ここまで見事に大失敗されたなら、これはこれで潔いとでも言うしかない。久々にボロボロの映画を見た。きっと作り手はかなり考えたはずなのだ。それなのに、ことごとく失敗してその失敗の上塗りをさらなる失敗でして、気がつけばもう、どうしようもない映画になっていた。再起不可能な駄作になっていたのだ。
もっと安全圏で作ったなら、安易でどこにでもあるヒーローものになったはずだ。もう . . . 本文を読む
この安直なタイトルにはうんざりさせられるが、これがジャック・ドワイヨン監督の新作で、昨年ちゃんと劇場公開もされていたのに、まるで気付かなかった不徳に顔を赤らめる。見つけた瞬間、速攻レンタルしてきた。もちろん、家に着いた瞬間に見た。
なのに、今日までここに書けないでいた。見てからもう3週間くらいになる。つまらなかったわけではない。彼らしい寡黙な映画で、主人公の女はま . . . 本文を読む
こういう暗い話が最近のトレンドなのか、なんていうわけはなかろうが、最近読む本はこのタイプの作品が多くて、暗い気分になる。だから、ノーテンキな本が読みたくて、樋口有介『少女の時間』なんてのも読んだけど、あまり感心しないから、やめた。(もちろん、最後までは読んだけど) 時間のムダはしたくない。
実はこの2週間、本を読む時間があったから、いろんなタイプの作品も読んだ。町 . . . 本文を読む
『悪のクロニクル』は実によく出来た映画だ。こんなにも面白い映画が日本では未公開でDVDスルーになる。2転3転するストーリーテリングの見事さ。最後のどんでん返しなんて、それはないわぁ、と思うほど見事。最初はなんだかなぁ、と思う。だって、あの状況なのだから正当防衛になるはずだし、現職の警官が殺人事件を隠ぺいするか? いくら出世がかかっていても、絶対にばれる。ばれたなら、いい訳はきかない . . . 本文を読む
金子修介監督が久々にメジャーで撮る新作だ。メジャー、とはいっても、それほどの大作ではない。それどころか、小規模のプログラムピクチャーだ。昔なら2本立上映の1本でしかない。そんなスケールの映画なのに、製作の主幹はTV朝日で、東映他が共同で作っている。全国東映系公開作品だ。昔ならTV局が製作する映画はスケールの大きな大作というのが定番だったのに、今じゃ、こんなスケールの映画まで生産している。まぁ、作っ . . . 本文を読む
こういう地味でまじめな映画がどんどん劇場から駆逐されていく。隅に追いやられて、やがて、追い出される。今の映画館は子供向けのアニメと、ヒーローものばかり。
これは父と子の和解を描く感動のドラマだ。『エデンの東』だって、きっと今の時代に作られたなら、話題にもならず消えていく可能性がある。そんな時代に誠実に丁寧にこんな映画が作られる。アメリカ映画も棄てたものではない。し . . . 本文を読む
久々でホラー映画を見た。昔は(70年代から80年代にかけて)公開されるホラーはすべて見ていたのだが、今では劇場で公開されるものですら、あまり見なくなった。もちろん、つまらないからだ。僕にホラーに対する偏見なんかない。それどころか、大好きだし。なのに、見なくなったのは大量生産される安易な作品があまりに出回りすぎて、いくらなんでもそのひとつひとつを検証する余裕なんかないからだ。ビデオの . . . 本文を読む
なんと石井岳龍監督の新作は文芸映画。室生犀星原作で、自身をモデルにした老作家と、金魚の恋の物語という荒唐無稽さ。こんなファンタジーを映画にして、何が何だか、である。誇り高い「文芸もの」なんていうものに興味なんかないわい、という姿勢で映画作りしてきた彼が何をとち狂ったか。不思議なもの見たさで、劇場に行く。
なんだぁ、この軽やかさは。買ってきた金魚(二階堂ふみ)が人間 . . . 本文を読む
最初は気持ち悪くて読むのを辞めようかと思った。内容が、ではなく、文体が、である。おかまの男の子が「あたし」を連発する。でも、それは内面の声で表向きはふつうの男として振る舞うから、その落差もなんか鼻に付く。でも、明らか確信犯的行為なので、それでもそんな文体で描こうとする作家の思い入れがあるのだろうと、我慢する。原田マハはこういうタッチの小説を書かない。ある種の覚悟の元の行為なのだから . . . 本文を読む
フランソワ・オゾンがまたまたとんでもない映画を作ってくれた。それほど突飛なお話ではないけど、彼の魔術にかかったら、なんだか、とんでもなくヘンテコで不思議な映画になる。
7歳の時に出逢った女の子。生涯の友となる。ふたりの少女の友情物語か、と思わせて、どんどん話は進み、彼女が死んでしまう。葬式のシーンになる。まだ、始って何分もたってないんだけど。ふたりとも幸せな結婚も . . . 本文を読む
今関あきよし監督の映画だ。彼が10代だった頃作っていた8ミリ映画が好きだった。かわいい女の子たちがスクリーンの中で生き生きしている。そんな姿を活写する。ただ、それだけの映画。でも、そんな無邪気な美少女映画は、いやらしい映画ではなく、ほんとうにさわやかだったのだ。
なのに、この映画の主人公の若い教師はいやらしい。どうして、こんなことになったのか。50代になった今関監 . . . 本文を読む
これはあまりにつら過ぎて読みながら何度となく息苦しくなる。それでも、読まずにはいられない。角田光代はこれまでも幾度となくこういうタイプの作品を書いているけど、今回が今まで一番怖いし、きつかった。それは、犯罪者を主人公にしたのではなく、どこにでもいる主婦をここまで追い詰めるところにある。犯罪を犯した者も、そうじゃないものも紙一重であることなんかわかっている。でも、これ . . . 本文を読む
ゴールデンウィーク唯一のお芝居だ。実は忙しすぎてこれも見れないかも、と思ったのだが、仕事の関係で時間に少し余裕が出来たから、見に行けるようになった。2劇の13カ月振りの新作である。(そんなにしてなかったんだぁ)
だから出来る限り見たい、とと思った。で、そういう願いが叶った。うれしい。実を言うと、うちのクラブが、インターハイ予選のベスト8のところで、負けたりしたから、日曜の午後、時 . . . 本文を読む
昨年公開された作品で、内容が内容だけに少しつらそうで、見る勇気がなかなか出なかった。若年性アルツハイマーに罹った女性のお話だ。ジュリアン・ムーアが演じる。50歳の大学教授。3人の子供たちの母親。(彼らは、もう成人している)優しい夫とふたりで暮らしている。仕事も家庭も充実していた。だが、ある時から、少しずつ、記憶が抜け落ちていく。最初は「もの忘れが酷くなったね、年かな、」なんて軽い気 . . . 本文を読む