簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

まだかな橋と遊郭 (JR乗り潰し・本四備讃線)

2022-05-06 | Weblog

 下津井港の近くに、「まだかな橋」跡の石碑が建っている。
嘗てここには、湊に渡る橋が架けられていた。
瀬戸大橋の工事に伴って湾岸道路の建設の為、海は埋め立てられ陸続
きとなり、橋は無くなり道路に変貌した。

 目の前の道路は、この橋跡の前でほぼ直角に左折、海に突き出た祇
園神社の小山を回り込むように迂回している。





 「昔はこの道路のところは海で、家を出ると目の前が浜だった。
本当はこの道、真っ直ぐトンネルで西に抜く計画だったが、祇園社の下
は掘れなかった」

 「むかし下津井回船問屋には、昔の橋の写真が残されている。
子供の頃には遊郭が五軒程有った。昭和の中頃まで一軒だけ残っていた」
写真を撮っていると、この橋の前に住むお年寄りが、話しかけてきた。





 下津井には昔から「下津井節」という良く知られた民謡があり、北前
船が持ち込んだと言われている。

 「下津井港はヨー~♪」と歌い出し、最後に「トコハイ トノエ ナノ
エ ソレソレ」と言う囃子言葉で締めくくる。
それは、馴染客(トノエ)と遊女(ナノエ)が床を這う(トコハイ)と言
う意味らしく、男女の秘め事を「ソレソレ」と囃し立てる艶っぽいものだ。



 

 ニシン粕や蝦夷地の特産品を満載した北前船が湊に入港すると、下津
井の遊郭から遊女達が客引きのためこの「まだかな橋」に集まってきた。
懐かしい、馴染みの上陸を、今か今かと待ち焦がれ、「まだ上がらんな」
と誘いをかける。

 瀬戸内の小さな湊町で繰り広げられた、出会いや別れの艶話、多くの遊
女の悲哀話しは、今歌手・中村美律子の「下津井・お滝・まだかな橋」で
歌い継がれている。(続)



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橋のライトアップ (JR乗り潰し・本四備讃線)

2022-05-04 | Weblog

 国内には自然公園法に基づいて、国が指定している国立公園が32カ所
あると言う。その内の一つ、瀬戸内海国立公園は、昭和9年に誕生した。
九州の雲仙、霧島と共に、日本で最初の国立公園となった。



 その範囲は瀬戸内海に面した、1府10県にまたがり、広さは90万ha
を超える国内では最も広い国立公園である。
東の紀淡海峡から西の関門海峡までの広い海域と、そこに点在する島々、
それらを遠望できる陸地の景勝地などから構成されている。



 鷲羽山もそんな景勝地の一つである。
海上から遠望すると鷲が翼を広げたように見えることからこう呼ばれる
ようになった。
山頂付近にはレストハウスや展望台、ビジターハウス等が有る。
ここからは眼下に、瀬戸内海に浮かぶ塩飽諸島の島々、その間を縫うよ
うに進む大小の船舶が手に取るように見える。



 幾つも連なる吊り橋の橋脚や、斜張橋など美しい姿を見せる瀬戸大橋
の全景も素晴らしい。橋を借景として、小さな漁船が犇めく小さな港も
絵になる構図を見せてくれる。その先に広がる、坂出工業地帯の景観や、
お握りを置いたような讃岐の山々までが見通せ、それはまるで絵葉書を
見るように美しい。 



 特に沈みかけた夕陽を受け、海面が銀色に光り輝き、次第にオレンジ
が雑じるグラデーションに変る様は見事だ。
その時大橋は、影絵を見るようなシルエットとして浮かび上がる。
陽が沈み、夜の帳が降り始め、辺りが灰色のベールに支配されようとす
る中、橋にライトが灯り、暗闇に鮮やかに浮かび上がる・・・。



 惜しいかな、そんな光景は年に何度も見られない。
関係自治体等は、橋のライトアップの通年点灯を要望しているらしいが、
環境省との協議や、漁業権等の絡みもあり、未だ実現に至っていない。

 資源としても超一級だけに、橋が通年ライトアップされれば、観光地
としての橋がブランド化され、一層盛り上がる筈だ。
残念ながら様々な制約が絡み、混とんとしているのが現状のようだ。(続)





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瀬戸大橋と言う橋は無い(JR乗り潰し・本四備讃線)

2022-05-02 | Weblog


 本四備讃線は児島を出るとやがて右から瀬戸中央自動車道が寄り添い、
その先で上下に重なるようにしてそのまま鷲羽山トンネルに突入する。
このトンネルは、上段が高速道路用、下段が鉄道用でそれぞれが上り下
り2本有るので、口を正面から見ると、丁度メガネを上下に並べたよう
に四つ目状に見える珍しい形をしている。



 トンネル内の轟音が途切れ車窓に陽光が戻ればそこはもう瀬戸大橋だ。
と言ってもここに瀬戸大橋と言う名の橋は無い。
瀬戸内海に浮かぶ、大小5つの島を総延長9.4Kmの6つの橋で結んでいて、
その総称を瀬戸大橋と呼び、各橋にはそれぞれ名前が付けられている。



 最初に渡るのが吊り橋の「下津井瀬戸大橋」で、暫く進んで県境を超
え香川県に入る。次が「櫃石島高架橋」で、美しい姿が特徴的な斜張橋
の「櫃石島橋」と「岩黒島橋」が「岩黒島高架橋」を挟んで続く。
「トラスト橋」と「高架橋」のかかる与島には、高速道路のサービスエ
リアが有り、螺旋状の道路が島に向けて降りている。



 更に吊り橋の「北備讃瀬戸大橋」を超えると、最後がビックスケール
の「南備讃瀬戸大橋」だ。二本の主塔に支えられている吊り橋で、長さ
は1,723m、16両編成の新幹線なら、四編成を連ねたよりも長い。

 その高さは20階建てのビルに相当する。
南北の主塔は1,100m隔てて建てられているが、その頂上の間隔は、根元
のそれよりも32mm長くなっていると言う。
これは地球の丸みを考慮してのことだそうだ。



 嘗てはフェリーで1時間程かかった海峡部を、本四備讃線の列車は僅か
数分で轟音と共に駆け抜ける。
橋の完成、新線の開通で岡山と高松の間も列車で約1時間となり、完全に
通勤・通学圏に入り、巨大な経済圏も完成した。
橋の存在は、物流のみならず人流をも変えることとなる。(続)





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