大沢在昌のハードボイルド小説である。
私立探偵の冴木涼介と息子で都立高校2年生の隆(りゅう)が主人公。
1986年発行で大沢氏が28歳の時の作品であり、
軽いタッチで読みやすい作品。
まず感じたのは・・・隆は大沢自身ではないかと言う事。
17歳ながら相当の遊び人・・・不良と書いてあるが1980年代当時の、
不良であるツッパリやヤンキー、暴走族のような硬派ではなく、
広尾に住んでいるナンパ師である。
まぁ都会の不良はツルまないナンパ師だったのかも。
チーマーもいたけどね。
おそらくは大沢氏自身の高校生時代がモデルであり、
隆をスパイダーマンみたいなスーパーヒーロー化したのである。
隆は都立高校2年生で広尾のアパートに父親と二人で住んでいる。
冴木探偵事務所を経営する涼介は限りなくぐうたらである。
母親はいない、隆は物心ついた時から涼介と二人暮らしだ。
住まいの1階には喫茶店「麻呂宇」があり
オーナーの圭子ママは美人で色気があり涼介に気がある。
雇われている星野さんはロシア人の血を引くダンディである。
涼介は毎日ほぼ麻雀屋かパチンコ店にいる。
あるいは隆によれば自宅に女性を連れ込んでいる(らしい)。
オヤジがオヤジなら息子も息子で、酒と煙草は存分にたしなみ、
オヤジ同様に女好きである。17歳でね。
隆には元暴走族で気合の入った女子大生でセクシーな真里さんと言う
家庭教師がいるが、涼介も狙っているという(笑)。
とにかく・・・漫画チックなキャスティングである。
新宿鮫などまだ構想にない頃の作品だけに、
軽やかにすすっと読めるのであった。
涼介は隆をアルバイトとして使い小遣いを渡している。
タイトルのアルバイト・アイ(探偵)と言うのは、そういう意味だ。
短編集を読んで行くうちに涼介の過去(歴史)や、
隆との関係が見えて来る。そして面白くなっていくのだった。