立憲民主党福岡3区(福岡市早良区・西区・城南区の一部、糸島市)
山内 康一
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ホーム山内康一ブログ 『 蟷螂の斧 』政治の動きと分析
将来予測についての考察
2018年 11月02日
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政治の世界で生きてきてはや13年超となり、いろんな政局予測を読んだり聞いたりしてきました。慣れてくるとヤフーの記事でタイトルと書き出しの数行を読んだだけで「これは高橋洋一氏だろう」とか「たぶん長谷川幸洋氏だろう」とか著者名を予測できるようになります。特に安倍総理寄りの識者ほど、発想が直線的でシンプルなので予測しやすいです。
一般に政局予測は当たりはずれが激しいです。予測が上手な人でも勝率は7~8割という程度だと思います。合理的に予測したとしても、当事者たちが不合理な行動をとることも多いため、合理的な予測が常に当たるとは限りません。予測がはずれて「こんな非常識なことやるとは思わなかった」という感想しか出てこない時も最近はよくあります。そもそも国際情勢や自然災害、マスコミ報道など、政局に影響を与える変数が多く、予測は簡単ではありません。それでも予測上手な評論家やマスコミ関係者は7~8割の高打率で予測します。たとえば、エマニュエル・トッド氏の将来予測力はすごいと思います。
また、政界の有力者は、「予測した通りになる」というより、「こういう方向に持っていこう」という強い意思をもって行動した結果として「予測した通り」の結果を「創り出す」ケースもあります。そういうのは「予測力」ではなく「実現力」なので、そういうケースは今回の考察では対象としません。
逆に予測がコンスタントに外れる評論家もいます。そういう評論家の将来予測も参考にできます。つまり「〇〇さんの将来予測は7~8割の確率ではずすから、その逆の可能性が高い」と予測することができます。たとえば、「Aさんが来年夏は衆参同日選挙になる」と予測しているから、たぶん衆参同日選はないだろう、と判断する材料になります。
だれが政局予測が上手かを検証することは不可能ではありません。よく週刊誌などで「衆議院選挙 議席予測」みたいな記事が出ますが、それを選挙後に見なおせば、その記事を書いた人物の「予測力」を測定できます。マニアックですが、けっこう重要な作業です。
優秀なベテラン記者は定点観測する政治家を決め、定期的に見通しを尋ねます。各国の在日大使館政治担当外交官も日本政治の見通しを定点観測するために政治家やマスコミ関係者を定期的に訪問し、見通しを尋ねます。政治家の側も定点観測するマスコミ関係者がいて、定期的にお互いの見通しを話し、意見交換します。そういう地道で息の長い作業を通じて、少しずつ将来予測の精度が上がっていくような気がします。
私もそれなりに努力していますが、将来予測をよくはずします。昨年の「希望の党」騒動はまったく予想外でした。自分が公認を外され、新しくできた立憲民主党から立候補するなんてことも想定外でした。安倍総理があの時期に解散総選挙を打つというのも予測していませんでした。
将来予測の能力を高めようといろんな本を読んで試してきました。今のところ一番信頼できる「将来予測法」だと私が思うのは、ドイツ人のダン・ガードナー氏の以下のやり方です。
予測が正確だった人たちは、理論上の核となるテンプレートを持たずに、いろいろなところから情報やアイデアを収拾してまとめあげようとする。常に自己批判をして、自分が信じているものが本当に正しいか問いかけている。もし間違っていたことが示されたら、その間違いを過小評価したり、見て見ないふりをしたりはしない。ただ間違っていたことを受け入れ、自分の考えを修正しようとする。
こういう専門家は、世界を複雑で不確実なものとして見ることに違和感を覚えないので、そもそも将来を予測する能力というものに、疑念を抱く傾向がある。
結果としてパラドックスが生じる。他の人よりも正確に将来を予測した専門家は、自分が正しいことに自信が持てない人たちなのである。(中略)複雑で慎重な考え方のほうが、シンプルで自信たっぷりの考え方に勝っている。
*ダン・ガードナー著 2012年「専門家の予測はサルにも劣る」飛鳥新社
私が考える「将来予測の精度を上げるポイント」は以下の通りです。
1)いろんな人の意見を聴き、いろんなところから情報を集める。
2)信頼できる人や組織の将来予測を定点観測する。
3)常に自己批判・自省し、自分自身の考えを疑い、慎重に検証する。
4)シンプルな答えを疑い、複雑さから逃げない。
5)自信満々に言い切る人よりも、思慮深く慎重な物言いの人の意見を信頼する。
6)ネットの情報収集はきわめて危険なので、ネットに依存し過ぎない。ネットではアルゴリズムで「自分の知りたい情報」や「自分の耳に心地よいニュース」ばかりが表示されます。そういう情報に囲まれていると、ますます偏った見方になり、将来予測に必要な多様な意見や多様な情報源から隔絶されます。ネット以外の新聞や雑誌、新書、学術書等を最初から最後まで読み通すことも必要です。
以上のポイントに留意しても、これからも私は将来予測をはずし続けるでしょう。自信はありません。
最後に経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイス教授の言葉をご紹介して終わりにします。
未来を予測する人は2種類に分けられる。何もわかっていない人。そして、何もわかっていないことをわかっていない人。
何もわかっていないことをわかっている人でありたいと思います。
山内 康一
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将来予測についての考察
2018年 11月02日
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政治の世界で生きてきてはや13年超となり、いろんな政局予測を読んだり聞いたりしてきました。慣れてくるとヤフーの記事でタイトルと書き出しの数行を読んだだけで「これは高橋洋一氏だろう」とか「たぶん長谷川幸洋氏だろう」とか著者名を予測できるようになります。特に安倍総理寄りの識者ほど、発想が直線的でシンプルなので予測しやすいです。
一般に政局予測は当たりはずれが激しいです。予測が上手な人でも勝率は7~8割という程度だと思います。合理的に予測したとしても、当事者たちが不合理な行動をとることも多いため、合理的な予測が常に当たるとは限りません。予測がはずれて「こんな非常識なことやるとは思わなかった」という感想しか出てこない時も最近はよくあります。そもそも国際情勢や自然災害、マスコミ報道など、政局に影響を与える変数が多く、予測は簡単ではありません。それでも予測上手な評論家やマスコミ関係者は7~8割の高打率で予測します。たとえば、エマニュエル・トッド氏の将来予測力はすごいと思います。
また、政界の有力者は、「予測した通りになる」というより、「こういう方向に持っていこう」という強い意思をもって行動した結果として「予測した通り」の結果を「創り出す」ケースもあります。そういうのは「予測力」ではなく「実現力」なので、そういうケースは今回の考察では対象としません。
逆に予測がコンスタントに外れる評論家もいます。そういう評論家の将来予測も参考にできます。つまり「〇〇さんの将来予測は7~8割の確率ではずすから、その逆の可能性が高い」と予測することができます。たとえば、「Aさんが来年夏は衆参同日選挙になる」と予測しているから、たぶん衆参同日選はないだろう、と判断する材料になります。
だれが政局予測が上手かを検証することは不可能ではありません。よく週刊誌などで「衆議院選挙 議席予測」みたいな記事が出ますが、それを選挙後に見なおせば、その記事を書いた人物の「予測力」を測定できます。マニアックですが、けっこう重要な作業です。
優秀なベテラン記者は定点観測する政治家を決め、定期的に見通しを尋ねます。各国の在日大使館政治担当外交官も日本政治の見通しを定点観測するために政治家やマスコミ関係者を定期的に訪問し、見通しを尋ねます。政治家の側も定点観測するマスコミ関係者がいて、定期的にお互いの見通しを話し、意見交換します。そういう地道で息の長い作業を通じて、少しずつ将来予測の精度が上がっていくような気がします。
私もそれなりに努力していますが、将来予測をよくはずします。昨年の「希望の党」騒動はまったく予想外でした。自分が公認を外され、新しくできた立憲民主党から立候補するなんてことも想定外でした。安倍総理があの時期に解散総選挙を打つというのも予測していませんでした。
将来予測の能力を高めようといろんな本を読んで試してきました。今のところ一番信頼できる「将来予測法」だと私が思うのは、ドイツ人のダン・ガードナー氏の以下のやり方です。
予測が正確だった人たちは、理論上の核となるテンプレートを持たずに、いろいろなところから情報やアイデアを収拾してまとめあげようとする。常に自己批判をして、自分が信じているものが本当に正しいか問いかけている。もし間違っていたことが示されたら、その間違いを過小評価したり、見て見ないふりをしたりはしない。ただ間違っていたことを受け入れ、自分の考えを修正しようとする。
こういう専門家は、世界を複雑で不確実なものとして見ることに違和感を覚えないので、そもそも将来を予測する能力というものに、疑念を抱く傾向がある。
結果としてパラドックスが生じる。他の人よりも正確に将来を予測した専門家は、自分が正しいことに自信が持てない人たちなのである。(中略)複雑で慎重な考え方のほうが、シンプルで自信たっぷりの考え方に勝っている。
*ダン・ガードナー著 2012年「専門家の予測はサルにも劣る」飛鳥新社
私が考える「将来予測の精度を上げるポイント」は以下の通りです。
1)いろんな人の意見を聴き、いろんなところから情報を集める。
2)信頼できる人や組織の将来予測を定点観測する。
3)常に自己批判・自省し、自分自身の考えを疑い、慎重に検証する。
4)シンプルな答えを疑い、複雑さから逃げない。
5)自信満々に言い切る人よりも、思慮深く慎重な物言いの人の意見を信頼する。
6)ネットの情報収集はきわめて危険なので、ネットに依存し過ぎない。ネットではアルゴリズムで「自分の知りたい情報」や「自分の耳に心地よいニュース」ばかりが表示されます。そういう情報に囲まれていると、ますます偏った見方になり、将来予測に必要な多様な意見や多様な情報源から隔絶されます。ネット以外の新聞や雑誌、新書、学術書等を最初から最後まで読み通すことも必要です。
以上のポイントに留意しても、これからも私は将来予測をはずし続けるでしょう。自信はありません。
最後に経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイス教授の言葉をご紹介して終わりにします。
未来を予測する人は2種類に分けられる。何もわかっていない人。そして、何もわかっていないことをわかっていない人。
何もわかっていないことをわかっている人でありたいと思います。