
電車が野市の駅に到着する少し前、右手に今晩泊るホテルが見えていた。
駅からはそんなに遠くは無く、本来なら充分に歩ける距離である。
しかし、足の裏の痛さはさすがに限界を超えている。
この寒さと、本降りになった雨もあり、今は歩く気力が完全に萎えている。

足の裏のつぶれたマメの手入れにはガーゼがいるので、駅前のスーパーで買い求める。
買い物を済ませ、店を出ると丁度運よく玄関先に空車が一台停まって居たのでそれに
乗り込んだ。
「近くて申し訳ないが、足にマメが出来て歩けないので・・・」と断りを入れ、ホテル名
を告げると運転手は愛想よく応えてくれた。

タクシーは、5分もするかしないうちに「高知黒潮ホテル」の玄関前に到着した。
本当なら明日泊まる予定の宿だ。
ここは、予約時に遍路を名乗ればお得なパック料金で宿泊が出来、その上ありがたいこと
に、併設する「黒潮温泉・龍馬の湯」の無料券も付いてくる。

疲れた身体に広々とした温泉は有りがたい。
心地良い湯にドップリとゆっくりと浸かり疲れを癒す。
しかし残念ながら足の痛みまでは取ってくれない。
明日以降、「さて、どうすべきか・・・」湯船に浸かりながら思案するのである。
風呂上り、夕食を摂りながら相棒と相談した。
今回の計画では、高知市内の竹林寺を経て、33番・雪蹊寺か、出来ればその先の種間寺
まで行けたら良いと考え、宿もそのように手配していた。
しかし、どう考えてもこの先を歩き通すことは出来そうに無い。
「足もこんな状態だから、もし明日、天気が回復しなかったらここで打ち切ろう」と。(続)
