峠はすっかり冬だった。いつも行く酒屋には、お目当てのものがなく、手ぶらで帰るのもとシードルを買う。それよりは、店の主人が「海老蔵は前から東国原などと同じで信用できない顔だった」と話をふってきて、その話題で盛り上がる。その後、民主党がここまで駄目だったとは思わなかったから、政治家に必要な資質とはなにかと、酒屋談義が続き、最終的には、胡散臭いと思う人間はやはり信用できないという意見の一致を見て店を後にする。その後、松本市内に入る(ここのところ毎週と言っていいほど来ている)。
峠は冬だったが、松本市内も寒かった。ここでもお目当てのものがなく、どうやら今日は外れ日のようだ。寒いのもあり、ちょっとB級的なものを食べたくなって、昔からある蕎麦屋に入る。ここは古い店で、そば専門店というよりは大衆食堂的雰囲気の店で、今まで一回も入ったことはなかった。正直なところ、蕎麦の味ではあまり期待できそうな雰囲気ではない。しかし、B級的な天ぷらそばにはいいのではないかと思ったのだ。イメージは駅そばの天ぷらそばだ。これが、如何にも気取った蕎麦専門店であれば、天ぷらそばもB級的ではなく高級になるが(個人的には蕎麦が売りのところでは天ぷらは要らない)、この雰囲気だとやはり気分はB級である。
店内は、正しく駅前食堂。いい味を出している。当初の予定の天ぷらそばを頼む。店内はいやに静かだ。間もなく運ばれてきた天ぷらそばには海老天が一つ。しかも器がいやに小さい。標準的なものより一回り小さいのだ。だから印象としては、しょぼい、だった。ちょっと品のない駅そばのかき揚げの方が満足度は高いのでは、と見たとき思ったが、食べてみても予想通りの普通の味で、かなり物足らない。ちょっとがっかりである。この雰囲気だったら、もう少し威勢の良いものを出せばいいのにと思った。お値段は940円。
店を後にして、どうにも物足らなく、口直しにちゃんとした蕎麦を食べたくなった。気分は蕎麦モード、完全に蕎麦アフター蕎麦である。そこで直ぐ近くにある「蕎麦倶楽部佐々木」に行くことにした。ここで盛の大を頼む。ここの蕎麦は、つなぎが少なめの10割そばに近いコシのかなり細めの蕎麦だ。キレのある蕎麦と言う感じではないが、細めなので喉越しは悪くない。この辺が好き嫌いの分かれ目。これが1000円。何だかんだで高く付いた昼食となってしまった。我ながら、よくやるよと思った。