続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『深淵の花』

2015-11-02 06:54:28 | 美術ノート

 深淵と言うからには深い谷、深い水の底だろうか。バックには仄明るい光が射し、鉄の鈴には手前からの光に照らされている。背後と手前は隔絶された世界かもしれない。とすれば、ここは霊界と仮定してもいいのではないか。あるいは心理世界の深淵。

 The Abyss とある。底なし地獄・・・どこまでも、どこまでも負の空間が続いている。負のスパイラルの恐怖。
 鉄の花と思われるものは《言葉》である。命令・流言・嘘…あらゆる言葉の混迷は、人を惑わせる。足を引っ張り身体をも引きずり込む恐ろしいまでの引力を有する言葉の魔力。

  わたし達は目に見えない《深淵の花》の上を気づかずに歩いている。それはどこにあって、どういう風に運命づけられたものかは、誰も知らない。
 傷のない球体を《永遠の真実》とするなら、口の割れた球体は《現実の社会》である。深淵の花は口を開けて待っている。その複合体はあたかも真実の葉に見えるものを立派に付けている。

 見る者の眼差しに真っ直ぐに向けられた鉄の鈴の口は、暗澹とした山(咽喉のようにも見える)をバックに浮遊している。言葉は重力を持たないが、権力・支配力・拘束力を有し、人を深淵へと導く。あるいは深淵という異次元から人を見つめているのかもしれない。
 花は見つめる対象であるが、この『深淵の花』からは見つめられているという感覚が過るのである。

『深淵の花』、畏怖をもって見つめる者は、畏怖をもって見つめ返されるという輪廻の花である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展。図録より)


「銀河鉄道の夜」127。

2015-11-02 06:23:11 | 宮沢賢治

「さうだ・おや、あの河原は月夜だらうか。」
 そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすゝきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆれてうごいて、波を立ててゐるのでした。


☆講(はなし)は幻(まぼろし)を合わせている也。
  願いの照(あまねく光があたる=平等)の迫る考えを吟じている。
  恒(常に変わらない)願いを吟ずる句(ことば)は普く派(元から分かれ出る)律(きまり)である。


『城』2132。

2015-11-02 06:08:54 | カフカ覚書

ちがうのです。彼にどんなに好意をよせていても、そんなことは言えません。彼は高級従僕ではありません。彼が村へ降りてくる、それどころか村に住んでさえいるという事実だけでも、そうでないことの明白な証拠ですわ。


☆ちがうのです。好意ある預言者であっても、そんなことは言えません。それは先祖の高級な晩餐ではありません。彼が来世(霊界)に降りてくる、それどころか、来世(霊界)に住んでいるという事実だけでも先祖の反証です。