弁柄(ベンガラ)は、人類が最初に使った赤色顔料である。原料は土
から取れる酸化鉄で、地球上に存在する赤色は、殆どがこれに由来し、
「大地の赤」と言われている。
日本にはインドのベンガル地方から伝来したことから、ベンガラと呼
ばれるようになり「弁柄」、「紅殻」などと表現されている。
国産「弁柄」の初めての発見は、18世紀初頭である。
江戸は宝永年間に、備中吹屋地区で、銅鉱山で産出される硫化鉄鉱から
得られる酸化第二鉄から偶然の産物として生まれた。
「火鉢の中の焼き石を庭先に捨てたところ、降り出した雨に濡れて水
が赤く変色した」このことが、鉱石を焼いて水洗いをすれば、赤色の色
素が得られるというヒントになった。
その後、時の吹屋代官が弁柄の商品価値に着目し、当地で独占的に生産
する事を奨励した。
当地で生産される製品は、品質が格段に優れる高級品とされ、「赤の
中の赤」とまで言われるほどに珍重され日本全国に広まり、更に海外ま
で知られるようになった。
防虫・防錆・防腐効果があり、家屋や寺院などの弁柄塗りや、道路の着
色料としても使われている。
当時、中国山地一帯で生産される銅や砂鉄、「弁柄」、薪炭や雑穀は
ここ吹屋に集められた。その為吹屋の町には問屋や旅篭、飲食店が何軒
も並び、市場としての体を成していた。集められた物産の荷駄は、隊列
を成して吹屋街道を成羽に向け運ばれていたと言う。
荷はそこから高瀬舟に積み替えられ、高梁川を下り玉島港に集められ、
瀬戸内海を使い上方や西国に送られた。
吹屋の賑わいは、江戸時代天領として栄える倉敷と比べても、遜色の無
いものであったと言われている。(続)
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