旧東海道は、鈴鹿川の土手に出てきた。
ここは右側を流れる国道1号線が、国道25号線と交差する地点で、すぐ
近くに東名阪自動車道の亀山ICが造られている。
旧道はその巨大な構造物の下を潜って進む。
交通の要衝らしく、トラックステーションが立地し、周りには大きな
ビジネスホテルが点在し幾つも建っているのが見える。
左には鈴鹿川の河川敷が広がり、中央をゆったりとした流れが、キラキ
ラト燦めきながら下っている。両側の視界も気持ちよく開け、遙か先に
見えていた鈴鹿山脈も、川の向こうに有り、かなり近くに迫っている。
ここは「大岡寺(たいこうじ)縄手 土手の間十八丁 左脇関川流。
右山陰に大岡寺有」と言われる地で、関川はこの鈴鹿川の別名だ。
縄手とは畷とも書き、真っ直ぐな長い道の事で、ここは昔から知られ
た東海道・鈴鹿川の土手道だ。
当時は右に「六門山四王院太岡寺」が見えたと云うが、いまは国道高架
の防音壁に隠され、向こう側を臨むことが出来ない。
国道を行き交う車の喧噪は、その壁に遮られ微かに聞こえるのみだ。
この土手道には家屋の連なりも無く、人の姿を見ることもまれで、時折
通り過ぎる車を見送るだけだ。
約2キロに渡って続く土手道は眺望も良く、静かで、安全で、気持ちの
良い快適な散歩道と言った趣だ。
ただ残念なのはアスファルト道で、木陰などの日陰が無い事だ。
この時期としては、思いのほか気温が上がりすっかり汗ばんでしまった。
それでもほてった身体に時折感じる、この川面を渡る涼やかな風は、何と
も心地良く頬をなぜてくれ、贅沢な贈り物であった。(続)
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