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エッセイとショートショートと―あちこち話が飛びますが

春の新番組から

2011-04-24 08:32:22 | エッセイ
 
 7月に全面地デジ化が予定されているせいか、この4月にちょっとしたテレビ番組改編があった。その中で、面白いと思って見ているものをいくつか。すべてNHKなのであるが。

1.さかのぼり日本史〔Eテレ〕
 記憶することばっかりで学生時代は一番苦手だった歴史だが、別に覚えなくてもいいので気楽に見られる。それ相応に年取ったというのもある。
 解説の五百旗頭(いおきべ)真さんというのは、今回の震災を受けて発足した「復興構想会議」の議長であり、防衛大学校の学長さんである。
(なお、その昔防大の理工に合格したことがあるが、そちらに行ってたら、人生大きく変わっていただろう)

2.100分de名著〔Eテレ〕
 ニーチェ『ツァラトゥストラかく語りき』や孔子の『論語』など、読みたいけれどとっつきにくい本を、アニメや紙芝居など使って紹介・解説してくれるいい番組。
 『ツァラトゥストラ』第3回で出てきた〈永遠回帰〉や〈運命愛〉というのは、最近感じていることとマッチして、心に深く響いた。この春一番のオススメ番組。

3.0655〔Eテレ〕
 朝の子供向け番組ながら、脱力系でなかなか。『わが輩は、犬』『あたし、ねこ』なんて歌や、あまり知られていない各国の首都名など出てきて、5分間面白く見ている。夜中零時前には「2355」というのもあるらしい。

4.宇宙からWAKE UP CALL〔BSプレミアム〕
 NASAの膨大な映像から、これまた5分間だけ編集し、それぞれの宇宙飛行士用に使われた目覚まし曲を紹介するもの。おなじみの曲/歌が、見事な映像とともに出てきて、朝から壮大な気分になれる番組。

 ところで、土曜日の朝というのは、新聞に週間テレビ番組案内が載るし、休みの始まりということもあって、とても幸せなひととき。いつもより早起きしてしまうほど。
 

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「解決する男」

2011-04-10 09:57:07 | ショートショート
 とあるメーカーの、とあるベテラン社員の話。

 月に1度、社内の品質会議を主催するのがその男の主な業務であった。
 毎回毎回、それこそ種々雑多な問題が取り上げられ、主催者として、コメントなり解決策を求められるのは当たり前のこと。それは事前に話のあったものはもちろん、「ところで…」といって切り出されるまったく別の問題まで。
 最初のうちはしどろもどろになっていたが、普段から課題に直面することはしばしばであったし、また長年やっていれば、パターンというのがわかってきて、どんな質問・課題にもいつしか答えられるようになってきた。
 もちろん本人の努力というものもある。よく勉強したし、あちこち関連する職場に顔を出しては話をしながら情報を入手したし、苦手だった先輩や後輩とのつながりも大事にするようにした。

 だからたまに難しい問題が出てきても、ひと晩考えるか、誰か詳しい者にでも相談すれば、翌日には見事な解決策が出てくるのであった。たとえ問題の解消には至らなくとも、どうすればいつまでに解決するかの答えが。
 当初はあまりの手際の良さに、あちこちからやっかみの声もあったのだが、何より皆助かっていることでもあるし、その飾らぬ人柄に、いつしかそういう声も聞かれなくなったのである。
 頭は〈切れる〉にもかかわらず、その語り口は決して〈立て板に水〉といったものではなく、むしろ朴訥としたもので、それがまた周囲の好感を呼ぶのであった。

 ある日の会議のこと。いつも以上の難問が出され、周りの視線を浴びながら明快な解決策を示したあと、男はある種の虚しさを感じるのであった。どんな問題にも答えを出して、それで皆は安堵し、ますます頼りにされ、会社も安泰なのであるが、男としてはどうも物足りない。面白くないというか、何か、答えられない問題というのはないのか…。
 しかし人間関係含め、会社のかなり細かいところまで知り尽くした男にとって、それはいささか無理というものだった。ふと転職ということも頭をよぎったが、仮に転職したとしても、同じように努力して、やがてその会社の問題すべてを解決していくことになるだろう。
 身に付いた習性というのか、素晴らしい思考回路が出来上がっているため、問題に行き詰ることはない。分からないフリはできても、本当に分からない、ということはできないものだ。

 会社ではもちろん、家に帰っても、休日でも、旅行に出ても、常に仕事のことを考え続けている。それが何十年も続いているのであるから、最近じゃそれが当たり前になってはいるのだが、ふと、昔はもっと脳ミソのんびりしていたものだがなあ、と思うのである。今は、常に頭がフル回転しているというのか。
 だから、夜中あるいは明け方に目がさめ、考え込むこともしばしば。従って寝不足となり、仕事中・会議中も居眠りすることが多いのだが、調べ尽くし考え抜いているから答えは容易に出てくる。それでまた周囲は助かるのである。

 そろそろ定年だし、こういう生活もようやく終わりになるところだが、社長からは「顧問としてしばらく残ってはくれないか」と言われている。
「こうなりゃボケるしかないのかなあ…」と思う次第。


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金沢へ

2011-04-03 10:36:35 | 
 
 次男の進学の関係で、先日金沢へ。
 雪の残る山間部や広々とした平野など、見慣れぬ風景を車窓から新鮮な思いで眺めながら、ひとり旅のような気分に浸っていた。

 おなじみ兼六園や金沢城公園、県立歴史博物館を見て回る。行くまでのバスもレトロなものだったし、北陸の古都と言われるだけあって、街並みも奥ゆかしいもの。
 土産物屋でも伝統のありそうなお菓子がたくさん並んでて、選ぶのに苦労した。取り敢えず有名な「長生殿」のナマを。
 さすがに雪はもう残っておらず、雪吊りの縄も取り外されていたが、兼六園はなかなかいい所。こんなことでもなければ滅多に来られないんで、「ありがたいことだ」と思いながら歩いていた。
 今度はいつになるか分からないものの、雪景色も見てみたいものだと思った次第。

 ところで、駅の中で昼食を摂っていたら、馴染みの客だろうか、店の人と懇ろに話をしているのを見かけた。〈一見さん〉の僕はもちろん蚊帳の外なのだが、そういう時ってのは少々寂しいもの。
 次男も初めての土地だし、しばらくはそういう思いをすることだろう。九州から出てきた僕が30数年前に味わった〈異邦人の感覚〉あるいは〈よそ者の悲哀〉というのを同様に感じるだろうが、そうした感覚を味わいながら馴染んでいくのも、成長するためには大事なこと。ツラいかもしれないが、少しずつ…。
 

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