薬は、字の如く、草冠に楽と書く。薬草を飲めば、からだが楽になるから、文字が生まれたのであろう。「良薬は口に苦し」、ということばも薬草に起源がありそうだ。しかし、副作用のない薬は、この世に存在しないことも、頭の片隅に置いておくことが必要だろう。
9月26日、NYダウは、前日比99ドル値上がりして、史上最高値14,000ドル目前の13,878ドルで取引を終了した。日本の日銀にあたる、米国の中央銀行の米FRB(連邦準備制度理事会)は、9月18日に、公定歩合、短期の目標金利であるFFレートを共に、0.5%を引き下げた。利下げが予想外の大幅だったことが、株式市場にとって、良薬になったようだ。
米商務省は、9月26日の朝、8月の米耐久財受注高が、4.9%減少したと発表した。耐久財とは、3年以上の耐久力がある商品と定義づけている。特に設備投資動向などを予測する意味で、からだ(経済)の健康状態を知る資料として、重要なデータとされている。
今回の大幅な利下げは、サブプライムローン問題の悪影響が、金融市場の混乱に留まらず、からだ(経済)全体に、悪影響を及ぼす怖れがあった。ドクター・バーナンキは、金融市場に、即効性をねらって、大幅利下げという「抗生物質」を投与した。
多くのエコノミストは、8月の米耐久財受注高は、3.1%減と予測していた。ところが8月の「検査データ」は、予想をはるかに超えて、4.9%減少した。本来なら株売り材料だ。
一方、為替市場では、投薬(利下げ)の副作用が、ドル売りという形で現れた。ドルは、対ユーロで、過去最高値の1ユーロ=1.4163 ドルまで値下がりした。ところが、9月26日のNY外国為替市場は、ドルは、1ユーロ=1.4125ドル前後で取引され、対円では、むしろ、1ドル=115.55円へ値上がりした。円キャリリートレードのドル買い戻しが作用した。
米自動車トップGMが米自動車労組(UAW)との交渉が暫定的とはいえ妥結、2日間のストライキが終了した。今朝のWSJ紙は、GM妥結がドル買戻しに働いたと解説している。NYダウ上昇も、GM妥結が好材料に使われたかもしれない。
NY原油先物相場は、8月の原油在庫が増加したことを材料に、バレル79.13ドル前後で取引された。80ドル突破したことで、一部がポジション調整に動いたようだとWSJ紙は紹介している。このところインフレ期待から、投機資金が、原油、金、農産物など商品市場へ大量に流れて相場を押し上げていた。
一端、薬を飲み始めると、薬を飲まないと不安になる。米国は、副作用を承知で、大幅利下げに踏み切った。さらなる利下げ(投薬)を、株式市場(患者)は迫りそうだ。(了)
保久良梅林
江嵜企画代表・Ken