがあるということを、どうか教えてください


・・・この記事を読んでいただいている皆様にも、そして僕にも
必ず死は訪れるでしょう・・・我々人間の避けられぬ運命です・・・

これを、我々はどれほど実感できるというのでしょう!?
我々にとって、終わりとはなんなのでしょう!?


・・・分からないことだらけです・・・


「どうか、教えてください」


ブラームスはこう問いかけました、音楽を通して。
それが、この《ドイツ・レクイエム》第3楽章なのだと思います。

テクストは続きます。


  Siehe, meine Tage sind einer hand berit vor dir,
  und mein Leben ist wie nichts vor dir.
  (見てください、私の日々はあなたの手のひらほどしかありません、
   そして私の命はまるで無に等しいのです、あなたの前では。


我ら人間は、
仏様の手の平の上でもがき苦しむ孫悟空に等しい・・・
といったところでしょうか。


余談といいますか、
どう関連しているか、確実な答えは無いのですが、
この一連のテクストを語り終わってすぐ
オーケストラによって「ffフォルティシモ」で突如鳴り響く音があり、
それは、ドボルジャーク《チェロ協奏曲》のモティーフと同じ音型です。



もちろん、ドボルジャークの方が後(あと)のものでしょう、
ゆえに、彼のほうがブラームスからこのモティーフを
拝借したと考えるのが妥当でしょうか、
一体、この響きに彼らは何を見出すのでしょう・・・


  Ach, wie gar nichts sind alle Menschen,
  die doch so sicher leben.
  (あぁ、全ての人間はまるで皆無のようです、
   たとえ盛んに生きているように見えても)
  Nun, Herr, wes sol lich mich troesten?
  (そこで、主よ、何が私を慰めてくれるというのですか?)


人類の深い嘆きは、
不気味な「減七の和音」の不安定な響きの中、
音楽が一旦消え入ります・・・


つづく



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