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映画・演劇のレビュー

町田そのこ『わたしの知る花』

2024-11-09 08:57:00 | その他
ようやくホッとする小説を読む。だけどそれがなんと町田そのこだなんて、笑える。いつもキツいなと思う小説ばかりの彼女に今回ばかりは救われる。   『スピカ』は厳しかった。長くて苦しい小説で読んでいる間の3日間は気持ちが重かった。だけど途中で投げださなかったし、耐えた。もちろん悪い小説じゃない。それどころか、とてもいい作品だと思う。ただ、重い。さまざまな病気を抱えた人たちの痛みと向き合う。 . . . 本文を読む
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『本心』

2024-11-09 05:50:00 | 映画
まさか、あの石井裕也監督がSF映画を作るだなんて。これは思いもしない作品である。だけど、これくらい彼らしい映画もない。亡くした母を思う。仮想空間上に任意の“人間”をつくるという最新技術「VF(バーチャル・フィギュア)」を通して死んでしまった母親を再現し、隠していた母の本心に迫る。SFと書いたけど、必ずしもそういうわけではない。それどころが、ほんの数年後にはこれくらいのことはなんでもない現実になった . . . 本文を読む
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『室井慎次 生き続ける者』

2024-11-08 20:30:00 | 映画
先行上映で見てきた。最速上映回である。まぁ、たまたまだけど。別に早く見たかったわけではない。それどころか、不安だったくらいだ。もちろん必ず見るつもりだった。ただ前作『敗れざる者』の抑えたタッチが好きだったから今回の事件の核心に迫る完結編には危惧しかない。ガッカリしたくないから見る前にはかなり心配した。不安は的中する。前作はあまりに『踊る大捜査線』を意識し過ぎていると思った。回想シーンであれだけ織田 . . . 本文を読む
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『少女A』

2024-11-08 11:29:00 | 映画
こんな短編映画を作った。売野雅勇の短編小説を映画化する。竹中直人が主演する。80年代を席巻した中森明菜のヒット曲である。イメージビデオではない。あれは何だったのか、を考察する。作者本人に聞く、というフィクション。あの歌を作った本人である売野が40年を越える歳月を経て、あの頃を描く。   まだ18歳だった少女(星乃夢奈)、が竹中直人演じるライターのインタビューを受けるというお話。歌い手 . . . 本文を読む
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『神田川のふたり』

2024-11-08 10:47:00 | 映画
いまおかしんじ監督の2022年作品。ほんとうに彼はいろんな映画をどんどん作っているのだな、と感心する。低予算で、エロからこういう青春映画まで、なんでもあり。フットワークも軽く。昔の(今も?)ピンク映画と同様の数日の撮影で1本の長編映画を仕立てて公開する。 冒頭なんと42分の長回しには驚く。チープだけど圧巻。こんな無意味でバカなことをする。その後、メインタイトルが出て、後半は普通にカット割りしてい . . . 本文を読む
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前川ほまれ『臨床のスピカ』

2024-11-08 10:35:00 | その他
これもまたキツい話だな、と思いつつ読み始める。病院を舞台にしてそこで働くDI犬,スピカの話。DI犬の存在をこの小説を読んで初めて知った。AAAとかAATなんてものの存在ももちろん知らなかった。医療に携わる介助犬スピカとバディを組む看護師、遙。ふたりが(ひとりと1匹、いや一頭だけど)出会う患者たちのそれぞれのドラマ(2023年から24年まで)がふたりが出会うまでの話(2012年から24年)と交互に描 . . . 本文を読む
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大阪府高等学校演劇コンクールB地区予選

2024-11-08 08:58:00 | 演劇
2年振りにコンクール審査に参加した。(11月3.4日。池田アゼリアホール)今は一応高校教諭をやめているから部外者として参加できるので気が楽だ。もちろん、ここに各作品の感想を書くつもりはない。審査会の講評で参加劇団の生徒たちの前でしっかり喋っているから、ね。   ただ、たまたま今朝、このブログの10年前の記述をチェックしてくれている人がいて、自分がコンクール審査のことをここに書いている . . . 本文を読む
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東直子『フランネルの紐』

2024-11-07 23:08:00 | その他
これは歌物語だ。平安時代に書かれたあの『伊勢物語』のような。短い物語の最後にこのお話を締めくくる短歌が置かれている。18の短編集でもある。   そしてこれは優しい童話だ。すべての話は「誰々」の「何々」といスタイルのタイトルになっている。どの話も素敵だけど、1番気に入ったのは『ココさんの心臓』。赤いボタンの心臓を手にするまでの短いお話。   すべてが服飾にまつわる話。布、 . . . 本文を読む
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『ヒューマン・ポジション』

2024-11-06 17:53:00 | 映画
ノルウェーの小さな港町。寡黙な少女(大人だけど)のような女性が主人公。静かな映画は好きだし、人がほとんどいない風景もいい。フィックスでいつまでも変化のない風景を見せてくれるのも嫌いじゃない。だけど、それだけでは退屈。78分と短い映画だが、まるで話らしい話はないからこれでも長いくらい。何もない風景を撮るシーンを短くすると60分くらいになるのではないか。ムダとは思わないけど、なくてもいい。これが長編2 . . . 本文を読む
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『ジョイランド ひとつの願い』

2024-11-06 16:27:00 | 映画
パキスタン映画なんて、もしかしたら初めてかもしれない。しかもこれはまだ若いサーイム・サーディク監督によるデビュー作。それがこんなにもしっかりした映画だったことにも驚く。彼はまだ33歳らしい。扱う問題はパキスタンが抱えるシビアな現実。同時にそれは普遍的な問題でもある。家族のあり方、変わりゆく生活。昔ながらの大家族はこの国からも失われていく過程にある。そんな過渡期の悲劇。 主人公の青年は、自分からは . . . 本文を読む
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『ゴンドラ』

2024-11-06 11:51:00 | 映画
このゴンドラは、ジョージア南部の小さな村フロというところに実在し、ジョージアで最も長い距離をつなぐゴンドラとして知られているらしい。『ツバル』や『ブラ!ブラ!ブラ!』のファイト・ヘルマーが監督。今回もまたいつも通りセリフのないファンタジー映画。ふたりの女の子たちが働いているゴンドラ🚡 お仕事ムービーだけど、途中からお遊びムービーになる。ふたりの幸せな遊びはみんなを巻き込んでいく。あ . . . 本文を読む
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今日いち-2024年11月6日

2024-11-06 07:16:19 | 映画
待兼山に行く。架空の町だと思っていた待兼町。待兼駅が待兼阪大前駅に変わる前の最後の半年間を描く『昨夜、喫茶マチカネで』を読んでから気になっていた町だ。偶然石橋に行く用事があり、ついでだった。 . . . 本文を読む
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菰野江名『さいわい住むと人のいう』

2024-11-05 07:04:00 | その他
凄い力作である。デビュー作『つきはぐ、さんかく』で注目した彼女の第2作だけど、若い作家がこんな作品に挑むなんて、驚きだ。DVを中心にして、ひとりの青年の老女ふたりとの出会いから始まり、彼女たちの死からこれまでの軌跡を追う長編小説。   思ったほどには作品世界は広がらない。82歳の老女とふたつ年下の妹。ふたりは大きな屋敷でふたりきりで暮らしている。そこに新しく役所の福祉課に入った男の子 . . . 本文を読む
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『十一人の賊軍』

2024-11-03 12:12:00 | 映画
こんな時代劇大作映画が白石和彌によって作られる。しかも山田孝之と仲野太賀が主演である。渋すぎて心配する。東映久々の映画である。ブロックブッキングは崩壊して定期的な配給作品すらなくなった時代に作られた徒花のような映画。最後の打ち上げ花火を思わせる。ならば見事咲かせて潔く散ればいい。そんな悲壮な覚悟で劇場に行く。日曜の朝一、梅田の旗艦劇場、大スクリーンでの上映。なのにまるで客がいない。なんと僕を含めて . . . 本文を読む
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藤岡陽子『森にあかりが灯るとき』

2024-11-03 06:49:00 | その他
あっ、これはツラい話だ、と読む前からわかっていたが本を手に取って読み初めてしまう。最初から強烈にキツいけど、どんどん読み進めてしまう。面白いから、ではない。気になって仕方ないからだ。介護の現場のツラさキツさはわかっているけど、こういうふうに突きつけられたら、もうどうしようもない。重い気分。なのに目が離せない。 これは特別養護老人ホームを舞台にして新人介護士の青年の日々を描く長編。だが、読 . . . 本文を読む
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