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「いや。若い者なんぞに二度とは見せないという、お前さんの注意は至極好い。蛇位はわたしだって掴まえる。毒のある蛇だと棒が一本いる。それで頸を押えて、項まで棒を転がして行って、頭の直ぐ根の処を掴むのです。これは俗に云う青大将だ。棒なんぞはいらない。わたしの荷物の置いてある処に、きのう岩魚を入れて貰った畚があります。あれをご苦労ながら持て来て下さい。」
爺いさんは直ぐに畚を持って来た。
己は蛇の尾をしっかり攫んで、ずるずると引き出して、ちゅうに吊るした。蛇は頭を持ち上げて自分の体を縄を綯ったように巻いたが、手までは届かない。己は蛇を畚に入れて蓋をした。
丁度時計が十二時を打った。
――森鷗外「蛇」
いまどことなく人類学が流行っており、重要なのはわかるけど、人類学者ってなんか調査に行くとアナコンダに襲われたりするんですよね(むかしそういう映画あった)。
子どもの頃は、箪笥に青大将なんかが居たりして、お婆さまがつかまえて八沢川に放り投げていた。昔のひとなんか、みんな人類学者並みだったのである。