続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

R.M『会話術』

2020-12-18 06:33:55 | 美術ノート

 Espanaという文字で重ねられた二つの時空、がある。
 遠方には平原に立つ建物(街)となだらかに続く山々、そして前方には闘牛の牛が頭部を刺され恨めしくこちらを見ている図がある。

 殺される牛は言葉を持たない、ただ無言で死んでいくだけである。怨念はあるだろうか、瀕死の原因は横柄な人間の側にある。訴えることも抗議も生じない人間界との関わり。一方的な制圧には会話は不要である。

 人間の手によって殺される運命、驚愕すべき恐怖を牛は直前まで知らされず、その瞬間を迎える。間をつなぐ『会話術』は無論欠落している。
 しかし、逆に人間がどんなに牛に愛情を持ちこの非情なさまを悔い、懺悔、後悔した所で、死んでいく牛には伝わらない。瀕死の牛に毛布を掛ける憐憫を牛が感謝するだろうか。

『会話術』は世界全体を席巻するわけではない。弱肉強食、生態系の食物連鎖、この自然倫理のまえに『会話術』は為すべき術を持たない。


 写真は『マグリット』展・図録より


『城』3559。

2020-12-18 06:21:33 | カフカ覚書

と、まあこんな調子なのです。あなたは、フリーダのこういう工作をちっともご存じありませんでした。あなたは、外をほっつき歩いていないときでも、なんにも知らずにフリーダの足もとに寝そべっていらっしゃいました。その間に、フリーダは、自分をまだ酒場から引きはなしている時間を指折りかぞえていたのです。


☆この完全な行動をフリーダは知りませんでした。あなたがまわりをぶらついていないときでも、死ぬような気配はありませんでしたが、酒場(死の入口付近)から離れる時も尚、一方では死期をかぞえていたのです。


『飯島晴子』(私的解釈)梅雨の夜の。

2020-12-17 07:10:48 | 飯島晴子

   梅雨の夜の勁き莨火とすれちがふ

 梅雨の夜、月も星もない暗い夜道、不意に煙草の小さな、しかし確かな火が目の前を過った。・・・男、瞬時、強い動悸が走ったことである。

 梅雨の夜はバイ・ウ・ヤと読んで、狽、烏、也。
 莨火はキョウ・ロウと読んで、強、狼、加。
 すれちがふ(擦違)はサツ・イと読んで、殺、威。
☆狽(あわてる)烏(カラス)也。
 強い狼が加える殺(甚だしい)威(おどし)がある。

 梅雨の夜はバイ・ウ・ヤと読んで、倍、迂、也。
 莨火はケイ・ロウと読んで、警、漏。
 すれちがふ(擦違)はサツ・イと読んで、冊、異。
☆倍の迂(遠回り)也。
 警(注意すると)漏れてくる。
 加(その上に重なる)冊(書きつけたもの)、異(別のもの)がある。


R.M『会話術』

2020-12-17 06:30:22 | 美術ノート

   『会話術』

 白鳥が二羽、月は二十六日あたりの月である。ということは、真昼であるはずなのになぜか、黒い樹形がAmourの文字の文字に被っており、夜景の態である。右端の建物の白い壁は微妙な雰囲気を醸し出している。

 白鳥のいる景とAmourで区切られた夜の景、そして昼の月。異相の景の重なりである。
 Amour(愛)という文字の境界は何を意味しているのだろう。愛は精神であり、物理的光景には関与しない、にもかかわらず・・・。
 景色(自然)と精神をつなぐ、文字という会話の介入には意味はなく、意味を求めようとして徒労に終わらざるを得ない光景。会話は成立していない。そこにAmourの文字を想起させる形を置いた景色は条理を著しく外している。

 Amourの意味を知らないものにとっては単なる線状にすぎない時空の境界線は、愛の意味にまで到底たどり着くこともない。
 会話術と題したこの画は、会話術の意味を壊し、無効にしている。意味を知るものにとっても無意味なのである。

『会話術』における言葉(文字)の薄さ、不条理、時空の異なるエリアで通用することのない言葉(文字)よりも、寄り添い向かい合う二羽の白鳥にみる仲睦まじい光景にこそAmour(愛)が垣間見えるのではないか、という反問である。


 写真は『マグリット』展・図録より


『城』3558。

2020-12-17 06:20:45 | カフカ覚書

これは、ご亭主であるあなたの罪ではない。あのペーピは、なんと言っても見つけだすことのできる最上の代理なんですから。ただ、代理は、あくまで代理であって、ほんの二、三日でもだめです。


☆これは、ご主人(言葉)の罪過ではない。あのペーピは発見できるもっともよい代わりですが、先祖の傷痕に対して、理解が不十分なのです。


『飯島晴子』(私的解釈)ベトナム動乱。

2020-12-16 07:02:45 | 飯島晴子

   ベトナム動乱キャベツ一望着々捲く

 ベトナムではアメリカによる枯葉剤が撒かれる悲劇に襲われているが、こちら日本では、順々にキャベツが育っている。
 丸い地球を一望すると、必ずしも順風に実りはもたらされていないようである。

 動乱はドウ・ランと読んで、道、乱。
 キャベツ(甘藍)はカン・ランと読んで、姦、婪。
 一望はイツ・ボウと読んで、逸、冒。
 着々捲くはジャク・チャク・カンと読んで、寂、嫡、鑑。
☆道(道徳)が乱れる。姦(不義)を婪(むさぼり)逸(隠れて)冒すのは寂しい。
 嫡(正妻)を鑑(照らし合わせ考えること)である。

 動乱はドウ・ランと読んで、同、覧。
 キャベツ(甘藍)はカン・ランと読んで、肝、爛。
 一望はイツ・ボウと読んで、逸、謀。
 着々捲くはチャク・ジャク・カンと読んで、著、若、換。
☆同じものを覧(よく見ると)肝(重要な部分)が爛(輝き)、逸(隠れた)謀(図りごと)が著(明らかになる)。
 若(ニヤク/二役、二訳)を換(入れ替えること)である。


R.M『会話術』②

2020-12-16 06:34:49 | 美術ノート

 会話術がなぜ加工した巨大な石の積載なのか、しかもそれはある種のエリアに通じる記号である。
 記号は約束であり、集落(国)の律である。

 対応には術が必至、それを生活と時間(時空)が紡ぎ出したのは必然であり、自然の成り行きである。
 他の動物にはない行為、通達事項を詳細かつ伝達可能にした言語を所有したことである。

 動かし難い巨大な功績であれば、人類が滅び去った後にも遺跡と化して残存するに違いないが、時代を隔てた未来にはそれを理解する術が見つからないかもしれない。
 会話術は永遠ではない、言葉が化石化する、そういう未来からの眺望である。


 写真は『マグリット』展・図録より


『城』3557。

2020-12-16 06:22:02 | カフカ覚書

そして、ある人にたいしてはクラムの身をいたわってあげるのだと吹聴したことを、ここのご亭主にたいしては自分の手柄だと言って利用し、クラムがもう下へ降りてこなくなったという事実に注意をむけさせるのでした。下には給仕をするペーピしかいないのに、クラムがどうして下りてくることができましょう。


☆そして先祖に対して、クラムを大事にすることを、あなたはうまくいったとして利用し、クラムが全く来なかったことに対しては権力を以て、その後を注意深く見ていたのです。下に降りてこなかったのは、単に、先祖のペーピが控えていたからでしょう。


『飯島晴子』(私的解釈)雪を来て。

2020-12-15 16:30:36 | 飯島晴子

   雪を来て光悦消息文暮色

 雪の京都、鷹峯に光悦の消息(足跡)を訪ねた。文(書体)は得も言われぬ暮色であり、訪ねた甲斐があった。

 雪を来てはセツ・ライと読んで、切、頼。
 光悦はコウ・エツと読んで、広、閲。
 消息はショウ・ソクと読んで、紹、促。
 文暮色はモン・ボ・シキと読んで、悶、暮、私記。
☆切(ひたすら)頼る講(話)である。
 広く閲(調べ)紹(引き合わせて)促(とらえる)。
 悶(思い悩む)暮らしの私記である。

 雪を来てはセツ・ライと読んで、説、磊。
 光悦はコウ・エツと読んで、考、閲。
 消息はショウ・ソクと読んで、衝、即。
 文暮色はモン・ボ・ショクと読んで、問、簿、嘱。
☆説(話)は磊(小さなことにこだわらないで)考え、閲(確かめて)、衝(重要なところ)を即、問い、簿(ノート)に嘱(委ねている)。


『飯島晴子』(私的解釈)鍋の耳。

2020-12-15 16:19:14 | 飯島晴子

   鍋の耳ゆるみしのみが女の冬

 鍋の耳がゆるむことなど想定外、有り得ないほどの確率である。その奇跡のような時間だけが、女に許された冬の休み(することがない/安穏)である。一年中、昼夜なく忙しい・・・。

 鍋の耳はカ・ジと読んで、華、爾。
 ゆるみしのみ(緩)はカンと読んで、観。
 女の冬はジヨ・トウと読んで、自余、蕩。
☆華のある爾(あなた)、観(よく見ると)、自余(ことのほか)蕩(だらしない)。

 鍋の耳はカ・ジと読んで、何、辞。
 ゆるみしのみ(緩)はカンと読んで、換。
 女の冬はニヨウ・トウと読んで、二様、統。
☆何(いずれかの)辞(言葉)に換えると、二様(二通り)を統(収めている)。