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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

「子孫」

2005-02-27 08:41:26 | ショートショート
「うちの親父にはかなわないよなあ」と、ひとりの男が言った。

 数十年後、男の息子がこう言った。
「うちの親父にはかなわないよなあ」

 さらに数十年後、そのまた息子がこう言った。
「うちの親父にはかなわないよなあ」

 …そして数千年、どうしようもない人間だらけになってしまった。


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歌姫

2005-02-20 09:28:25 | エッセイ
 番組自体は見ていないが、先日、テレビで『歌姫・美空ひばり』というのをやっていた。年配の方にとっては「歌姫」と言えば彼女であろうし、もう少し下の年代なら中島みゆきや山口百恵、そして今なら浜崎あゆみだろうか。
 僕らの年代だと、中森明菜が真っ先に思い浮かぶ。ただ新曲を出していないのか、最近はあまり見かけない。全盛期は、出す曲出す曲大ヒットし、確か日本レコード大賞を連続して獲っていたと思うが、それを考えると寂しい限りである。たまに歌番組などに出てくるが、昔に比べ、声に張りというのか力がない。
 痩せてしまったのが原因なのか、気持ちの面に原因があるのか、近くにいるわけではないのでよくわからない。それとも、年齢とともに声に力がなくなるのは歌手なら当たり前のことで、それはそれで声に合った歌を歌っていればいいのだろうか。
 あの、例えば「くちづけられタンゴノワア~~~~ル」といった伸びのある声が生で聞けないのは、やはり寂しい。何とか復活を、と願っているのは僕だけではないはず。昔が凄かっただけに。
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「或る組織」

2005-02-13 08:16:24 | ショートショート
 この平和な時代に、全世界的な謎の組織があるのを知っているだろうか。その支部の数たるや、国連の参加国数を上回るほどで、まさに、世界を陰で支配しているといっても過言ではない。
 本部はヨーロッパのどこかにあるというのだが、詳しい場所は、私も知らない。本部と支部にそれぞれ一体どれくらいの人員が配置されているのか、それさえもよくわかっていない。そしてその活動内容はというと、各支部に数十名ずつのグループを作らせ、お互いに戦わせるというもの。肉体同士ぶつかり合うため、時には血を流し、時には大ケガを負うこともある。しかし、戦い自体はそのまま続けられる。決して、そこで終わるわけではない。負傷者のことなど、気にしている暇はないのだ。
 さらに驚くべきことに、これらの戦いは、公開で行なわれる。観客たちは、戦いを楽しげに眺め、時にはひいきでないグループへの激しい罵倒を浴びせたりもする。勝った者たちには栄誉が与えられ、負けた者たちは寂しく引き上げていく。そして勝っても負けても、この戦いが終わることはない。別の場所で、また別の相手との戦いが続けられる。
 私も一度この戦いを目にしたことがあるが、タマが飛び交い、煙が立ち込め、一種騒然とした雰囲気の中で行なわれていた。見る方だって、命がけだ。観客の方が命を落とすことが多い、ということも聞いた。
 組織は、末端に到るまで支部を通じて本部の管轄下にあり、上納金が、規模の大きさや収入の多寡によって課せられている。従って、組織は常に有り余るほどの蓄えを持っており、戦闘資金には困らない。さらに、戦いを公開することによって、ますます上納金が増えるというシステムも作り出している。また、政治経済は言うに及ばず、学術文化方面にも、絶大な影響力を持っているらしい。
 そう、この戦いはサッカーといい、組織の名を、FIFAという。

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バレンタイン・デー

2005-02-06 08:37:17 | 女の子
 女の子から言い寄るのはハシタナイ、という考え方はまだまだ根強いようで、年1回とはいえ、こういう日があるのはいいことなのかもしれない。チョコレート業界の陰謀、という説もあるが、それだけではこうまで普及はしていないだろう。
 男の子は男の子で、当日そわそわするのはみっともない、チョコなんかもらうのはカッコ悪い、と考えているのが多いようで、くれそうな女の子をわざと避けたりもする。
 世の中、好きな子からチョコもらえる場合もあれば、そうでない場合もあろう。チョコあげたくても嫌がられやしないかと迷っている子もいるだろう。過去、苦い思いをした人もあるだろう。あるいはまた、バレンタインなんて全然関係ないやって人もいるだろう。
 でも、男女に関係なく、自分の想いを伝えるというのは悪いことではない。少なくとも、想いを伝えない限りは何も始まらない。
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