開口から見える光景と室内の時空は継続するものなのだろうか。たとえばとんでもない距離、現世と来世であるような決してつながることのない時空、つまり行き来の不自由な(通行不可)異世界かもしれない。
しかし、ポールにある目は荒れた海の難破船を見ている。落雷・暴風・高波、死を覚悟せざるを得ないような恐怖、まさに困難な航海である。
にもかかわらず室内は明るい彩色であり、光が射し込んでいる。しかし室内は明らかに歪み、人の眼を有したポールも直立ではなく、傾いている。逆に言えば、傾いていても立っていられる不思議な空間であり、重力に影響を受けない時空である。
ここもまた天国(冥府)の桟敷席かもしれない。死者たちは現世を心痛の思いで凝視している。肉体の質を木質に変換させるのはマグリットの常套手段であり、なびくカーテンは隠蔽と覗き見るためのツールである。
困難多き現世を、カーテンを除け開口を大きくし、ひたすら見つめるしかない冥界の眼差し。現世と冥府を強引に結びつけた心象の世界である。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
画かきどものすさまじい幽霊が
すばやくそこらをはせぬけるし
雲はみんなリチウムの紅い焔をあげる
それからけはしいひかりのゆきき
くさはみな褐藻類にかはられた
こここそわびしい雲の焼け野原
風のヂグザクや黄いろの渦
☆覚(感知する)幽(死後の世界)の霊(死者の魂)を運(めぐらせている)
双(二つ)であることを掩(隠し)括(たばねる)
双(二つ)が塁(重なる)ように運(めぐらせている)章(文章)也
現れる怖い往(人が死ぬ)果(終末)がある
二、三人は、愉快そうに笑ったが、ほかの連中は、当惑したようにだまっていて、このほうが優勢だったので答えらしい答えは聞けなかった。
☆先祖は勇気を出して復讐したが、他のものは踏みとどまり沈黙していた。あとの方が優勢だったので返答はほとんどなかった。