自民党総裁選で、福田康夫氏330票、麻生太郎氏197票で、福田氏が、日本の首相になると、9月23日のWSJ紙は短く伝えた。外国人の目からみれば、日本の首相が、誰になろうが、さして影響はない、と受け止めているのであろうか。
日本のテレビや新聞の反響も概ね好意的に福田総裁を受け入れているようだ。世論調査結果は現時点では、表には出ていない。年金問題、少子高齢化、都市と地方の格差拡大という問題を抱えて、このままでは、日本という国が、袋小路に追い込まれると危惧する一方で、日本人の多くも、日本の首相に、誰がなっても変わらない、と思っているのかもしれない。
小泉首相は、自民党員でありながら、「自民党をぶっ壊してやる」といい、「経済と政治は関係ない」と意味不明の発言をして、安倍首相にバトンを渡した。その安倍首相は、これまた意味不明な「美しい国、日本」を、錦の旗印に登場したが、健康問題が理由だと思うが、オモチャ箱を、自分でひっくリ返したまま退任した。
福田氏は、こんな二人の後に、steady(堅実)であるということだけが理由で首相になる。テレビでの街頭インタビューを聞いていると、取り立てて、福田氏にクレームをつけている日本人は少ないとの印象を受けた。新総裁就任後の記者会見でも、限られた放映時間のテレビ画面ではあるが、マスコミの鋭い突っ込みは見られなかった。
政治家は、子供の数が減り、老人が増え続ける社会が、いかに未来を描き難い世界であることを、今一度問い直して欲しい。平均とはいえ、日本人の個人資産が、一人1555万円(13万500ドル)を、生きたお金に代えて、守るにはどうしたらいいかを真剣に考えて欲しい。
日本のGDPは500兆円である。日本の株式時価総額は600兆円である。「経済と政治は関係ない」と言った首相は退席した。経済こそ政治と裏腹の関係にあり、密接不可分の関係にあることは、世界の政治家の常識である。経済的破綻から国は滅びると歴史は教えている。
米FRBは、公定歩合を1%下げ、FFレートを0.5%下げた。それを契機にインフレの血の匂いを嗅ぎつけた投機資金が生気を吹き返してきた。それが原油、金、農産物に顕著に現れている。米株式市場は、さらなる利下げを催促しているが、インフレ懸念が台頭してきたことから、金融不安の嵐が過ぎれば、再び利上げに向けて方向転換するかもしれない。
欧米人にはインフレの恐怖が骨の髄まで浸み込んでいる。先日、ジャスコの前身、岡田屋呉服店社長、小嶋千鶴子さんの著書「あしあと」(求龍堂:03-3239-3381 )を京都の画廊でたまたま見つけた。示唆に富む内容の本だが、その中で、第一次大戦直後、ドイツを襲った天文学的なインフレーションの記述がある。時間の許す方は、是非一読願いたい。(了)
カキツバタ:神戸森林
江嵜企画代表・Ken