Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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ALS,アルツハイマー病の早期診断に向けた新たな技術開発 ~病因タンパク質 TDP-43,アミロイドβを超高感度で検出可能に~

2024年10月10日 | 運動ニューロン疾患
昨日,以下のプレスリリースをさせていただきました.

岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科の本田諒准教授,大学院医学系研究科の下畑享良教授,岐阜薬科大学の位田雅俊教授らのグループは,神経変性疾患の発症に関わるTDP-43 およびアミロイドβ凝集体の超高感度検出技術を開発しました.この技術は,新たに発見された「Brij-58」という特異な性質をもつ界面活性剤を使用することによって,従来のシード増幅アッセイ法(SAA 法)の検出感度を飛躍的に向上させたものです.この技術により,最小 5 フェムトグラムという超微量の凝集体の検出が実現し,実際の患者の脳組織に蓄積した病的凝集体を検出することも可能となりました.本技術は,将来的には「ALS などの神経変性疾患の早期診断や早期治療介入」に貢献することが期待されます.本成果は,日本時間 2024 年 10 月 8 日に Translational Neurodegeneration誌のオンライン版で発表されました.

背景を少しご紹介しますと「シード増幅アッセイ(SAA)法」は異常凝集体を試験管内で増幅することによって,これらを超高感度で検出する技術です.この技術はプリオン病やパーキンソン病で蓄積する異常凝集体を検出することが可能であり臨床応用が進んでいますが,ALSやアルツハイマー病の原因とされるTDP-43 やアミロイドβの異常凝集体に関しては十分な検出精度がありませんでした.これらの病的タンパク質の検出においては,反応基質となる正常型モノマーが非常に不安定ですぐに失活してしまうため,従来技術では異常凝集体の十分な増幅を起こすことができませんでした.従来法での検出限界はおよそ 15 ピコグラムであり,この精度では病理学的に有意な微量の凝集体を捉えるには不十分でした.

そこで本研究では,新たなタンパク質の安定化技術を目指し,新たな界面活性剤「Brij-58」を発見することで,異常凝集体を効率よく試験管内で増幅し,従来の SAA 法を大幅に改良し,従来の検出限界をはるかに上回る,最小 5 フェムトグラムからの検出を実現しました.今後,ALS,アルツハイマー病の早期診断や早期治療介入に貢献するものと期待しています.
Sakamoto S, et al. Ultrasensitive detection of TDP-43 and amyloid-β protein aggregates using micelle-assisted seed amplification assay. Transl Neurodegener. 2024 Oct 8;13(1):51. (doi.org/10.1186/s40035-024-00444-7)オープンアクセス

以下,新技術の概略図とBrij-58の作用メカニズムを示す図です.

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