今回のキーワードは,ようやくできたLong COVIDの定義,デルタ株感染による死亡の抑制にファイザー・アストラゼネカワクチンとも90%以上の有効性,12~18歳の青年に対するデルタ株感染防止にファイザーワクチンは90%以上の有効性,イベルメクチンの中毒症状として錯乱,運動失調,痙攣が生じる,ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症に伴う脳静脈洞血栓症の予後は改善してきている,です.
WHOが265名もの関係者を世界中から集めて大規模なデルファイ法(集団の意見や知見を集約し,統一的な見解を得る手法の一つ)を行い,複雑で困難であったLong COVID(WHOのいうpost COVID-19 condition)の定義を作成しました.これを機に,研究や診療が推進されることが望まれます.
◆ようやくできたLong COVIDの定義.
COVID-19後遺症として,long COVID,long-haul COVID,あるいはWHOが推奨するpost COVID-19 conditionなどさまざまな用語が提案されている.いずれにしてもその定義は難しく,研究や診療の方針を策定する上で問題となっている.今回,WHOから標準化された定義に最も重要な領域(ドメイン)と評価項目が決定された.具体的には大規模な2ラウンドのデルファイ法を行い,その後,コンセンサスプロセスを繰り返し行った.議論は第1ラウンド265名,第2ラウンド195名が参加し,その構成は患者,研究者,外部専門家,WHO職員,その他の5つのグループであった.最終的に12のドメインが決定された.各ドメインは複数の評価項目で構成され,計45項目が作成された.
【12のドメイン】
1 SARS-CoV-2感染の既往
2 SARS-CoV-2感染の検査での確認
3 症状が出現した後(無症状の場合は検査結果が陽性であった日から)3ヵ月以上経過していること
4 症状が継続している期間が最低でも 2 カ月間
5 症状および/または障害として,認知機能障害,疲労,息切れ,その他
6 症状の最小限の数
7 症状のクラスター化
8 症状の時間的経過の性質(変動する,増悪する,新規発症,持続,再発)
9 COVID-19の十分に報告されている合併症の後遺症(脳卒中,心筋梗塞など)
10 他の診断では説明できない症状
11 異なる集団への定義の適用;子供やその他の人々のための分離した定義を含む
12 日常生活機能への影響
【post COVID-19 conditionの定義】
SARS-CoV-2感染の可能性が高い,または確定した既往歴のある人が,COVID-19の発症から通常3ヵ月後に,少なくとも2ヵ月間持続する症状を持ち,他の診断では説明できない場合に生じる.一般的な症状としては,疲労感,息切れ,認知機能障害などがあるが,その他の症状(付録に記載)もあり,一般的には日常生活に影響を及ぼす.症状はCOVID-19の急性エピソードから回復した後に新たに発症することもあれば,初期の状態から持続することもある.また,症状は時間の経過とともに変動したり,再発したりすることもある.小児については別の定義が適用される場合がある.
A clinical case definition of post COVID-19 condition by a Delphi consensus, Oct. 6, 2021(https://bit.ly/3GdixCb)
◆デルタ株感染による死亡の抑制に,ファイザー,アストラゼネカワクチンとも90%以上の有効性.
スコットランドの18歳以上の成人を対象とした,デルタ株感染による死亡に対するワクチンの有効性についての研究が報告された.COVID-19による死亡を,死亡診断書に記載された場合と,PCR陽性後,28日以内の死亡と定義した.11万4706 人のPCR陽性感染者が対象となった.感染の99.5%がデルタ株によるものであった.201人が死亡した.デルタ株による死亡に対する完全ワクチン接種(2回目の接種から14日以上経過)の有効性は,ファイザーワクチンで90%,アストラゼネカワクチンで91%であった.以上より,いずれのワクチンとも,デルタ株による死亡を十分に抑制できることが分かった.
New Engl J Med. Oct 20, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2113864)
◆12~18歳の青年に対するデルタ株感染防止に,ファイザーワクチンは90%以上の有効性.
イスラエルからの報告で,12~18歳の青年を対象としたデルタ株へのファイザーワクチンの有効性について報告がなされた.新規感染者の95%以上がデルタ株であった.9万4354人のワクチン接種者と同数の未接種対照者とのマッチングができた.ワクチンの有効性は,初回接種後14~20日目で59%,初回接種後21~27日目で66%,2回目の接種後7~21日目で90%であった.症候性感染に対する有効性は,初回接種後14~20日目で57%,初回接種後21~27日目で82%,2回目の接種後7~21日目で93%であった.以上より,ファイザーワクチンは,12~18歳の青年におけるデルタ株感染全体と症候性感染の両者に対して,高い有効性を示した.
New Engl J Med. Oct 20, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2114290)
◆イベルメクチンの中毒症状として胃腸症状のほか,錯乱,運動失調,痙攣が生じる.
オレゴン州の中毒センターはからの報告.イベルメクチン中毒が2021年には増加し,21件の通報があった.ほとんどが60歳以上であった(年齢中央値64).11名はCOVID-19予防のため,10名は治療のためにイベルメクチンを服用した.3名は医師または獣医師から処方を受け,17名は獣医師用の製剤を購入していた(1名は不明).ほとんどの人は初回の大量かつ単回の内服後2時間以内に症状が発現した. 6名が入院,4名はICUで治療を受けたが,死亡した者はいなかった.胃腸障害が4名,錯乱が3名,運動失調と脱力が2名,低血圧が2名,痙攣が1名であった.入院しなかった人の多くは,胃腸障害,めまい,錯乱,視覚症状,発疹などであった.
New Engl J Med. Oct 20, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2114907)
◆ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症に伴う脳静脈洞血栓症の予後は改善してきている.
ヨーロッパから,アデノウイルスベクターワクチン接種後の,ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)による脳静脈洞血栓症(CVST)患者の死亡率が,時系列で改善しているかを検討した論文が報告された.結果として266例の患者が同定された.2021 年 3 月 28 日までの死亡率は 47/99(47%)であったのに対し,それ以降では36/167(22%)と減少した(p < 0.001).以上より,VITT後の予後に対して,早期発見ないし治療の改善が有益であったものと考えられた.
Eur J Neurol. Sep 18, 2021(doi.org/10.1111/ene.15113)
WHOが265名もの関係者を世界中から集めて大規模なデルファイ法(集団の意見や知見を集約し,統一的な見解を得る手法の一つ)を行い,複雑で困難であったLong COVID(WHOのいうpost COVID-19 condition)の定義を作成しました.これを機に,研究や診療が推進されることが望まれます.
◆ようやくできたLong COVIDの定義.
COVID-19後遺症として,long COVID,long-haul COVID,あるいはWHOが推奨するpost COVID-19 conditionなどさまざまな用語が提案されている.いずれにしてもその定義は難しく,研究や診療の方針を策定する上で問題となっている.今回,WHOから標準化された定義に最も重要な領域(ドメイン)と評価項目が決定された.具体的には大規模な2ラウンドのデルファイ法を行い,その後,コンセンサスプロセスを繰り返し行った.議論は第1ラウンド265名,第2ラウンド195名が参加し,その構成は患者,研究者,外部専門家,WHO職員,その他の5つのグループであった.最終的に12のドメインが決定された.各ドメインは複数の評価項目で構成され,計45項目が作成された.
【12のドメイン】
1 SARS-CoV-2感染の既往
2 SARS-CoV-2感染の検査での確認
3 症状が出現した後(無症状の場合は検査結果が陽性であった日から)3ヵ月以上経過していること
4 症状が継続している期間が最低でも 2 カ月間
5 症状および/または障害として,認知機能障害,疲労,息切れ,その他
6 症状の最小限の数
7 症状のクラスター化
8 症状の時間的経過の性質(変動する,増悪する,新規発症,持続,再発)
9 COVID-19の十分に報告されている合併症の後遺症(脳卒中,心筋梗塞など)
10 他の診断では説明できない症状
11 異なる集団への定義の適用;子供やその他の人々のための分離した定義を含む
12 日常生活機能への影響
【post COVID-19 conditionの定義】
SARS-CoV-2感染の可能性が高い,または確定した既往歴のある人が,COVID-19の発症から通常3ヵ月後に,少なくとも2ヵ月間持続する症状を持ち,他の診断では説明できない場合に生じる.一般的な症状としては,疲労感,息切れ,認知機能障害などがあるが,その他の症状(付録に記載)もあり,一般的には日常生活に影響を及ぼす.症状はCOVID-19の急性エピソードから回復した後に新たに発症することもあれば,初期の状態から持続することもある.また,症状は時間の経過とともに変動したり,再発したりすることもある.小児については別の定義が適用される場合がある.
A clinical case definition of post COVID-19 condition by a Delphi consensus, Oct. 6, 2021(https://bit.ly/3GdixCb)
◆デルタ株感染による死亡の抑制に,ファイザー,アストラゼネカワクチンとも90%以上の有効性.
スコットランドの18歳以上の成人を対象とした,デルタ株感染による死亡に対するワクチンの有効性についての研究が報告された.COVID-19による死亡を,死亡診断書に記載された場合と,PCR陽性後,28日以内の死亡と定義した.11万4706 人のPCR陽性感染者が対象となった.感染の99.5%がデルタ株によるものであった.201人が死亡した.デルタ株による死亡に対する完全ワクチン接種(2回目の接種から14日以上経過)の有効性は,ファイザーワクチンで90%,アストラゼネカワクチンで91%であった.以上より,いずれのワクチンとも,デルタ株による死亡を十分に抑制できることが分かった.
New Engl J Med. Oct 20, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2113864)
◆12~18歳の青年に対するデルタ株感染防止に,ファイザーワクチンは90%以上の有効性.
イスラエルからの報告で,12~18歳の青年を対象としたデルタ株へのファイザーワクチンの有効性について報告がなされた.新規感染者の95%以上がデルタ株であった.9万4354人のワクチン接種者と同数の未接種対照者とのマッチングができた.ワクチンの有効性は,初回接種後14~20日目で59%,初回接種後21~27日目で66%,2回目の接種後7~21日目で90%であった.症候性感染に対する有効性は,初回接種後14~20日目で57%,初回接種後21~27日目で82%,2回目の接種後7~21日目で93%であった.以上より,ファイザーワクチンは,12~18歳の青年におけるデルタ株感染全体と症候性感染の両者に対して,高い有効性を示した.
New Engl J Med. Oct 20, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2114290)
◆イベルメクチンの中毒症状として胃腸症状のほか,錯乱,運動失調,痙攣が生じる.
オレゴン州の中毒センターはからの報告.イベルメクチン中毒が2021年には増加し,21件の通報があった.ほとんどが60歳以上であった(年齢中央値64).11名はCOVID-19予防のため,10名は治療のためにイベルメクチンを服用した.3名は医師または獣医師から処方を受け,17名は獣医師用の製剤を購入していた(1名は不明).ほとんどの人は初回の大量かつ単回の内服後2時間以内に症状が発現した. 6名が入院,4名はICUで治療を受けたが,死亡した者はいなかった.胃腸障害が4名,錯乱が3名,運動失調と脱力が2名,低血圧が2名,痙攣が1名であった.入院しなかった人の多くは,胃腸障害,めまい,錯乱,視覚症状,発疹などであった.
New Engl J Med. Oct 20, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2114907)
◆ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症に伴う脳静脈洞血栓症の予後は改善してきている.
ヨーロッパから,アデノウイルスベクターワクチン接種後の,ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)による脳静脈洞血栓症(CVST)患者の死亡率が,時系列で改善しているかを検討した論文が報告された.結果として266例の患者が同定された.2021 年 3 月 28 日までの死亡率は 47/99(47%)であったのに対し,それ以降では36/167(22%)と減少した(p < 0.001).以上より,VITT後の予後に対して,早期発見ないし治療の改善が有益であったものと考えられた.
Eur J Neurol. Sep 18, 2021(doi.org/10.1111/ene.15113)