「医師こそリベラルアーツ!」の連載第7回が,日経メディカル「Cadetto.jp」にて公開されました.いままで岐阜大学にて30回のリベラルアーツ研究会を開催しましたが,各回で行なった私のミニレクチャーを紙面で再現する企画です.
今回は「芸術」をテーマにしました.医学は日々,科学や合理性が求められますが,このような理系の職業においても芸術の視点が重要だと思います.とくに研究はゼロから新しい物事を生み出す創造力が必要であり,その原動力になるのは「何か新しいものを生み出したい」という情熱です.この情熱こそが芸術と結びついています.芸術は観察力を高め,既成の概念を疑い,新しい視点で物事を捉える力であるためです.
私が今回取り上げたいのは,日本を代表する芸術家である岡本太郎氏の生き方と思想です.彼の著書である『今日の芸術』や『自分の中に毒を持て』を読むと,情熱的な生き方とその根底にある考え方が強く伝わってきます.「芸術は爆発だ」が有名ですが,この言葉は単なるフレーズ以上の意味を持っています.彼にとっての「爆発」は,瞬間ごとに情熱を解き放つ生き方そのものであり,人間として最も強烈に生きることこそが芸術だと考えていました.私は彼の作品と著作を通じて,このような情熱的な生き方に共感を覚えました.
また,彼は「積み重ねる生き方ではなく,積み減らすべきだ」と述べています.これは,知識や財産を蓄えることで自由が失われ,過去に縛られてしまう危険性を指摘した言葉だと私は受け取りました.むしろ,毎日新しいことに挑戦し,自分を新しく生まれ変わらせることが「本当に生きる」ことにつながるのだと彼は考えていたようです.私の座右の銘は會津八一の「日々真面目あるべし」ですが,日々新しいことに挑み,常に変化を恐れない姿勢を心がけたいと思っています.
次回第8回は,三木清の『人生論ノート』を取り上げ,哲学的な視点から人間の本質を探ることを通して,さらに深い自己理解を目指していきたいと思います.
【過去に取り上げた本とタイトル】
第1回 なぜ、“医師こそ”リベラルアーツなのか?
第2回 『リベラルアーツの学び方』『死ぬほど読書』 - 「ササラ型」の知識取得のために
第3回 『たかが英語!』 - 英語は伝える手段、完璧でなくてよいのです
第4回 『夜と霧』 - 逃げたくなる「悩み」を成長のきっかけに
第5回 『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』 - 幸せになるために必要な「利他の心」とは
第6回 『ホモ・デウス』『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 - AI時代を生き抜くための5つの力
第7回 『今日の芸術』『自分の中に毒を持て』 - 「計算づく」ではなく「情熱をほとばしらせた生き方」を
今回は「芸術」をテーマにしました.医学は日々,科学や合理性が求められますが,このような理系の職業においても芸術の視点が重要だと思います.とくに研究はゼロから新しい物事を生み出す創造力が必要であり,その原動力になるのは「何か新しいものを生み出したい」という情熱です.この情熱こそが芸術と結びついています.芸術は観察力を高め,既成の概念を疑い,新しい視点で物事を捉える力であるためです.
私が今回取り上げたいのは,日本を代表する芸術家である岡本太郎氏の生き方と思想です.彼の著書である『今日の芸術』や『自分の中に毒を持て』を読むと,情熱的な生き方とその根底にある考え方が強く伝わってきます.「芸術は爆発だ」が有名ですが,この言葉は単なるフレーズ以上の意味を持っています.彼にとっての「爆発」は,瞬間ごとに情熱を解き放つ生き方そのものであり,人間として最も強烈に生きることこそが芸術だと考えていました.私は彼の作品と著作を通じて,このような情熱的な生き方に共感を覚えました.
また,彼は「積み重ねる生き方ではなく,積み減らすべきだ」と述べています.これは,知識や財産を蓄えることで自由が失われ,過去に縛られてしまう危険性を指摘した言葉だと私は受け取りました.むしろ,毎日新しいことに挑戦し,自分を新しく生まれ変わらせることが「本当に生きる」ことにつながるのだと彼は考えていたようです.私の座右の銘は會津八一の「日々真面目あるべし」ですが,日々新しいことに挑み,常に変化を恐れない姿勢を心がけたいと思っています.
次回第8回は,三木清の『人生論ノート』を取り上げ,哲学的な視点から人間の本質を探ることを通して,さらに深い自己理解を目指していきたいと思います.
【過去に取り上げた本とタイトル】
第1回 なぜ、“医師こそ”リベラルアーツなのか?
第2回 『リベラルアーツの学び方』『死ぬほど読書』 - 「ササラ型」の知識取得のために
第3回 『たかが英語!』 - 英語は伝える手段、完璧でなくてよいのです
第4回 『夜と霧』 - 逃げたくなる「悩み」を成長のきっかけに
第5回 『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』 - 幸せになるために必要な「利他の心」とは
第6回 『ホモ・デウス』『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 - AI時代を生き抜くための5つの力
第7回 『今日の芸術』『自分の中に毒を持て』 - 「計算づく」ではなく「情熱をほとばしらせた生き方」を