Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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人工知能で新型コロナウイルス関連肺炎(NCIP)治療薬を見出す!

2020年02月05日 | 脳血管障害
私はフェースブック(FB)上で,新型コロナウイルス関連肺炎(NCIP)の論文を熱心に紹介している.その理由を知人に尋ねられた.理由は2つで,1つ目は日本でのアウトブレイクに備え,その臨床を知っておきたいこと,2つ目は世界中のアカデミア・製薬企業が,ワクチンが開発されるまでの間,どのように創薬を進めるか,その過程をリアルタイムで学びたいためである.

これまでFBでも投稿したように,2019-nCoVのゲノム配列,そして感染受容体の同定が,中国の研究者の努力で極めてスピーディに進んだ.SARS/MERSの経験をもとに,抗HIV薬ロピナビル/リトナビル併用の臨床試験も開始された模様だ.現在の関心は,より有効な薬剤の発見である.2019-nCoV専用の新たに化合物を作る時間の余裕はないため,当然,既存薬剤のrepositioningになるはずである.

BenevolentAIという創薬の分野で注目された英国のスタートアップ企業がある.創薬に関わる医学論文を機械学習したナレッジグラフ(知識ベース)を有する.昨日,Lancet誌にこの企業による短いレターが投稿された.彼らは日本で難治性関節リウマチに使用されるヤヌスキナーゼ阻害剤バリシチニブ(オルミエント®)がウィルスの感染能力を減弱させると予測したのだ!

FBでも記載したように,2019-nCoVは2型肺胞上皮細胞の膜表面蛋白ACE2に結合し,エンドサイトーシスによって侵入・増殖する.エンドサイトーシスとはウイルスが膜ごと貫入してできる小胞によって細胞質内へと運ばれる感染様式である.つまりこのエンドサイトーシスを抑制する薬剤をAIで予測しようと考えたのである.

治療標的はエンドサイトーシスを促進するAAK1(AP2-associated protein kinase 1)というリン酸化酵素であった.知識ベースにある378種類のAAK1阻害剤のうち,47種類が医療上認可されており,うち6種類がとくにAAK1に高い親和性を持つことを見出す.この中にはがん治療薬スニチニブやエルロチニブが含まれるが,副作用があり,既往症と肺炎を認める患者では安全に使用できないと判断された.しかしヤヌスキナーゼ阻害剤バリシチニブは,通常量の 2~4 mgで効果と安全性の面から最適と予測している.

WEBで調べた限りこれ以上の情報は見当たらないが,当然,臨床試験が計画されているはずである.AI創薬は成功するか?研究は急ピッチに進んでいる. 



Lancet Feb 3, 2020
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