えびすさんの話:吉井貞敏氏
江嵜企画代表・Ken
吉井貞敏氏(元西宮神社権宮司、現西宮文化協会長)が、えべすさんについてNHK文化センターで話しをされるとお聞きして楽しみにして出かけ、いつものように会場風景をスケッチした。
午後1時半から3時まで、終始笑みを絶やさず、時にマスコミに対してユーモアまじえてチクリチクリと話された。50人近い参加者は時の経つのも忘れて中身の濃い吉井さんの話に聞き入った。
余りにも盛り沢山だったので書ききれない。そのなかで一つ。十日えびすのお祭りは本来厳粛そのもののお祭りだという。1月10日の午前4時、境内で店を構える人含めて全ての人に境外に出てもらった後、神職のみで本祭りを行うことはマスコミは取り上げない。朝6時の開門神事である福男ばかり取り上げる。
今年も無事故だったことで胸をなでおろした。なぜなら、騒ぐだけ騒いでおいて、ひとたび事故が起これば手の平かえすようにマスコミは非難するのが怖いからだと話された言葉が印象に残った。
十日えびすと言うと今宮えびすを念頭におく。西宮の方がえびす信仰の本拠地だ。室町時代の書き物に「今、西宮」という記述がある。「今・宮」、そして「今宮」えびすとなった。
今宮えびすが全国版で取り上げられる。えびす信仰を広めていく上では大いに貢献している。今宮さんに感謝している。西宮神社に広田神社が祀ってある。今宮神社も広田さんが祀られている。広田神社は日本書記、古事記に記されている。西宮神社は記載がないと紹介された。
西宮神社の本殿は中央がアマテラソウミカミ、右側がえびすさん、左がスサノウノミコトが祀られている。えびすさんを素通りしてお参りしておられると会場を沸かせた。
えべすさんのお顔は今のように笑っておられない。時代の経過とともに変わったと絵を見せながら紹介された。
宝船に乗った七福人の内、福禄寿などは中国、大黒天はインドと6人が外国からで、えべすさんだけが日本で作り出された神さんである。全て入り船で出船がないのが特徴である。日本人は取り入れることには優れているが、外に出ていかない。日本人の特徴がよく出ていると話された。
えべすさんは海の神さんである。全国でえべす神社を調べたら信州など山地が多い。海の神様であるから海にあこがれたのかもしれないと話された。
80歳以上の方は、第二次世界大戦時、出征兵士は武運長久を願って神社にお参りし、戦場へ向かった。そのお陰で日本人はいま幸せな暮らしをいただいていると話された。
「知っているようで知らないえべすさん」という表題を主催者のNHKはつけていた。まだまだえびすさんの話は尽きないと吉井さんご自身は思っておられるに違いない。今回、貴重な機会を提供していただいたNHK文化センターにも感謝したい。(了)