教育カウンセラーの独り言

今起こっている日本の教育の諸問題と受験競争の低年齢化している実態を見据えます。

 岳陽楼の記(がくようろうのき)   作:范仲淹はんちゅうえん

2024年02月11日 15時05分42秒 | 受験・学校・学問

 岳陽楼の記(がくようろうのき)   作:范仲淹はんちゅうえん


【還暦ジジイの説明】

 チャイナ、北宋ほくそうの范仲淹が書いた360字の散文。慶暦けいれき六年(1046年)の作。

 范仲淹と同年の進士・滕宗諒とうそうりょう、字は子京しけいが湖南省の岳州に流され、岳陽楼を改修したとき、

記念のため、同じく左遷させんされていた范仲淹に依頼したもの。

 後半の「嗟夫ああ」から始まる部分は、優れた人物は環境や個人、また、そのときどきの立場によって感情を左右されてはならず、

 「天下の憂いに先んじて憂え、天下の楽しみに後れて楽しむ」ものである、と謳っている。

 いわゆる「先憂後楽せんゆうこうらく」と約され、政治家としての守るべき態度として有名である。

 東京都文京区の「後楽園」の名も、この名文句から水戸光圀みとみつくに公が命名したのだそうだ。



【原文1】


  岳陽樓記  范仲淹


 慶曆四年春、滕子京謫守巴陵郡。

 越明年、政通人和、百廢倶興。

 乃重修岳陽樓、增其舊制、刻唐賢今人詩賦於其上、屬予作文以記之。


【書き下し文1】


  岳陽楼の記(がくようろうのき) 作:范仲淹(はんちゅうえん)


 慶歷けいれき四年春、滕子京とうしけいたくせられて、巴陵郡はりょうぐんしゅたり。

 越えて明年みょうねんまつりごとつう人和ひとわし、百廢ひゃくはいともおこる。

 すなわち重ねて岳陽楼を修め、其の旧制きゅうせいし、

 唐賢今人とうけんきんじん詩賦しふをその上に刻まんとす。

 に文を作りて、もっこれを記す。


【現代口語訳1】


 慶暦四年春、わが友滕子京は罪を得て巴陵郡の長官に左遷された。

 しかし、一年もしないうちに、大いに治績があがって治安も回復し、地域の面目を一新した。

 この機会に岳陽楼を修復して旧来の造りに戻し、壁に唐代の賢者や現代人の詩文を刻み込み、

 ついてはその趣旨を記した文章を書いて欲しいと、私に頼んできた。

 そこでこの一文を認めたのである。


【原文2】


 予觀夫巴陵勝狀、在洞庭一湖。

 銜遠山、吞長江、浩浩湯湯、橫無際涯。

 朝暉夕陰、氣象萬千。

 此則岳陽樓之大觀也。前人之述備矣。

 然則北通巫峽、南極瀟湘、遷客騷人、多會於此。

 覽物之情、得無異乎。


【書き下し文2】


 、かの巴陵はりょう勝状しょうじょうを観るに、洞庭の一湖いっこに在り。

 遠山をふくみ、長江をみ、浩浩湯湯こうこうしょうしょうとして、横に際涯さいがいなし。

 朝暉夕陰ちょうきせきいん気象きしょう万千ばんせんたり。

 これすなわち岳陽楼の大観たいかんなり。

 前人ぜんじんじゅつそなわれり。

 しかればすなわち北は巫峽ふきょうに通じ、南は瀟湘しょうしょうきわむ。

 遷客騒人せんかくそうじん、多く此にあつまる。

 物をるのじょうことなる無きをんや。


【現代口語訳2】


 巴陵の素晴らしい景観と言えば、洞庭湖に尽きている。

 遠い山々をくわえ込み、長江の流れを呑み込んで、湖水は広々と溢れんばかり、横に果てしなく広がっている。

 朝は朝日に照り映え、夕方には雲がかかり、その様子は千変万化せんぺんばんかして尽きることがない。

 これが岳陽楼からの雄大な眺めであって、これについては、先人たちが言い尽くしている。

 北は巫峽ふきょうに通じ、南は瀟水しょうすい湘江しょうこうにつながっているので、地方に流された人々や志を得ない文人など、

 この地を訪れる者が絶えなかった。

 しかし眺めた人々の気持ちは、それぞれの境遇に応じて様々であったに違いない。


【原文3】


 若夫霪雨霏霏、連月不開、陰風怒號、濁浪排空。

 日星隱耀、山岳潛形、商旅不行、檣傾檝摧。

 薄暮冥冥、虎嘯猿啼、登斯樓也、則有去國懷鄉、憂讒畏譏、滿目蕭然、感極而悲者矣。


【書き下し文3】


 しそれ霪雨霏霏いんうひひとして、連月れんげつひらかず、陰風怒号いんぷうどごうし、濁浪だくろうそらはいした。

 日星にっせいひかりをかくし、山岳さんがく形をひそめ、商旅しょうりょかず、ほぼしらかたむかじくだけた。

 薄暮冥冥はくぼめいめいとして、とらうそぶき猿くとき、

 この楼にのぼれば、すなわち国を去ってきょうおもい、ざんうれそしりをおそれ、

 満目蕭然まんもくしょうぜんとして、かんきわまって悲しむ者あらん。


【現代口語訳3】


 長雨がしとしとと降り続いて、一月余りも止まず、冷たい風が吹き荒れて、にごった波が空に逆巻いている。

 太陽も星も雲にとざされ、山々も姿を隠し、旅人の姿も見えない。

 舟の帆柱も傾き、かじも壊れている。

 夕暮れが迫って薄暗くなり、虎がえ、猿が啼く声が聞こえてくる。

 そんなときこの楼に登れば、遠く離れた故郷を思い、讒言ざんげんや非難を恐れて、

 目にするもの全てがもの悲しく感じられ、感極まって悲しみの情に突き動かされる者もいたに違いない。


【原文4】


 至若春和景明、波瀾不驚。

 上下天光、一碧萬頃、沙鷗翔集、錦鱗游泳、岸芷汀蘭、鬱鬱青青。

 而或長煙一空、皓月千里、浮光耀金、靜影沉璧、漁歌互答、此樂何極。

 登斯樓也、則有心曠神怡、寵辱皆忘、把酒臨風、其喜洋洋者矣。


【書き下し文4】


 若きに至りては、はるけいあきらかに、波瀾はらん驚かず。

 上下天光しょうかてんこう一碧萬頃いっぺきばんけい沙鷗しょうおう翔集しょうしゅうし、錦鱗きんりん游泳ゆうえいし、岸芷汀蘭がんしていらん郁郁青青いくいくせいせいとす。

 あるい長煙一空ちょうえんいっくう皓月千裡こうげつせんり浮光ふこうきんおどらし、

 静影せいえいへきを沈め、漁歌ぎょか互ひにこたうるがごときに至りて、この楽しみ何ぞきわまらん。

 このろうに登れば、すなわち心むなくしてしんよろこび、寵辱ちょうじょくみな忘れ、

 酒をって風にのぞみ、その喜び洋洋よようたる者らん。


【現代口語訳4】


 春ともなれば、気候も穏やかに風景も明るくなり、水面には波も立たない。

 空も水も光にあふれ、見渡す限り青一色である。

 砂浜にはかもめが群れ、湖水には美しい魚が泳ぎまわり、岸辺の香草こうそう蘭草らんそうは青々と茂って、

 ふくよかな香りを放っている。

 日暮れには、空一面に霞がたなびき、白い月が四方を照らし出し、波に反射してキラキラと揺れる。

 月が璧のような影を水面に落とし、すなどりの舟からは掛け合いの歌が流れてくる。

 ああ、なんと楽しいことではないか。

 そんなときこの楼に登れば、心はのびのびして喜びにあふれ、名誉も恥辱もすべて忘れ去り。

 杯を手にしてそよ風を受けながら、大きな喜びにひたる者もいたにちがいない。


【原文5】


 嗟夫。予嘗求古仁人之心、或異二者之為、何哉。

 不以物喜、不以己悲。

 居廟堂之高、則憂其民、處江湖之遠、則憂其君。

 是進亦憂、退亦憂。然則何時而樂耶。

 其必曰「先天下之憂而憂、後天下之樂而樂歟」。

 噫、微斯人、吾誰與歸。

                 時六年九月十五日


【書き下し文5】


 ああかついにしえ仁人じんじんの心を求むるに、あるい二者にしゃしわざに異なるは何ぞや。

 物をもって喜ばず、おのれもって悲しまず。

 廟堂びょうどうの高きに居りては、すなわちそのたみうれひ、

 江湖こうこの遠きにりてはすなわちそのきみうれう。

 これ進むもまた憂ひ、退しりぞくも亦た憂うるなり。

 しからばすなわいずれの時にしてたのしまんや。

 それ必ず「天下の憂ひに先んじて憂ひ、天下の楽しみに後れて楽しむ」とはんか。

 ああ、このひとかりせば、われだれにかせんや。

    時に、〔慶暦〕六年九月十五日なり。


【現代口語訳5】


 ああ、私はかつて仁人の心について考えてみたが、岳陽楼に登って悲しんだ人、喜んだ人のどちらとも違っているように思う。

 どこが違っているのか、仁人は外界がいかいがどうあろうと喜ぶことはないし、自分がどうなろうと悲しむこともない。

 朝廷にあっては人民のことを心配し、にあっては君主のことを心配するのである。

 つまり、進んで仕えるときも心配し、退いて野にあるときも心配するのである。

 では、いつになったら楽しむときが持てるのか。

 その人は必ずや、「心配ごとは人民より先に心配し、楽しみごとは人民よりも後れて楽しむのだ」

 と、言うに違いない。

 ああ、こういう人物が居てくれなかったら、私は誰に従って行けばよいのか。



【語彙説明】

〇進士(しんし) ・・・ チャイナ、南宋から清の時代、科挙の登第者(合格者)を「進士」と呼んだ。




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 岳陽楼の記(がくようろうのき)   作:范仲淹はんちゅうえん

2024年02月11日 15時05分42秒 | 受験・学校・学問

 岳陽楼の記(がくようろうのき)   作:范仲淹はんちゅうえん


【還暦ジジイの説明】

 チャイナ、北宋ほくそうの范仲淹が書いた360字の散文。慶暦けいれき六年(1046年)の作。

 范仲淹と同年の進士・滕宗諒とうそうりょう、字は子京しけいが湖南省の岳州に流され、岳陽楼を改修したとき、

記念のため、同じく左遷させんされていた范仲淹に依頼したもの。

 後半の「嗟夫ああ」から始まる部分は、優れた人物は環境や個人、また、そのときどきの立場によって感情を左右されてはならず、

 「天下の憂いに先んじて憂え、天下の楽しみに後れて楽しむ」ものである、と謳っている。

 いわゆる「先憂後楽せんゆうこうらく」と約され、政治家としての守るべき態度として有名である。

 東京都文京区の「後楽園」の名も、この名文句から水戸光圀みとみつくに公が命名したのだそうだ。



【原文1】


  岳陽樓記  范仲淹


 慶曆四年春、滕子京謫守巴陵郡。

 越明年、政通人和、百廢倶興。

 乃重修岳陽樓、增其舊制、刻唐賢今人詩賦於其上、屬予作文以記之。


【書き下し文1】


  岳陽楼の記(がくようろうのき) 作:范仲淹(はんちゅうえん)


 慶歷けいれき四年春、滕子京とうしけいたくせられて、巴陵郡はりょうぐんしゅたり。

 越えて明年みょうねんまつりごとつう人和ひとわし、百廢ひゃくはいともおこる。

 すなわち重ねて岳陽楼を修め、其の旧制きゅうせいし、

 唐賢今人とうけんきんじん詩賦しふをその上に刻まんとす。

 に文を作りて、もっこれを記す。


【現代口語訳1】


 慶暦四年春、わが友滕子京は罪を得て巴陵郡の長官に左遷された。

 しかし、一年もしないうちに、大いに治績があがって治安も回復し、地域の面目を一新した。

 この機会に岳陽楼を修復して旧来の造りに戻し、壁に唐代の賢者や現代人の詩文を刻み込み、

 ついてはその趣旨を記した文章を書いて欲しいと、私に頼んできた。

 そこでこの一文を認めたのである。


【原文2】


 予觀夫巴陵勝狀、在洞庭一湖。

 銜遠山、吞長江、浩浩湯湯、橫無際涯。

 朝暉夕陰、氣象萬千。

 此則岳陽樓之大觀也。前人之述備矣。

 然則北通巫峽、南極瀟湘、遷客騷人、多會於此。

 覽物之情、得無異乎。


【書き下し文2】


 、かの巴陵はりょう勝状しょうじょうを観るに、洞庭の一湖いっこに在り。

 遠山をふくみ、長江をみ、浩浩湯湯こうこうしょうしょうとして、横に際涯さいがいなし。

 朝暉夕陰ちょうきせきいん気象きしょう万千ばんせんたり。

 これすなわち岳陽楼の大観たいかんなり。

 前人ぜんじんじゅつそなわれり。

 しかればすなわち北は巫峽ふきょうに通じ、南は瀟湘しょうしょうきわむ。

 遷客騒人せんかくそうじん、多く此にあつまる。

 物をるのじょうことなる無きをんや。


【現代口語訳2】


 巴陵の素晴らしい景観と言えば、洞庭湖に尽きている。

 遠い山々をくわえ込み、長江の流れを呑み込んで、湖水は広々と溢れんばかり、横に果てしなく広がっている。

 朝は朝日に照り映え、夕方には雲がかかり、その様子は千変万化せんぺんばんかして尽きることがない。

 これが岳陽楼からの雄大な眺めであって、これについては、先人たちが言い尽くしている。

 北は巫峽ふきょうに通じ、南は瀟水しょうすい湘江しょうこうにつながっているので、地方に流された人々や志を得ない文人など、

 この地を訪れる者が絶えなかった。

 しかし眺めた人々の気持ちは、それぞれの境遇に応じて様々であったに違いない。


【原文3】


 若夫霪雨霏霏、連月不開、陰風怒號、濁浪排空。

 日星隱耀、山岳潛形、商旅不行、檣傾檝摧。

 薄暮冥冥、虎嘯猿啼、登斯樓也、則有去國懷鄉、憂讒畏譏、滿目蕭然、感極而悲者矣。


【書き下し文3】


 しそれ霪雨霏霏いんうひひとして、連月れんげつひらかず、陰風怒号いんぷうどごうし、濁浪だくろうそらはいした。

 日星にっせいひかりをかくし、山岳さんがく形をひそめ、商旅しょうりょかず、ほぼしらかたむかじくだけた。

 薄暮冥冥はくぼめいめいとして、とらうそぶき猿くとき、

 この楼にのぼれば、すなわち国を去ってきょうおもい、ざんうれそしりをおそれ、

 満目蕭然まんもくしょうぜんとして、かんきわまって悲しむ者あらん。


【現代口語訳3】


 長雨がしとしとと降り続いて、一月余りも止まず、冷たい風が吹き荒れて、にごった波が空に逆巻いている。

 太陽も星も雲にとざされ、山々も姿を隠し、旅人の姿も見えない。

 舟の帆柱も傾き、かじも壊れている。

 夕暮れが迫って薄暗くなり、虎がえ、猿が啼く声が聞こえてくる。

 そんなときこの楼に登れば、遠く離れた故郷を思い、讒言ざんげんや非難を恐れて、

 目にするもの全てがもの悲しく感じられ、感極まって悲しみの情に突き動かされる者もいたに違いない。


【原文4】


 至若春和景明、波瀾不驚。

 上下天光、一碧萬頃、沙鷗翔集、錦鱗游泳、岸芷汀蘭、鬱鬱青青。

 而或長煙一空、皓月千里、浮光耀金、靜影沉璧、漁歌互答、此樂何極。

 登斯樓也、則有心曠神怡、寵辱皆忘、把酒臨風、其喜洋洋者矣。


【書き下し文4】


 若きに至りては、はるけいあきらかに、波瀾はらん驚かず。

 上下天光しょうかてんこう一碧萬頃いっぺきばんけい沙鷗しょうおう翔集しょうしゅうし、錦鱗きんりん游泳ゆうえいし、岸芷汀蘭がんしていらん郁郁青青いくいくせいせいとす。

 あるい長煙一空ちょうえんいっくう皓月千裡こうげつせんり浮光ふこうきんおどらし、

 静影せいえいへきを沈め、漁歌ぎょか互ひにこたうるがごときに至りて、この楽しみ何ぞきわまらん。

 このろうに登れば、すなわち心むなくしてしんよろこび、寵辱ちょうじょくみな忘れ、

 酒をって風にのぞみ、その喜び洋洋よようたる者らん。


【現代口語訳4】


 春ともなれば、気候も穏やかに風景も明るくなり、水面には波も立たない。

 空も水も光にあふれ、見渡す限り青一色である。

 砂浜にはかもめが群れ、湖水には美しい魚が泳ぎまわり、岸辺の香草こうそう蘭草らんそうは青々と茂って、

 ふくよかな香りを放っている。

 日暮れには、空一面に霞がたなびき、白い月が四方を照らし出し、波に反射してキラキラと揺れる。

 月が璧のような影を水面に落とし、すなどりの舟からは掛け合いの歌が流れてくる。

 ああ、なんと楽しいことではないか。

 そんなときこの楼に登れば、心はのびのびして喜びにあふれ、名誉も恥辱もすべて忘れ去り。

 杯を手にしてそよ風を受けながら、大きな喜びにひたる者もいたにちがいない。


【原文5】


 嗟夫。予嘗求古仁人之心、或異二者之為、何哉。

 不以物喜、不以己悲。

 居廟堂之高、則憂其民、處江湖之遠、則憂其君。

 是進亦憂、退亦憂。然則何時而樂耶。

 其必曰「先天下之憂而憂、後天下之樂而樂歟」。

 噫、微斯人、吾誰與歸。

                 時六年九月十五日


【書き下し文5】


 ああかついにしえ仁人じんじんの心を求むるに、あるい二者にしゃしわざに異なるは何ぞや。

 物をもって喜ばず、おのれもって悲しまず。

 廟堂びょうどうの高きに居りては、すなわちそのたみうれひ、

 江湖こうこの遠きにりてはすなわちそのきみうれう。

 これ進むもまた憂ひ、退しりぞくも亦た憂うるなり。

 しからばすなわいずれの時にしてたのしまんや。

 それ必ず「天下の憂ひに先んじて憂ひ、天下の楽しみに後れて楽しむ」とはんか。

 ああ、このひとかりせば、われだれにかせんや。

    時に、〔慶暦〕六年九月十五日なり。


【現代口語訳5】


 ああ、私はかつて仁人の心について考えてみたが、岳陽楼に登って悲しんだ人、喜んだ人のどちらとも違っているように思う。

 どこが違っているのか、仁人は外界がいかいがどうあろうと喜ぶことはないし、自分がどうなろうと悲しむこともない。

 朝廷にあっては人民のことを心配し、にあっては君主のことを心配するのである。

 つまり、進んで仕えるときも心配し、退いて野にあるときも心配するのである。

 では、いつになったら楽しむときが持てるのか。

 その人は必ずや、「心配ごとは人民より先に心配し、楽しみごとは人民よりも後れて楽しむのだ」

 と、言うに違いない。

 ああ、こういう人物が居てくれなかったら、私は誰に従って行けばよいのか。



【語彙説明】

〇進士(しんし) ・・・ チャイナ、南宋から清の時代、科挙の登第者(合格者)を「進士」と呼んだ。




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https://www.mbs.jp › news › 2024/02 【万博の課題】「めっちゃせかされる」「手が足りてない」会場建設に携わる作業員たちの本音 工期 ...

2024年02月11日 11時38分59秒 | ニュース
3 時間前 — 業界の慢性的な人手不足に加え、工期の遅れから残業せざるを得ない状況もあり「万博工事は請け負いたくない」と敬遠する実態もあるといいます。 ( ...
 
 
 
 
 
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2023/08/03 — 工期が短い中、1人の作業員が働く時間が限られ ... 「万博開催のためには、労働者の健康や生命が犠牲となってもやむを得ないと言わんばかり」と抗議した。

2024年02月11日 11時24分58秒 | ニュース
2023/08/03 — 工期が短い中、1人の作業員が働く時間が限られ ... 「万博開催のためには、労働者の健康や生命が犠牲となってもやむを得ないと言わんばかり」と抗議した。
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「将来薬害となる可能性も…」 新型コロナワクチンは薬害なのか? 大学での薬害の講義で新型コロナワクチンを取り上げ【大石が聞く】(CBCテレビ)

2024年02月11日 11時02分49秒 | デジタル・インターネット
1 日前 — 薬の副作用による健康被害、いわゆる“薬害”の授業。 薬物の専門家で医師でもある 粂 和彦 教授が題材に取り上げたのが、ほかならぬ新型コロナワクチン。
 
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ジム・ロジャーズ氏「アメリカが衰退するのは時間の問題、米ドル離れは加速する」

2024年02月11日 09時42分58秒 | ニュース

ジム・ロジャーズ氏「アメリカが衰退するのは時間の問題、米ドル離れは加速する」

現代ビジネス

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ジム・ロジャーズ氏「アメリカが衰退するのは時間の問題、米ドル離れは加速する」
Photo by Gettyimages

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ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並んで、「世界三大投資家」と称されるジム・ロジャーズ氏。著書『2030年 お金の世界地図』を上梓した彼は、「アメリカが覇権国家の座を譲る日は近い」と予測する。数多くのグローバル企業を生み、世界経済を牽引してきたアメリカが、なぜ没落してしまうのか……。その根拠を本人が解説する。
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【一覧を見る】運用資産1億円の投資家が保有する115銘柄を一挙公開…!

アメリカは史上最大の「債務大国」

ジム・ロジャーズ氏「アメリカが衰退するのは時間の問題、米ドル離れは加速する」
Photo by iStock

 今日の世界ではアメリカが覇権国家の座を維持してはいるが、いよいよその覇権も揺らぎつつあるように見える。

 現在のアメリカは、有史以来、最大の債務国である。

 アメリカの連邦政府が発行できる国債などの総額は法律で定められており、債務上限と呼ばれている。債務上限を超えて国債を発行するには、議会の承認が必要となる。

 2023年、この債務上限をめぐる交渉が難航し、債務不履行(デフォルト)の危機に発展しかねない状況にあった。

 結果的には、債務上限の適用を2025年1月まで停止する法案が可決。デフォルトの危機は回避されたが、連邦政府の公的債務残高は10月時点ですでに33兆2000億ドルを突破しており、債務は週を重ねるごとに確実に膨らんでいる。

 衰退を始めている国家は、衰退が進みつつあることを自覚しにくいものであり、それはアメリカも同様である。実際に、アメリカの国力はピークに達しており、現時点で衰退は始まっていると考えられる。

 前提として重要なのは、どんな国であれ、永遠にトップであり続けるのは不可能ということである。

 1815年、イギリスはワーテルローの戦いに勝利したことで覇権国家となった。蒸気機関の発明などの技術革新に伴う産業革命が起こり、海外では植民地化を推し進め、19世紀中頃には圧倒的な経済力と軍事力を持って世界に君臨することとなる。

 古代ローマ史上、最も平和で、国が発展した時代を指す「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」になぞらえ、「パクス・ブリタニカ(イギリスの平和)」という言葉が生まれたほどである。

 しかし、19世紀末から、イギリス経済は衰退化の道を歩み始め、第一次世界大戦の勃発により、パクス・ブリタニカは終焉を迎えている。

 かつて世界のトップだったイギリスがアメリカに取って代わられたように、アメリカがトップでなくなる日がくるのは時間の問題である。

 私は今、アメリカ企業に投資をしていない。AIブームに乗じてNVIDIAに投資するほどテクノロジーに詳しいわけではないし、ショート(空売り)以外でテクノロジー関連に投資することもほとんどない。

「米ドル離れ」が加速している世界

ジム・ロジャーズ氏「アメリカが衰退するのは時間の問題、米ドル離れは加速する」
Photo by iStock

 現在、世界の基軸通貨は米ドルであるが、いずれは違う通貨になることだろう。

 私はウクライナ戦争とロシアに対する経済制裁が、長期的には米ドルにマイナスの影響をもたらすと予測している。

 基軸通貨国であるはずのアメリカは、ウクライナ侵攻を受けてロシアを国際決済システムから離脱させ、米ドルを利用できないようにした。私は、基軸通貨であるために、常に中立的なスタンスを維持すべきだったと考えている。

 アメリカはロシアへの追加制裁として、ロシア中央銀行のアメリカにおける資産を事実上凍結したほか、ロシア企業などの150超の個人・団体を制裁対象に加え、アメリカ国内の資産を凍結し、アメリカ企業などとの取引を禁止した。

 これによりロシアのドル離れが加速するだけでなく、ロシアに続く国が出てくるかもしれない。

 実際に、ウクライナ侵攻においては西側諸国以外でアメリカに追随してロシアに制裁を科している国はそれほど多くはない。多くの国は中立的な立場を取っており、アメリカ一強だった時代が終わっていることを示唆している。

 アジアでは日本や韓国、シンガポールがアメリカを支持しているが、インドや中国はロシア寄りのスタンスを維持している。

 すぐに米ドル離れが起きなくても、ドルに対する懸念を持つ国は増えるのではないか。

 今の段階では多くの国が米ドルで債券を発行しているが、かつての基軸通貨がポンドからドルに移行したように、ドルから徐々に次の通貨へと移行するに違いない。

 世界に経済危機が訪れると、投資家はドルが安全通貨だと考え、ドルを買おうとしたがる。だが、前述したようにアメリカは過去最大の債務を抱えており、すでにドルは安全通貨ではなくなりつつある。

 これからの投資家には、ドルを売るタイミングをより慎重に見極める力が求められるだろう。

「米中貿易戦争」がもたらすもの

ジム・ロジャーズ氏「アメリカが衰退するのは時間の問題、米ドル離れは加速する」
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 トランプは「対中貿易赤字の解消」「貿易の不均衡の解消」を公約に掲げ、大統領に就任し、実際に中国製品への関税引き上げを実行した。中国も報復措置としてアメリカからの輸入品に関税をかけ、貿易戦争へと発展したのは周知の通りである。

 中国製品に課税しただけでなく、中国の通信機器大手ファーウェイに対して過酷な制裁を突き付けた。ここには単純に貿易赤字を解消したいというのとは別のアメリカの思惑がある。要するに、中国企業がハイテク分野で覇権を取ろうとすることへの危機感があるのだ。

 ファーウェイへの制裁路線はバイデン大統領にも引き継がれ、2022年11月にはファーウェイの通信機器についてアメリカ国内での販売を事実上禁止し、部品の輸出許可の停止も行っている。

 アメリカはファーウェイを攻撃することで、アップルやほかのアメリカ企業を守ろうとしている。テクノロジーに詳しい私の知人によれば、ファーウェイは非常に技術力を持った企業であるとのことだが、米中貿易戦争の中で完全な悪者となっている。

 しかし、市場を閉ざす行為は、本当に国の発展につながるのだろうか。私の考えでは、アメリカにとって米中貿易戦争はマイナスでしかない。

 世界ではこれまで自由貿易と保護貿易主義が繰り返されてきた歴史があるが、保護貿易主義が良い結果をもたらしたことはない。そもそも第二次世界大戦は保護貿易主義の帰結としてもたらされたものでもあったが、歴史を知らない現代の為政者たちは保護貿易主義に救いを見出し、貿易戦争を正当化している。

 それはわかりやすく批判の矛先を外国人に向けているだけであり、批判がエスカレートすれば本物の戦争へと発展しかねない。

 私は自由貿易と市場開放に賛成しているが、アメリカは状況が悪化すればするほど市場閉鎖に走ろうとするに違いない。その結果、負のスパイラルが起き、アメリカ経済は弱体化の一途をたどることになるだろう。

ジム・ロジャーズ(世界的投資家)

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