本屋をぶらぶらしていたら、『自由訳 老子』というのが目に留まった。パラパラとめくったらとても読みやすいので、買ってきて2,3日で読んでしまった。
ちなみに、著者は、あの「千の風になって」の新井満さんである。
老子…懐かしい名前だ。『論語』の孔子の方はよく聞くし本もたくさん出てるけれども、「巧言令色」とか「君子危うきに」とか、どちらかと言うと真面目な印象だ。それに対し老子の方は、「無為自然」とか「上善若水」とかいって、自由奔放な感じ。
その昔、受験勉強で大変だった高校時代にハマったことがある。息詰まる毎日の中、自由なその考え方にあこがれたものだ。
新井満さんも書いているように、サラリーマンなど現役時代なら孔子の考えの方が役に立つだろうが、年取って引退してからは老子の考えの方がしっくりくるようだ。一生を通じても、老子の〈いのち〉を大切にする考え方の方がいい、とも。
ここんとこまた多忙なので、こういうのんびりした考え方ってのは、身にしみるというか、ありがたい。
どちらも大昔の中国の考え方を代表するものだが、片や正統派、片や無頼派、といった感じで、その趣きはかなり異なっている。「細かいことはいいじゃない、のんびりやりましょうや」とでもいった、良く言えば〈おおらか〉、悪く言えば〈いい加減〉な考え方は、今の中国にも通底しているように思える。
偽グリセリン事件でいったんニュースになったから次々とニュースになるけれど、中国人の〈おおらかさ〉というのは、何千年にもわたって染み付いているものだ。来年北京でオリンピックが開かれるってんでマナー教育とかやっているらしいが、日本人の緻密さと同じく、良きにつけ悪しきにつけ、国民性というのはそうそう変わるものではないだろうと思う。
あるいは、中国でビジネスやる人は、老子の考え方も勉強しておいた方がいいのかも。
人生を達観した、仙人みたいな大人(たいじん)というのは、中国あたりにはたくさんいて、こせこせした考えなど、微塵も持っていないに違いない。そういう昔からの人たちの考えをまとめたのが「老子」だ、という説もあるそうだ。
いずれにせよ、そういうおじいちゃん(老人)に、なってみたいものだ。
(老子の言葉の訳は、ネットでもたくさん見つかります。「老子全81章」というのが、とりあえずオススメ。それと、加島祥造さんという人が、老子やタオについて、いろいろと本を出しています)