Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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後遺症治療に対して,今後望まれることはなにか?@報道ステーション

2021年09月22日 | 医学と医療
昨晩,#報道ステーション にて,COVID-19の神経後遺症(long COVID)について説明する機会を頂戴しました.番組のHP等で動画が公開されておりますので,見逃された方はご覧いただければと思います.頂いた質問の最後に「後遺症治療に対して,今後,望まれることは?」というものがありました.「COVID-19を地震とすると,後遺症は遅れてやってくる津波のようなもので,社会や経済への影響は大きい.社会や医療者は『ブレインフォグ』という病態があることを認識すること,国はブレインフォグ研究を積極的に推進することが必要」と回答しました.

この点をNew Engl J Med誌に発表された論文(doi.org/10.1056/NEJMp2109285)を引用して,少し解説したいと思います.まずlong COVIDの患者さんの多くは女性で,平均年齢は約40歳と働き盛りの人が多く,近い将来,医療や経済回復に長い影を落とすと予想されています.また症状は複雑・多彩です.神経症状に限ってもようやく大きく4つに分類されましたが(①brain fogを含む認知・気分・睡眠障害,②自律神経異常症,③疼痛症候群,④運動不耐),明確な定義・診断に有用な検査がまだ存在しない状況です.つまり,歴史的な先行事例である筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS),線維筋痛症などと同様のことが起こるのではないかと懸念されています.これらは心因性の可能性が考えられ,必ずしも正当な疾患として認識されず,積極的な研究が行われてこなかった経緯があります.このような状況を防ぐために,論文では5つの対策を訴えています.

1.ワクチン接種の推奨
2.long COVIDの病態研究の推進・研究費の投入(例えば米国NIHは4 年間11.5 億ドルのプロジェクトを開始することを発表しました)
3.ME/CFS研究のlong COVID研究への応用
4.long COVID診療センターの整備
5.医療者がこの病気を信じて支援しケアを提供すること


まさに同感であり,加えて社会もこの病態を認識し,後遺症により社会復帰が困難な人々を支えていく必要性を感じます.




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