その昔、どっかで聞いた話。
「人間には、他人(ひと)には見せてはならない3つの顔がある」というもの。一つは「お金を数えている時の顔」、次が「嫉妬している時の顔」というところまでは覚えていたのだが、もう一つがどうしても思い出せずにいた。ネットで検索しても出てこないし、ずっと頭に引っ掛かっていた。
それが最近わかった、というお話。
昨年亡くなった作詞家・阿久悠についてのコラムが、8月1日の朝日の夕刊に載っていて、その中に、彼の父親の話として「男が他人に見せてはいけない顔」としての記載があったのだ。
・飯をかっ喰う顔
・便所で力みかえる顔
・嫉妬で鬼になった顔
・性に我を忘れる顔
・金の亡者になった顔
1番目のは人前で食事する限り無理な話だろうし、4番目のはいわゆる秘め事であるからあまり表に出るようなものでもない(食欲にしろ性欲にしろ、ガツガツし過ぎるのは無論バツ)。いずれにしても、みっともないことには変わりはないが。
結局、僕が思い出せなかったのは2番目の「便所で力みかえる顔」だったようだが、言われてみれば何てことのないものだった。
また、これは別に男に限った話でもないはず。その上で、現代風にまとめるとこうなる。
―人間には、他人に見せてはならない3つの顔がある。
①お金を数えている時の顔
②嫉妬しているときの顔
③トイレにしゃがんでいる時の顔
ところで、僕が昔聞いたのは、阿久悠の父親の話ではなかったように思う。おそらく、明治あるいは大正時代の常識として、上記のようなことがよく言われていたのではないか。それが廻りまわって、僕の耳にも入ったのだろう。
なおこの話、これから2人が一緒になるという披露宴のスピーチなんかに使えると思っているのですが、なかなかその機会がなくて…。尾籠な話が一つ入っているものの、よかったら使って下さい。
〔写真は、北京の高級料理店での京劇〕