なんだこの妄想地獄は。最初の『食書』を読んだ時、唖然として、次の『耳もぐり』では呆れて、3つ目の『喪色記』を読んでいる時には、同じパターンにうんざりして読みながらも「これはもういいか」と思っていたのに、やはり次の『柔らかなところに帰る』も読んでしまう。こうなると仕方ない。「最後まで付き合うしかないな」と諦めた。嫌いではないけど、好きじゃない。かなりエグいしグロいし、くどい。(幾分エロだがポルノでは . . . 本文を読む
森達也監督、初の劇映画作品。関東大震災から100年になる2023年9月1日から公開されて大ヒットしている。ミニシアターでの拡大公開だが、劇場は平日のお昼なのに満席で、こんなシネリーブル梅田は久しぶり。初めての劇映画であるにも関わらず、森監督は落ち着いた演出で豪華キャストを配して巨匠の風格。2時間19分の大作を最後まで引っ張っていく。クライマックス、「朝鮮人なら殺していいのか」という永山瑛太の一言が . . . 本文を読む
これは今年の3月、大阪アジアン映画祭に出品された作品。監督・脚本は長編デビュー作『浜辺のゲーム』で注目を集めたという夏都愛未。彼女の映画を初めて見る。とても刺激的な映画だった。何も語らないから、必死になって見つめていくことになる。人間関係がわかりにくい。説明がないまま、どんどん展開していくからだ。主人公の響子(松井玲奈)が東京での女優活動を辞めて、福岡にやってきて再就職をしようとする。病気の治療と . . . 本文を読む
これは懐かしい古典映画のリメイク。ではなく、タイトルだけが同じでこちらはホラー映画である。中田秀夫監督最新作。相変わらず清水崇同様彼もホラー街道まっしぐら。だけど、ふたりとも代表作の『リング』『呪怨』を越えらない。仕方ないけど、なんだか悔しくて、ついつい次こそはと期待をかけて見てしまい、いつもガッカリすることになる。6月に公開した清水崇の『忌怪島』を見て、さすがに新作『ミンナのウタ』はパスしたが、 . . . 本文を読む
佐伯一麦と小川洋子が川端康成とその小説について語り合う。3度のセッションは大阪、神戸、京都が舞台となる。対談というより対話。おしゃべり。ふたりが大好きな川端を語り合う。ただのフアンじゃない同業者である作家が、でも大好きな作家のことを話しながら、お互いの発言からいろんな発見をしていく過程が描かれる。
僕は佐伯一麦も小川洋子も大好きだから、これまであまり好きじゃなかった(知らなかった)川端を語るふた . . . 本文を読む
今年2月に台湾で公開されて大ヒットした映画らしい。早くも8月に日本でも公開されるから、台湾大好きのうちの妻が大喜びしたが、なんと劇場公開直後にNetflixでほぼ同時配信もスタートした。大阪の劇場では1週間で終了したから、見に行けなかったが、配信で早速見ていた。
凄い世の中になったものだ。本国でスマッシュヒットした映画でも、日本ではなかなか公開されなくて、イライラさせられるというのが、常だった時 . . . 本文を読む
これは瀬尾まいこが描くコロナ禍の子供たちの物語。現在進行形の未来までが描かれる。ふたりの女の子たちの物語。小学3年の春から23歳の夏まで。15年間の軌跡。2020年、2ヶ月も学校が休校になった。あの時、失ったもの。コロナによって奪われた大切な日常。当たり前の日々の愛おしさ。23歳だから、この小説のラストでは彼女たちは2035年を生きている。2035年の23歳は、あれから初めて外の世界へ歩き出す。自 . . . 本文を読む
なんとこれはゲートボールの話である。しかもお年寄りが主人公ではなく、女子高生の話だ。美人女子高生が高校にゲートボール部を作り、全国大会を目指す。これだけならどこにでもよくあるパターンの安易なスポ根小説、だと思う。だけど、これは違う。あり得ない、まさかの小説だった。こんなもんがこの世にはあるのかと思った。奇跡の感動巨編。(350ページもあるからね)ゲートボール部なんて高校にあるのか、とか、全国大会っ . . . 本文を読む
これはDCコミックによる新作映画だが、相変わらず、激しい。過剰で過激な展開でやりたい放題です。最近DCは団体戦が多い。マーベルの『アベンジャーズ』がヒットしてからチームで戦う団体戦ばやりである。ヒーローがたくさん出ている。だからストーリーが雑になってつまらないパターンが多い。
『ジャスティスリーグ』とか『スーサイドスクワット』とか、あったけど、今回は2軍戦か、というようなメンバーで、知らないヒー . . . 本文を読む
久しぶりの楽市楽座だ。劇団は毎年新作を上演して全国を回っているし、もちろんホームである大阪でもちゃんと上演しているのだが、僕はここ数年、なかなか見に行く機会を持てなかった。2010年から毎年新作を持って全国を巡業しているという話だが。(コロナ禍は?)
十三で見るのは初めてだ。キリコさんと長山さんのふたり芝居になってからも初めてだから、なんだか懐かしいし、新鮮だった。いつもながらの投げ銭も楽しい。 . . . 本文を読む
これは中国の新鋭女性監督であるシェン・ユーのデビュー作だ。クールなタッチがなかなかいい。「母娘が共謀して(!)娘の同級生を誘拐した」という実在の事件に着想を得て撮りあげたものらしい。実録物だけど、事件よりも少女の切ない気持ちに寄り添う。
主人公のシュイ・チンは17歳の高校生。1歳の時に母に捨てられ、今は父と、父の再婚相手、弟(父と義母の子)との4人暮らしだが家族とは距離を感じている。家にいても孤 . . . 本文を読む
まさかのストップモーションアニメ。チリの2人組監督クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャの初長編作品。悪夢のような映像が怒濤のように押し寄せる。ノンストップで、マリアの受難が続く。空間は異様な形で変容を続け、逃げ込んだはずの家は安心出来ない。ただそれがなんだか眠くなるようなナレーションで綴られていくから、だんだん慣れてきて、怖くないし、ますます眠くなってくる。単調すぎるし、お話もよくわからない . . . 本文を読む
初めて見る劇団である。作、演出は大川朝也さん。昨年の11月に公演する予定だったのだが、延期となり、ようやく仕切り直しての上演だ。昨年案内をいただき、楽しみにしていたが、直前に中止の連絡をもらい、ガッカリしていた。今回無事に公演ができてよかった。
端正な小品である。無理も野心もなく、丁寧に作ることを第一にしているとてもいい芝居だった。気持ちがいい作品なのである。作り手の誠実さがしっかり伝わ . . . 本文を読む
「造園設計士・高桑は大学の卒論で作庭師・溝延兵衛と、彼の代表作となったある庭を取り上げて以来、長年にわたり取り憑かれ続けていた。」と、解説に書いてあったからコピペしたが、これは高桑の話ではない。彼は導入としているだけで、実質はある華族の物語だ。
昭和初期、時代は戦争の時代へと突入していくが、同時に、やがて没落していくことになる華麗なる一族の最後をこの屋敷で仕えるひとりの女中の視点から描く。庭園か . . . 本文を読む
かわいい表紙に魅せられた。もちろん濱野京子作品だから、それだけでも読むけど。さっそく喜んで借りてくる。僕はずっと前から児童書も含めて彼女の本はすべて読んでいる。大好きだ。
今回はなんと気候危機がテーマだ。高校1年生に女の子が駅前でスタンディングをする同世代のグループに遭遇する。彼らは毎月第二、第四金曜日に駅に立つ環境問題研究会の面々だ。彼女は彼らに影響されて今まであまり考えたことはなかった気候変 . . . 本文を読む