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農林水産省は価格高騰を抑えるため、備蓄米の放出に向けた入札を10日から実施します。早ければ3月下旬にもスーパーなどの店頭に並ぶ見通しです。
農水省でコメ政策に長く携わった日本国際学園大学の荒幡克己教授は「4~5月には価格が下がってくる」と予測します。備蓄米放出で危機は脱するのか、荒幡氏の見解を聞きました。(小沢慧一)
──備蓄米の放出でコメの価格に影響は出ると思いますか?
「多少値が下がる方向に作用はすると思います。ただ、それは消費者が実感できるほど大きな影響になるかは分かりません」
「多少値が下がる方向に作用はすると思います。ただ、それは消費者が実感できるほど大きな影響になるかは分かりません」
──いつ頃から価格は下がると見ていますか?
「4月か、場合によってはゴールデンウィークくらいになりそうだと思っています」
「なぜなら、卸や大手スーパーなどの販売業者は高い値で買い取ったものを既にかなり持っているからです。そうしたものをさばかなくてはいけないから、単純に考えてもスーパーの棚の価格に反映されるにはタイムラグが出てきます」
「例えば、備蓄米の放出で業者が新たに2割買い取るとします。しかし、これまでの8割は高値で買い取っているわけですから、収益を考えれば、そんなに値下げすることはできません」
「ただ、今回21万トンを放出しても、販売業者筋では『まだ足りない』という声は多いです」
◆異業種が廃品回収の車で農家から買い漁っている
──2024年のコメの生産量は増えているのに、JA(農業協同組合)など大手集荷業者の集荷量は、2024年12月末時点で前年比21万トンの減少となり、「消えた21万トン」と言われています。どこに消えたのでしょうか?
「関係者に聞いても、量的なことははっきり分かりませんが、明らかにこれまでコメを扱ってこなかった異業種が参入しています。しかも投機目的で持っています。私が直接得た情報からも、そういう話を聞いています」
「例えば、廃品回収の車が農家を回ってコメを集めていたとか、ある証券会社から聞いた話では、アセットアナリストの関心が非常に高い。私にも直接、投機目的の人から話を聞かせて欲しいとあちこちから依頼が来ています。ただそれが21万トンのうち、どれくらいなのかは分かりません」
「農家が隠し持っているのでは、という話もありますが、はっきり言って農家にそんな保管場所はありません。親戚に言われて少し余分に持っているとか、ビジネス感覚に優れた若手農家が倉庫を増設して持っていることはあったとしても、せいぜい1~2万トン程度。大した量ではないと思います」
◆うまくいけば5キロ3500円切るのでは
──今回の値上げで農家はようやく収支が合うようになったという指摘もあります。放出で値が下がったら農家に負担が行くのでしょうか?
「数字で議論すると分かります。JAなどの出荷業者と卸売業者との間で、売買取引する際の主食用米の銘柄ごとの契約価格である『相対取引価格』は、高くて1俵(60キロ)で2万5000円ぐらいです」
「確かに値上がりはしていますが、物価高騰で飼料代、燃料代が3~4割上がっています。今の価格はコストアップをカバーして少しプラスが出ている状況です。農家も少し潤うことができているとはいえ、理不尽な価格ではないと思います」
「むしろ問題は、卸売業者の間で比較的、小さい単位で必要なコメを調達し合う『スポット』市場です。ここでは1俵4~5万円と、相対取引価格に比べて倍近くなっています」
「しかも、この価格は農家やJAなどの収益には関係ありません。明らかに異業種やブローカーが利ざやを稼いでいる結果の高騰です。ここを沈静化する手段は備蓄米の放出しかないと思います」
「放出によってスポットが3万円くらいに下がることが一番望ましいです。そうなればスーパー販売価格も今は5キロ4000円ですが、3600円くらい、うまくいけば3500円を切るくらいの価格になるでしょう」
◆またスーパーの棚からコメがなくなる?
──2025年産のコメは増産見込みだと言われています。このまま収束に向かうとみていいのでしょうか?
「増産はよいことですが、今直面している危機とは直接は関係しません。今一番危ないのは、...
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