かつて一度もなかったことでしょう。
モーツァルト『レくエイム』演奏の歴史で、はじめてのことでしょう。
モーツァルト最後の作品『レくエイム』の演奏後、しばらくして歓声があがり、それが繰り返され、最後は全員がステンディングオベーション。聴衆の顔は嬉々として、まさにカタルシス。
しかも、場所は、モーツァルトの生誕地=ザルツブルク。
昨2017年に行われたザルツブルクフェスティバルでの演奏会のこと。いやらしい言い方をすれば、世界で最も権威あるモーツァルトの演奏会でのこと。
指揮者は、アテネ出身でロシアのペルミ(シベリア)を本拠地にするテオドール・クルレンツィス。オーケストラと合唱は、クルレンツィスが組織したムジカ・エテルナで、クルレンティスの理念ー音楽革命に賛同する若き名手たちの集合。古楽器も現代楽器も自在に弾きこなす人たちの集まりです。
この演奏、まるでモーツァルトの心に直接触れるかのような音と音楽。かつての巨匠たちの演奏とは次元が違う怖ろしくなるほどの『レクイエム』です。演奏後、コンサートマスターも隣の女性奏者も涙していました。
時間のない方は、飛ばし飛ばし数分間でもぜひご覧ください。ザルツブルクフェスティバルの提供する音声と映像は、すばらしく美しい!
武田康弘