Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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ヒポクラテスの木と中田瑞穂先生

2020年11月17日 | 医学と医療
私はポリクリ(病棟実習)の講義で,毎回,医師の職業倫理の話をします.医の倫理に関する規定「ジュネーブ宣言」について解説しますが,その前にみんなで「ヒポクラテスの誓い」を読みます.なぜならその倫理的精神を現代化したものが「ジュネーブ宣言」だからです.そしていつも「ヒポクラテスの木」の話もします.これは医史学者として著名な蒲原宏博士が,ヒポクラテスの生地,ギリシアのコス島のヒポクラテス博物館の庭にある,いわゆる「ヒポクラテスの木」の実を採取して,日本に持ち帰り,みずから播種育成されたものです(街路樹のプラタナスの木です).全国の大学や病院に寄贈され,新潟大学病院や九州大学病院では,高さ10メートルにも及ばんとする大樹になっています.



話は変わり,研修医の際に大変お世話になった鈴木靖先生(済生会新潟病院 腎膠原病内科)から,新潟大学脳研究所初代所長で,日本の「脳神経外科の父」,そして高浜虚子を中心とするホトトギス派の俳人としても知られる中田瑞穂先生の随筆,俳句,絵画をおさめた「中田瑞穂選集」をご恵贈いただきました.ご実家を整理されている際に見つかったそうで,貰っていただきたいとご連絡をくださいました.実は昔,新潟大学にて見たことのある垂涎の品で,とくに画集のヒポクラテスとツタンカーメン像の絵は強く記憶に残っていました.




随筆集も読み始めました.中田先生が病床で最後に書かれた「櫓翁漫談」には(櫓翁は中田先生のことです),「医学と医術は同じものではないことを医師は充分に知らなければならない.医学は学問であって情けも容赦もない.医術はその冷たい医学に血を通わせ,神経を目覚めさせ人間味と暖かさを吹き込んだものである」と書かれてありました.

また「ヒポクラテスの木」という文章には,新潟大学病院に植樹されたときのエピソードが書かれていました.「1メートルに達したばかりの若木の天を摩するに至る成長を見ることはこの私には無理というものである.しかし私は,これを私達で育てますと,この移植に積極的であった学生有志のあったことは,この木の成長が約束されていると同様,医学部に最も重要な正しい医学の正統,ヒポクラテスから伝わった医の正道を伝えつづけようとする純粋なこころを目の当たりに示したものであって,木の成長を確認するよりもはるかに私に心強いものを感じさせる」と書かれてありました.胸が熱くなりました.最後に文章の最後に記されていた俳句をご紹介いたします.

やがて大夏木になれと植ゑらるゝ
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