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浅野秀弥の未来創案
【経済の本意を実践】
2015年11月16日大阪日々新聞
本業通じ社会貢献の時代へ
最近ではCSR(企業の社会的責任)の名の下に、わが国の企業の多くは本業とは関係のない社会貢献を果たすことが常識になった。たとえば、植林や清掃活動に代表される慈善事業やNPOに対する寄付活動などである。
あらためて「経済」という言葉をひもといてみると、「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」という意味であった。すなわち、経済性と社会性は切り離しては成り立たないわけだ。
しかし貨幣経済が世の中に浸透していくに応じて、モノの価値尺度であるカネが世の中で最高の価値であるかのような錯覚が蔓延(まんえん)していった。これに合わせ経済という言葉の半身がそっくり失われていったのである。このような時流の中からCSRという考えが、まるで経済という言葉の本当の意味を取り戻そうとするかのように生まれてきた。
CSRという言葉が登場するより前から、本業を通じて社会貢献に取り組む集団があった。最近では社会起業家と呼ばれる者たちを指す。私が理事長を務める一般社団法人KSIA(関西学生発イノベーション創出協議会)は、次世代の社会起業家を輩出し、“社会問題をゼロにする”ことをビジョンに掲げ、5年前に関西の大手企業経営者や学生起業家と共に設立した。
今月3日には、先週本欄で紹介した学生社会起業家のビジネスプランコンテスト「SOCIAL MAKERS CAMP 2015」を大阪・梅田のハービスホールで開催、約600人の来場者が集まった。本年で2回目という誕生して間もないプロジェクトではあるが、協力企業や団体は延べ100社以上と、来場者数と起業家への支援体制は関西最大規模と言っても過言ではないと自負している。これもひとえに、民間企業・行政・学校・一般市民の社会的事業や社会起業へのニーズの表れであろう。
今後も学生を中心とした組織体制で、行政や民間企業との連携を図りながら、本業を通じた社会貢献が当たり前になる世の中を創っていけたらと考えている。そしてその先へ、すなわち社会問題がゼロになるように歩みを進めていきたい。
あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済同友会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。