「…あのー、もう一度聞きますけど、この写真、本当にあなたですか? 息子さんか誰かのじゃ…」
「僕です。さっきも言ったとおり」
「でも、だいぶ雰囲気違うんですけど。んーと、おなかは出てるし、頭はその…、だいぶ薄くなっていらっしゃるようだし」
「そりゃまあ、20年以上前のことですから、少しは変わっているかもしれませんね」
「少しどころじゃありません。おまけにダサ…じゃなくてごっついメガネかけてるし、全然イメージ違います」
「まあ、その頃は老眼はまだ出てなかったからね」
「ちょっとでも、ひどいと思いませんか、若い頃の写真をブログに載せるなんて」
「いやでも、ちゃんと僕は40過ぎだって言っているわけですから。それにどう見たって、ちょっといい、この写真はハタチ前後のものだってわかるでしょう」
「そりゃそうですけどぉ、今と全然違う写真を使うなんて、見る方にすれば、だまされたようなもんじゃないですか」
「全然ったって。目元なんか、少しシワが増えたとはいえ、昔と変わっていないと思うんだけどなあ」
「ひどいです。書いてることは難しくてよくわからないけど、写真見るとその、なんか素敵だなって思って、こうしてはるばるやって来たっていうのに。女の方からメールするなんて、勇気がいるもんなんですよ」
「はるばるったって、電車で2,3時間じゃないですか。それに、あれほど念を押したでしょ、『おじさんですけどいいですか』って」
「そりゃそうなんですけど、こんなに違うなんて、思いもしませんでした。少し考えればわかることでした。私もバカでした」
「いや大違いだと言うんなら謝るけど、悪気があって老けたわけじゃないんだからさ」
「当たり前です。好きで年取る人なんていません」
「でしょう? だから、イメージ違うのは仕方ない」
「そうじゃなくてぇ。年取るんなら何て言うか、カッコ良くと言うのか、素敵な紳士の方を想像していたんですけどぉ。もう、ゲンメツです」
「幻滅するのは勝手だけど、僕のその…年のとり方にまで文句言う筋合いはないんじゃない?」
「ないです。ないんですけども、何ていうのか、カッコ悪すぎます。これじゃ、ただのスケベ親父です。どうりであっさりと会ってくれると思ったわ」
「おいおいそれはひどいじゃないか。僕だって好きでこんなになっちゃったわけじゃない」
「好きでなったと言われても仕方ないと思います。何だかだらしなさ過ぎます。ハゲ頭の上にぶくぶくと太って、運動か何かやってるんですか?」
「そりゃまあ仕事も忙しいし、なかなかね。でも〈ハゲ〉は失礼でしょう」
「ハゲはハゲでしょ。事実を言って何が悪いんですか」
「いや、失礼というもんだ」
「それに、写真見ると180はありそうなのに、身長、私とあんまり変わらないじゃないですか」
「いやそれは、たまたま撮ってもらったのが妹だから、下から見上げた格好になっただけで…」
「たまたま? でもそんな写真を載せれば、見た人は背が高い人だって思うでしょう」
「これも悪気があってやったわけじゃないんだからさあ。許せる範囲だと思うけどなあ」
「許せません。本当にあなたの写真なんですか? 実物とはだいぶ違うんですけど。デジカメで細工でもしたんじゃないですか?」
「君もしつこいな。確かに僕だ、20年以上前のね」
「サギです。写真写りの一番いいのを選んだに違いありません」
「そりゃカッコ悪く写っているのよりも、カッコ良く写っているのを載せるのが普通でしょ。自分のブログなんだから」
「もういいです。こんなの、大事に持ち歩いていたのがバカらしくなりました。あげます」
「あげますったって要らないよ、自分の写真。それにね、君、さっきから僕の見た目をひどく言うけれども、自分はどうなの」
「あー、そんなこと言われるとは思わなかった。ひどい。女性の容姿を悪く言うなんて」
「だって中身のことは何も触れずに見た目のことばかり言うんだもの」
「もちろん中身も大切です。でも見た目も、やはり大切なんです。それが、それが、予想とこんなに違うなんて」
「違うってなら悪いけど、見た目、見た目って言うんなら自分の顔も見てから言うべきだよなー」
「あーまた人の容姿のこと言ったー。もー許せない。キーッ!」
(この物語は、フィクションです)
Copyright(c) shinob_2005
「僕です。さっきも言ったとおり」
「でも、だいぶ雰囲気違うんですけど。んーと、おなかは出てるし、頭はその…、だいぶ薄くなっていらっしゃるようだし」
「そりゃまあ、20年以上前のことですから、少しは変わっているかもしれませんね」
「少しどころじゃありません。おまけにダサ…じゃなくてごっついメガネかけてるし、全然イメージ違います」
「まあ、その頃は老眼はまだ出てなかったからね」
「ちょっとでも、ひどいと思いませんか、若い頃の写真をブログに載せるなんて」
「いやでも、ちゃんと僕は40過ぎだって言っているわけですから。それにどう見たって、ちょっといい、この写真はハタチ前後のものだってわかるでしょう」
「そりゃそうですけどぉ、今と全然違う写真を使うなんて、見る方にすれば、だまされたようなもんじゃないですか」
「全然ったって。目元なんか、少しシワが増えたとはいえ、昔と変わっていないと思うんだけどなあ」
「ひどいです。書いてることは難しくてよくわからないけど、写真見るとその、なんか素敵だなって思って、こうしてはるばるやって来たっていうのに。女の方からメールするなんて、勇気がいるもんなんですよ」
「はるばるったって、電車で2,3時間じゃないですか。それに、あれほど念を押したでしょ、『おじさんですけどいいですか』って」
「そりゃそうなんですけど、こんなに違うなんて、思いもしませんでした。少し考えればわかることでした。私もバカでした」
「いや大違いだと言うんなら謝るけど、悪気があって老けたわけじゃないんだからさ」
「当たり前です。好きで年取る人なんていません」
「でしょう? だから、イメージ違うのは仕方ない」
「そうじゃなくてぇ。年取るんなら何て言うか、カッコ良くと言うのか、素敵な紳士の方を想像していたんですけどぉ。もう、ゲンメツです」
「幻滅するのは勝手だけど、僕のその…年のとり方にまで文句言う筋合いはないんじゃない?」
「ないです。ないんですけども、何ていうのか、カッコ悪すぎます。これじゃ、ただのスケベ親父です。どうりであっさりと会ってくれると思ったわ」
「おいおいそれはひどいじゃないか。僕だって好きでこんなになっちゃったわけじゃない」
「好きでなったと言われても仕方ないと思います。何だかだらしなさ過ぎます。ハゲ頭の上にぶくぶくと太って、運動か何かやってるんですか?」
「そりゃまあ仕事も忙しいし、なかなかね。でも〈ハゲ〉は失礼でしょう」
「ハゲはハゲでしょ。事実を言って何が悪いんですか」
「いや、失礼というもんだ」
「それに、写真見ると180はありそうなのに、身長、私とあんまり変わらないじゃないですか」
「いやそれは、たまたま撮ってもらったのが妹だから、下から見上げた格好になっただけで…」
「たまたま? でもそんな写真を載せれば、見た人は背が高い人だって思うでしょう」
「これも悪気があってやったわけじゃないんだからさあ。許せる範囲だと思うけどなあ」
「許せません。本当にあなたの写真なんですか? 実物とはだいぶ違うんですけど。デジカメで細工でもしたんじゃないですか?」
「君もしつこいな。確かに僕だ、20年以上前のね」
「サギです。写真写りの一番いいのを選んだに違いありません」
「そりゃカッコ悪く写っているのよりも、カッコ良く写っているのを載せるのが普通でしょ。自分のブログなんだから」
「もういいです。こんなの、大事に持ち歩いていたのがバカらしくなりました。あげます」
「あげますったって要らないよ、自分の写真。それにね、君、さっきから僕の見た目をひどく言うけれども、自分はどうなの」
「あー、そんなこと言われるとは思わなかった。ひどい。女性の容姿を悪く言うなんて」
「だって中身のことは何も触れずに見た目のことばかり言うんだもの」
「もちろん中身も大切です。でも見た目も、やはり大切なんです。それが、それが、予想とこんなに違うなんて」
「違うってなら悪いけど、見た目、見た目って言うんなら自分の顔も見てから言うべきだよなー」
「あーまた人の容姿のこと言ったー。もー許せない。キーッ!」
(この物語は、フィクションです)
Copyright(c) shinob_2005