★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

田舎と前衛

2024-06-16 23:06:32 | 文学


百姓は、各国の帝国主義に尻押しをされて、絶えまなく小競合を繰りかえす軍閥の苛斂誅求と、土匪や、敗残兵の掠奪に、いくら耕しても、いくら家畜をみずかっても、自分の所得となるものは、何一ツなかった。旱魃があった。雲霞のような蝗虫の発生があった。収穫はすべて武器を持った者に取りあげられてしまった。
 ある者は、土地も、家も、家畜も売り払って、東三省へ移住した。多くの者が移住した。――その移住の途中で、行軍する暴兵に掴まって、僅かの路銀を取りあげられた。そして、それから向うへは行けなくなった。そんな者が工人として這入りこんでいた。


――黒島傳治「武装せる市街」


うちの庭にはたくさんの虫がいる。はじめてする田舎暮らしである。お前は木曽の生まれじゃないかというひともいるであろうが必ずしもわたくしは田舎育ちではない。確かにわたくしは田舎の生まれとか称してはいるが、駅からアスファルトの道の商店街を数分歩くと実家につくという、下手な東京住みよりもシティボーイであるといへよう。いまのほうが田園地帯のど真ん中にすんでて、八沢川の音の代わりに虫の鳴き声で寝ている。空気もいまのほうが正直キレイだし星もくっきりみえる。ただ、人口が今住んでいる高松市の一地区の人口が木曽町の2倍(3倍か?)なだけである。大した問題ではない。

ところで、土日は眠いから前世は猫かも知れない。

金曜日に口走ってしまった、和歌の私性問題、ああこれ大問題だとおもいながら、いろいろと作業が進まない。

なんとかいう歌手のMVが炎上していたらしいがしらず、その「コロンブス問題」に乗り遅れた。が、バスに乗り遅れるのはたいがいよいことだ。わたくしは鈍いせいか乗り遅れる才能に関しては飛び抜けている。前衛達はそこがだめなのだ。

夫を立てるとかいうと良妻賢母かよとかバカにされる傾きがあるが、実際人をたてるというのはなかなか難しいことであって、少なくとも太陽族になるより難しいことだ。前衛達は、そういう難しいことを無視しているから自分のやるべき事を保守できない。

そういえば、こぶし書房が廃業ときいた。わしがたくさん買ったのに。。

昨日の「博士ちゃん」だかはひどかった。歴史修正主義は悪かもしれないけど、文学修正主義というのもあって、こっちのほうもかなりタチが悪い。「源氏物語」を語りたいならまず読まなければならないが、ほとんどのひとがそうしない。そして基本的な筋さえ間違えて語る。子どものオタクまで空気を読むことしかしない此の世は地獄である。すくなくとも「源氏物語」の世界が自由に思えてくる世は自由ではない。