古い思い出を話しだすと、「又同じ話を。もう何回も聞いた。」と
つれない言葉が返ってくる。自分では余り意識していないが、どうや
ら同じ話を何度もくり返し、家人にしているらしい。
歳を重ねたせいか、近頃ふとした弾みで昔のことが鮮明に蘇ってくる
ことが有り、回想を口にする事も多いようだが、大抵の場合この言葉
でそれが終わる。
作家の五木寛之さんは、『思い出のつまった引き出しは、放ってお
くと錆びついてくる。しかし、くり返し開けたり閉めたりしていると、
いつどんな時でも楽に思い出を引き出す事ができるようになるはずだ。
体を使って歩き回るだけが行動ではない。回想の世界を逍遙するのも、
りっぱな運動のひとつだ。この回想活動をあまりしないでいると、脳の
働きはおとろえてくる。
アルツハイマー病の予防のためにも、思い出を磨くことは大切である。』
更に『回想の引き出しを開けるためのその鍵のことを、「依代(よ
りしろ)という。これは心の奥底に眠っているものを引っぱりだすた
めのモノのことだ。』(新地図のない旅2019/06/05)と述べている。
何かを見てそれがトリガーとなり、普段は忘れていた懐かしい記憶
がふと蘇ってくることは度々経験しそんな時つい語ってしまうようだ。
例えばテレビに見慣れた風景が映し出されると、或は町中で何かに遭
遇すると、はたまた何か過去のモノを手にするとつい自分の体験、思
い出や、持論を披瀝する。
それがどうやら同じ話のくり返しになっているようだ。
しかし、アルツハイマー病の予防にもなるのなら、家人よ「同じ話で、
退屈ではあろうが暫く突き合ってくれ」と声を大にして言ってみたい。
(続)(写真:ラグーナテンボス 本文とは無関係)
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