大沢在昌の新宿鮫シリーズの第7段で2000年の作品。
鮫島宛に遺書を残して自殺した同期入庁の宮本の
七回忌の法事に出かけた鮫島が何者かに襲われ、
監禁されているシーンから始まる。
気が付いた鮫島はそこが獣用の檻であり、
どうして自分がそこにいるのか思い出そうとする。
誰が何のために? 全く事件とは無関係であり、
宮本の故郷に法事に出席するだけの為に出かけた自分が、
なぜ襲われたのか?
元警察官の宮本の父親と宮本の元妻、そして幼馴染。
麻薬を追って福岡からやってきた公安の刑事が、
在日である宮本の幼馴染を調べていた事から、
鮫島と接触し、それによって無関係の鮫島が、
公安と同じ目的でやって来たと思われてしまう。
宮本の人となり、そして鮫島との関係、
宮本との縁から巡り会ってしまった在日の幼馴染、
在日は日本に住んでいても、たとえ帰化したとしても、
国家への愛着や忠誠は日本人には判らない物がある。
お金に執着する者、愛国心、国籍や信条に捕らわれず、
人間同士の結びつきを大事にする人間。
それぞれの欲望と人間関係で動き、命を奪い合う。
他のシリーズと異なっているのは、新宿が舞台でないと言う事、
非番の日に巻き込まれた事、2・3日の間の事件であると言う事、
登場人物が宮本の故郷での限られた人物であると言う事、
晶がほとんど登場しない事。
それでいて濃い人間関係と深い政治的思想が根底にあり、
私欲も混じり、たくさんの関係者が死んでしまう。
なんか悲しいなぁ・・・。