森田りえ子・笹岡隆甫ト―クショー
江嵜企画代表・Ken
日本画家、森田りえ子さん、華道家元、笹岡隆甫さんの「京都からのメッセージー花に託す心ーと銘打って、京都東急ホテルで、11月22日午後1時から1時間、休憩20分後はさんで、笹岡家元による生け花実演もあり、午後3時まで、舞台と300人集めた会場とが一体となる盛り上がりを見せ迫力満点だった。会場の様子をいつものようにスケッチした。
司会者がお二人の略歴紹介が終わるか終らぬうちに、いきなり森田画伯に,笹岡さんは「森田さんの絵の課題はなんですか?」と質門をはじめた。「凛とした絵を描きたい。花と出会った時感じたままを描きたい。」と森田さんが即答えた。
「印象的な花はなんですか?」と間髪をいれず笹岡さん。「花に好き嫌いはありません。やはり糸菊とで会った時でしょうか。糸菊の絵で第一回川端龍子大賞をいただきました。あの糸菊の絵があったから今の私があるのかもしれません」と森田さん。
「花と女性像もお描きですね」と矢継ぎ早に笹岡さん。「人物画は絵の基礎と思っていました。毎週、モデルを使ってヌードデッサンしていました。人物は人生の喜怒哀楽、森羅万象が絵に出ます。人物は花とは一寸違います。花を描いていて行き詰る時があります。人物を描いて気分を変えます。」と森田さん。「子供のころから絵はとても好きでした。しかし、絵描きになるなんて大学時代も思っていませんでした。本気で絵描きになろうと決めたのはやはり糸菊の絵を描いた時でしょうね。絵の教室で助手をしていました。生徒さんが描いた絵の方がうまい。それから猛烈に花の絵の勉強しました。」と森田さんは話を続けた。
一方、未生流家元、笹岡さんは、母方の祖父が家元だった。家元に二人の娘。長女が母親。長男の隆甫さんが三歳の時祖父の養子になり笹岡家を継いだ。父親は数学者。両親は自分の人生は自分で選べと。京都大学工学部建築学科に進んだ。生け花は設計図に基づいてパーツを組み合すプラモデルと似ている。生け花はセンスよりロジックの世界ですと続けた。氏は1974年生れ。活き活きと、かつ本当に楽しそうに話す姿が特に印象的だった。
笹岡さんの生きざま、物の見方は「生け花―知性で愛でる日本の美」(新潮新書、2011年11月20日刊)に詳しい。『生け花を知る最大の利点は「日本がわかることだ」という。笹岡さんは祖父に生け花の型を繰り返し繰り返し叩きこまれたという。
トークショーの中で森田画伯は笹岡さんに先の著書の中から7つの生け花の禁止事項に付いて質問した。①露落(つゆおとし):弱弱しく垂れさがる枝は取る、②釘隠:花の顔をまっ正面に向けない、③向枝:鑑賞者に向かう枝は非礼なので取り除く、④色切:赤白赤のように色をはさむと統一感を乱すので禁じる、⑤長競(たけくらべ):ニ本の枝が同じ高さだと不自然としてどちらか一方を短くする、⑥見切:交差して見える枝、⑦暖々:大きな花が階段状に並ぶ状態で変化に乏しい。そのため取り除く。
森田さんは「絵にも大いに共通するところがあり、興味深く読ませていただいた」と受けた。舞台に立てられた屏風の絵を前に、森田さんは「紅葉の葉を一葉飛ばして、風を感じてもらう。紅葉は京都、松は実は皇居の松です。」と裏話を紹介された。
「絵描きは絵を描いてそれで終わりでない。出来るだけ多くの人に見ていただいたはじめて絵は完成する。是非機会を見つけて絵を見ていただければありがたい」と森田さんは話を終えられた。
森田りえ子画伯は12月11日、午前1時から、NHKラジオ深夜便に初出演される。また来年3月8日から阪急御影駅近くの香雪美術館で個展「花らんまん」を開く。森田りえ子ファンにとっては聞き逃せない、見過ごせない、楽しみな企画になりそうだ。(了)