大沢在昌の新宿鮫シリーズ第10弾。
もう後がない(笑)。長編はあと1冊で、
短編集が1冊である・・・・。
この作品の出だし・・・あれっ?今までと違うと思った。
女性の語り・・・・ある男の帰りを待っている。
その男は・・・20年以上に渡る懲役から出所してくる。
10年ひと昔だから、ふた昔以上となると、
現代社会にかなり戸惑うだろう。その男は・・・・
お礼参り(復讐)の為に拳銃を入手しようとする。
鮫島は偶然見かけた薬物の売人から、その男の情報を得る。
男は誰なのか? 殺そうとしている相手は自分を逮捕した警官らしい。
情報をたどって行く鮫島は、公安を辞めた同期の香田が、
絡んでいる事を知る。そして標的が自分の上司の桃井課長だと知る。
一方、メジャーデビューした鮫島の恋人・晶のバンドメンバーが、
薬物で逮捕されてしまう。デビューしてからお互いの立場を考え、
会う機会も減っていたのだが、いよいよ・・・・
正体不明の危険な男は新宿では伝説的な男で、
帰りを待っていたのは一途な思いを寄せるオカマであった。
オカマは男の残された妻子の為に手紙を送り続け、
出所するまで連絡を切らさないようにしていた。
男の妻は中国人で逮捕された時に桃井課長が中国に逃がしていたが、
男は桃井と妻との間を疑い、桃井の命を奪う事を服役中の糧としていた。
この作品で鮫島は自分の味方二人を失うが、
警察官である使命を果たすために失意から立ち上がる。
男はタフでなければ生きて行けない。
優しくなければ生きていく資格がない。
レイモンド・チャンドラーの小説に登場する、
私立探偵フィリップ・マーロウの名台詞である。