京都文化リレー講座
江嵜企画代表・Ken
江嵜企画代表・Ken
京都文化リレー講座、第1回、講師、日本画家、森田りえ子さん、聞き手、吉田健
吉、京都産業大学文化学部教授、「京の美 たおやかに」と題して、11月9日(水)
午後1時半から、読売大阪ビルF1,ギャラリー「よみうり」で開かれ楽しみにして出か
けた。京都文化シリーズは、第2回、11月30日、生け花の笹岡隆甫氏、第3回は、12月
8日、茶の湯の薮内紹智氏と続く。
会場の様子をいつものようにスケッチした。大勢の森田りえ子ファンが会場につめか
けていた。大部分ご婦人だった。日本画教室の有志数人の姿も見えた。 この日の森
田りえ子さんは、スーツにスカート。おしゃれなスカーフが印象に残った。
吉田教授は「いつもは、りえさん、健さんでお話ししていますが、本日は森田りえ子
さんで参ります。よろしく。」で始まった。「森田りえ子さんは、お一人でお話にな
らないということで、対談になりました。」と続けた。森田さんは「いつもそうなん
です。」と笑顔で応じた。和やかな雰囲気が会場に流れた。
「どうして絵描きさんになられたんですか?」と吉田さんがマイクを向けた。「子供
の時から絵を描くのが大好きだんたんですよ。しかし、絵描きになるなんて、そのこ
ろは考えてもいなかった。」と森田さん。「京都市立芸術大学美術部日本画教室での
石本正先生との出会いが絵描きになるきっかけだった。」と森田さん。
話は当時、大学の学長さんだった梅原猛さんの話題になった。「梅原先生は90歳を過
ぎてなおご壮健です。実は梅原先生学長時代の仲間で年一回展覧会を開催していま
す」と森田さん。「ご紹介していいかな」と言いながら「梅原先生のお宅にお邪魔し
たことがあります。バリアーフリーでない。それがまたご健康な秘訣かもしれな
い。」とエピソードを紹介された。
朝日カルチャーで上村淳史先生の助手をしていた。生徒さんの方が日本画を何十年も
やっておられた経験の持ち主で、厳しい言葉もあった。私はそれにめげなかった。先
日、ハルカスで個展を開いた。当時の生徒さんがお見えになった。いまだにお付き合
いをいただいていて、同窓会みたいなんですよ。」と森田さんは楽しそうに話され
た。
会場正面スクリーンに、順を追って、人物画、花、扇面、屏風絵と続き、話は金閣の
杉戸絵へ、そして最後はKAWAIIシリーズまで作品を映しながらの解説が続いた。「花
を描いていると、自分も自然の一員になったようで楽しい。絵を描いていると毎日新
しい発見がある。」と話された。森田画伯は花の画家、糸菊の画家としてつとに有名
だ。ところがご本人は「花も描くが、人物も描きます。両方描ける絵描きなんで
す。」ときっぱり。
「最初に描いた絵は人物画です。学生時代、通学する電車で車中風景を盛んにクロッ
キーで描きました。特にお年寄りの姿に心ひかれました。お顔のしわ、手の甲のしわ
に人生の年輪を刻み込まれた姿を表現しょうと思いました。それが今、画面に映って
いる絵です。」と「シルバーシート」と題する絵について解説された。
30歳の時、糸菊を描いて、第一回川端龍子大賞をいただいた。その時初めて下書きな
しで花弁の一枚一枚をフリーハンドで描いた。一本描いてはぼかし。描いてはぼかし
して2,000本描いた。」と森田さん。聞き手の吉田さんが「疲れませんか?」と言葉
をはさんだ。「疲れるとは思いません。手が憶えているのです。」と森田さん。聞き
手の吉田教授との息もぴったりで、用意された作品すべての解説を予定の3時30分ぴ
たりで終わった。
「近々個展開催のご予定は?」との吉田さんの問いに、「2019年に香雪美術館が中之
島に出来る朝日新聞会館に入りますが、そこで個展開催を予定しています。是非ご覧
ください。」と森田さんからご披露があり、お開きとなった。「朝日さんですか。読
売さんのライバルですね。」と吉田さんから軽くジャブが入った。トークを通して、
気の置けないお二人のやりとりが、また面白かった。(了)