『星座』というタイトル、漠然として何の星座かわからない。星座そのもの…としたら、やっぱり神話を想起すべきかもしれない。
神話とは恒星の天球上における見せかけの配置に物語を被せて時節を計ったもので、多くはギリシャ神話などに見られる古代からの現象を神格化した寓話である。
創世…《世界の始まりはこうであった》という現象の集まりではないか。
天空から下ろされた幕、これは天動説の現象である。(地動説では幕は張れない/現実にはどっちも張れないけれど)そこに、オリーブの葉と二羽の鳩となれば、明らかに信仰の世界の逸話である。
巨大化・肥大化された一葉は自然の樹木を圧する大きさで立ちはだかっている。想念が自然より優位にあるという現象である。遥かな平地はどこまでも平らで地上は球体ではない。地平線のはるか向こうの空は有り得ないような不気味な薄い黄色であり、雲波も何故か平らである。
これは、《地動説や地球が丸いこと》の否定ではないか。
遥か昔、空を見上げて考えた星座の夢の物語、見せかけの世界の鎮座・・・そういう時代を物言わずして作品に納めたマグリットの心境・・・しかし、真意が語られることはない。
動かぬ天球(厳密には動いているが)、動く地球の関係は視覚では捉えにくい。見ることと、見ている対象世界の真実と・・・わたし達は錯覚を正視しながら生きている。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)