少し上ったところで、突然足の力が抜けるような感じがした。
「アレッ」と思い、思わず石の手すりに身を寄せ、掴りながら石段を登ろうと足を上げるが
何となく体が重い。 それでも何とか中ほどの平坦な所まで辿り着き、しばらく足を止め、
呼吸を整え再び石段に挑むが息苦しさは変わらない。
それでもどうにか三ノ門に辿り着いたその刹那、フーツと気が遠くなるような感覚に足元を
乱され、堪らず崩れ落ちるようにすぐ脇のベンチに腰を落とす。
ほんの二三秒、意識が飛んだ。
そのあとボーっとして、意識の混濁が有るような、浮遊感のある不思議な感覚に見舞われた。
冷や汗であろうか、全身に汗が噴き出していた。
シャツは勿論、ズボンまで大腿の形が解るほど黒い影となって汗が染み出している。
実際にはもっと短時間だったのかも知れないが、顔面は蒼白になり、何か意味の分からない
呻きを一言二言発した(と相棒が言う。)らしい。
気が付いた時には、何が有ったのか、何が起きたのか自分自身でも解らない。
本堂と三ノ門の間で、お百度参りをする女性をぼんやりと目で追いながら、暫く静かに呼吸を
整えていると、次第に回復していくのが実感できる。
30分もすると俄かに空腹も覚え、駅で買ったおにぎりの袋を取り出す。
薄い包装紙も難なく剥がせ、咀嚼するのに問題もない。何よりも美味しいと味も解る。
体に格段の異常は残っては無さそうだ。
おにぎりをほおばりながら、遍路が行き倒れるのはこう言う時なのか・・一瞬こんな思いが
過るのである。相棒に宜しく頼んだのは、言うまでもない。(続)
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