ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ヴォーン=ウィリアムズ/揚げひばり、タリス幻想曲 他

2012-05-02 22:26:57 | クラシック(管弦楽作品)
本日はイギリスの作曲家、レイフ・ヴォーン=ウィリアムズの作品を紹介したいと思います。ヴォーン=ウィリアムズと言っても日本では馴染みが薄いかもしれません。同時代のイギリスには「威風堂々」のエルガー、「惑星」のホルストらがいますが、彼らのような決定的有名曲に恵まれなかったせいでしょうか?

とは言え、「トーマス・タリスの主題による幻想曲」「グリーンスリーヴスによる幻想曲」「揚げひばり」の3曲の管弦楽作品は比較的知られており、録音も少なからずあります。ただ、どの曲も他の有名作曲家の作品のおまけみたいに収録されているケースが多く、上記の3曲が1枚で聴けるアルバムはなかなかお目にかかれません。そういう意味では、ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オヴ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズのCDはヴォーン=ウィリアムズの魅力を知る上でに唯一無二の1枚と言っていいでしょう。



まず、「トーマス・タリスの主題による幻想曲」から。トーマス・タリスと言うのは、16世紀のエリザベス朝に活躍した作曲家だそうで、この曲も彼の教会音楽の主題の一つをアレンジして作ったものだとか。確かに20世紀に作られた曲とは思えない古風なメロディです。とは言え、ヴォーン=ウィリアムズの作品はどれもこんな感じですが。

「グリーンスリーヴスによる幻想曲」は聴いた瞬間、全ての人が「あ、この曲知ってる!」となるぐらい有名な旋律です。ただ、こちらもイギリスに古くから伝わる民謡をベースにしたもので、ヴォーン=ウィリアムズの作曲ではありません。クリスマス・キャロルにも使われていますね。ヴォーン=ウィリアムズは主旋律をほぼ丸ごと借用しながら、中間部に別の民謡も加えて4分強の管弦楽作品に仕立て上げています。

続く「揚げひばり」は私の一番のお気に入りの作品。別名「舞い上がるひばり」(こちらの訳の方が正しい気もするが)とも言うこの曲は、ひばりが空を飛ぶ姿を独奏ヴァイオリンとオーケストラで表現した作品です。冒頭、ヴァイオリンがハイノートでひばりのさえずりを模した後、オーケストラが穏やかな民謡風の旋律を奏で、イギリスの農村部の牧歌的な風景を描き出していきます。素朴ながら心癒される名曲です。

最後は「富める人とラザロの5つのヴァリアント」。これはまあ「タリス幻想曲」と似たような感じの曲と言っていいでしょう。以上、4曲とも20世紀的現代性は皆無ながら英国音楽の魅力を知ることのできる1枚と言えるでしょう。
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