春嵐足ゆびをみなひらくマリア
春嵐、ちょっと衝撃だったけどマリア像の足の指がみんな開いていたのよ。
これって、有り?という写生句。
春嵐はシュン・ランと読んで、蠢、卵。
足はソクと読んで、促。
ゆび(指)はシと読んで、視。
みな(皆)はカイと読んで、芥。
ひらく(開)はカイと読んで、皆。
マリヤはマリ・ヤと読んで、鞠(キク)、也。
☆蠢(虫がうごめいたので)卵を捉えた。
視(見ると)皆、芥(小さなゴミ)のようで危懼(危ぶみ畏れる)也。
牧谿の虎濛々と去年今年
牧谿の龍虎図は全体が暗く、見えないかと思うと見えてくる。やっぱり確かに描かれているのだ。
牧谿はモク・ケイと読んで、黙、閨。
虎はコと読んで、凅。
濛々はモウ・モウと読んで、耗、亡。
☆黙っているけど閨(夫婦仲)は凅(枯れている)。
耗(衰え)亡(滅んでいる)、でも切れず繋がっている。
巫の白衣くもる二日かな
巫の白衣も二日目ともなると少々くたびれてくる。表情にも疲れが見えるかもしれない。
巫はフと読んで、夫。
白衣はハク・イと読んで、迫、威。
くもる(曇)はウンと読んで、運、
二日はフ・カと読んで、恐、禍。
☆夫は迫(追いつめ/苦しめて)威(おどすこと)を運(めぐらせる)。
怖ろしい禍(災い)である。
かくまでももみづれるとは荒蝦夷
こんなにも紅葉が一ぱい、さすが北方の地である。
もみ→揉。
づれる→ずれる。
荒→粗い。
蝦夷はエミシと読んで、笑みし。
☆こんなに議論しあっても、感覚や考え方に隔たりあるなんて!
粗く(ぞんざいに)笑みしたことである。
いつも二階に肌ぬぎの祖母ゐるからは
いつも二階に肌ぬぎの威勢のいい祖母がいるから何かと気を使う。
二階はジ・カイと読んで、字、械。
肌はキと読んで、揆。
ぬぎ(脱)はダツと読んで、脱。
祖母はソ・ボと読んで、粗、簿。
☆いつも字の械(からくり)で揆(図りごと)をしているので、(他意を)脱(取り除くと)粗(大雑把な)簿(書きもの)になっている。
腸のよろこんでゐる落椿
気持ちが浮き浮きしている、ラクチンだもの。
腸はチョウと読んで、弔。
よろこんで(喜)キと読んで、忌。
ゐる(居)キョと読んで、居。
落は物寂しい。
椿はチンと読んで、沈。
☆弔(死者を悼む)忌(死者の命日)の居(家)は、物寂しく沈んでいる。
『冒険の衣服』
胸は隠れているが成熟した女人であり、頭部から薄衣を纏っているが全裸である。目を瞑り両手を挙げているが、防御なのか呼び寄せているのかは不明である。
オサガメがいるということは、この領域が海底である証であり、頭部が男根に見えることから、このオサガメは男を暗示している。
オサガメの身体はナイフのような鋭利さがあるが、女を護っているのか攻撃しようとしているのかは不明である。しかし両者の頭が逆方向にあり、オサガメは彼女のもとにやってきて留まろうとしているのか、離れていくのかが分からない。
板状の層が重なっている。膨大な時間は、板の切断面により人為的なものを感じる。想像上の時空であり、この大胆な企ては冒険である。
関係は常に緊張をはらんでいるが、時間は止まっている。
深い海の底で強靭なオサガメに守られ、深い眠りの中にいる女。神秘的な時空こそが冒険の衣服なのかもしれない、大胆な空想である。
写真は『マグリット展』図録より
『そいつの眼が赤かつたかい。』
『わからない。』
『ふうん。しかし、そいつは鳥だよ。かはせみと云ひんだ。大丈夫だ、安心しろ。おれたちはかまはないんだから。』
☆言(言葉)を積(つみ重ね)帖(ノート)に運(めぐらせている)。
諦(真理)は常に普く案(考え)の芯(中心)である。
そして、いつも人口の光と重苦しい空気のなかにいてーこの家のなかは、たえず暖房がしてありますのーほんとうにいつも疲れはてています。週に一度の午後の休みは、調理場の押入れかどこかで静かにのんびり眠ってすごすのがいちばんの楽しみというありさまです。
☆いつも作為的な光とかび臭い空気の中にいて、絶えず暑くて常に疲れています。番人は中央に向かって自由であり、不安のない静かな眠り(死)を、がらくたなどで塞ぎ、時間を費やしています。