現代の日本文明を呪咀して、江戸文明に憧憬し仏蘭西文明を駆歌する荷風氏。現実の醜悪を厭うて夢幻に遁れんとする未明氏。温雅淡白よりも豊艶爛熟を喜ぶ白秋氏。
或る意味に於て、すべての人間はアイデアリストである。ドリーマーである。ロマンチケルである。アナクロニズムといい、エキゾーチシズムという語は色々な、複雑な意味を持っていると思う。
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俳壇の現状は薄明りである。それが果して曙光であるか、或は夕暮であるかは未だ判明しない。
俳句の理想は俳句の滅亡である。物の目的は物そのものの絶滅にあるということを、此場合に於て、殊に痛切に感ずる。
──種田山頭火「夜長ノート」より