「左沢」と書いて「あてらざわ」と読む。
JRの難読駅名として知られる左沢線の終着駅だ。
左沢線は、北山形から左沢まで24.3Kmのローカル線だ。
沿線がサクランボやリンゴの産地で有ることから「フルーツライン左沢線」との愛称で
呼ばれている。


途中の寒河江までが、山形への通勤・通学圏内なのか、区間運転の列車が多い。
しかしその先の左沢までと成ると、朝晩は1時間1本程度有るが、昼間は12時台の1本のみ
である。
山形から奥羽本線を走り、一つ先の北山形で左沢線に入る。
山形から来ると分岐の先に駅があるから、本線と左沢線のホームは、離れたところに
あって違う駅のように見える。

朝7時過ぎの始発に乗ったら以外と乗客が多い。多くは学生で有る。
学生は途中で降りて行ったが、停まるたびにそれ以上の別の学生が乗り込み、ローカル線
の割には都会の通勤ラッシュ並みの混み様である。
車輌はベンチシート、おまけに窓は結露で曇ってしまい、乗客の多さも有って、折角の
景色も見ることが出来ない。
左沢には1時間足らずで到着する。
ここ左沢は、洋ナシの名産地らしく、駅名標が洋ナシの形をしているから面白い。

その日は生憎の霙模様、傘のいる天気となった。
このまま山形に折り返すので、手早く周りの写真を撮ると、乗ってきた列車に戻り、
座って発車を待った。
山形から通学の学生を運んだ列車は、今度は山形方面へのサラリーマンの足となるようだ。
次々とそんな風体の男女が乗り込んで空いた席に腰を下ろす。
こんな様子を眺めていると、皆一様に、席に着くなり、手に持っていた傘を座席の下の
足元に、座席と平行に置くのである。
確かにこれなら、自分の両足も、目の前に立つ乗客の着衣も濡らすことも無いのである。
座ると誰もが同じ事をするから、これがこの地方の乗車マナーであろうか。
所変われば、マナーも変わる。面白い光景を見てしまった。(続)
