思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

ベートーヴェン交響曲3番「英雄」 ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 演奏感想

2017-12-03 | 芸術

12月2日(土)
ベートーヴェン交響曲3番「英雄」ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 演奏感想 (サントリーホール)

弦が多いが、二管編成で、56名
左に第一ヴァイオリン12名 右に第二ヴァイオリン10名 その隣にヴィオラ10名
中央から左にチェロ6名 左にコントラバス5名
木管は、フルート2名、クラリネット2名、オーボエ2名、ファゴット2名
金管は、トランペット2名、ホルン3名

現代でしか成し得ない名演に酔いしれた。
時代楽器の鋭さではなく、肥大した四管による重圧な演奏でもない。
今を生きる強く美しいエロイカは、未来を志向している。

見事なまでの迫力は痺れるような快感を呼ぶ。実に気持ち良い。
ティンパニーの鋭く強い打音。弦の思い切りのよい強奏とビロードのような滑らかさ。ヴィオラの美しい響きはとりわけ耳に残る。第四楽章のチェロの独奏も美しい。木管は相変わらず上手く、英雄を特徴づける3本のホルンもよい。総じて都会的な洗練があり、東響は、一人ひとりの奏者がよろこびを持ち、完全に世界レベルだ。

ベートーヴェンの共和革命への意思。流動し、激しく渦巻き、あらゆる抑圧と怠惰を撃ち破る史上最高の交響曲の誕生の場に居合わせたかのような興奮と悦び。コントラストも強く、ダイナミックレンジも広い。しかし、デモーニッシュなところはなく、健全な力に満ちている。「神」とも「悪魔」とも縁がない健康な人間の音楽だ。ヒューマニズムの美と力に溢れた音楽ゆえに最高の英雄と言える。創意に満ちているが主観主義とは無縁であり、圧倒される迫力をもつが爆演ではない。品位が高く、微妙で豊かな音楽性に包まれている。

サロネン・フィルハーモニーの2年半前の名演が色褪せてしまいそう。はるかに踏み込みの強さがあり、躍動感に優れ、響きも含みと厚みに勝り、テンポ感がよく、リズムがしなやかで快適。心身全体が満足する。ノット・東響の現在は、恐るべしという他ない。


録音されていたので、SACDで発売になると思う。行かれなかった方も、この見事なエロイカをぜひ聴いてください。血沸き、肉躍り、精神は高揚します。



武田康弘

コメント (5)
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